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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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開戦

「うわぁ・・・。綺麗・・・。」

 シロヤとシアンが見ている空に咲く、光輝く大輪の華。街の向こうから上がっているのだが、その光は灯台まで届いている程に光輝いている。

「どうだ?我が国が誇る花火職人達の"砂火薬花火"だ。」

 砂のようにサラサラとしたバスナダ特有の火薬は、他の火薬に比べて扱いやすい。それゆえに、昔からバスナダでは花火作りが盛んに行われていた。

 他国の人々が、バスナダの花火はどこよりも美しいと言われている理由だ。

「バスナダってすごいですね。食べ物も美味しいし、花火も綺麗だし。」

「ふふ、気に入ってもらえたかな?」

 シアンは、シロヤの腰に手を回して引き寄せる。自然と二人は密着しあっていた。

「名物は花火だけではないぞ?砂の酒なんかもこの国の自慢だ。」

 バスナダに来てから、シロヤは様々な名物に触れてきた。そのどれもが素晴らしく、シロヤは全てに満足していた。

 そして、このバスナダに住む人達は優しい人達ばかりだ。見ず知らずの旅人にここまでよくしてもらえるなんて、長旅の中で事例は一個もない。

 だからこそシロヤは、このバスナダ国に特別な思いを抱き始めていた。

「私は毎年、こうして花火を見るのが好きなんだ。」

 シアンは空を見上げながら呟いた。一瞬見えた横顔、花火に照らされたシアンの横顔には、形容しがたい美しさが秘められていた。

「どうだ?バスナダを好きになって・・・くれたか?」

 シロヤの方を向くシアン。目を合わせていると、自然とドキドキしてしまう。

「はい・・・好きに・・・なりました。」

 それを聞くと、シアンはニコッ!と満面の笑みをシロヤに向けた。

「うむ、我が国を好きになってくれて嬉しく思うぞ。バスナダはそなたを心から歓迎しよう。」

 そしてシアンは、そのままシロヤの顔の方を向きながら、ゆっくりと目を閉じた。

「・・・!」

 シアンは、シロヤの返事を待っていた。目を閉じてはいるが、唇は少し震えている。

「あ・・・あの・・・シアン様・・・?」

 自然とシロヤの体も震える。シロヤは、体を震わせながら、ゆっくりとシアンに近づいていった。


「・・・女王様。」


「!!!!!」

 突如後ろから聞こえた第三者の声。シロヤとシアンは同時に振り向いた!

「レーグ!!!」

「ヒヒヒヒヒ!探しましたよ女王様!」

 いつからいたのかわからないのだが、確かに後ろに立っていたのはレーグだった。階段を上ってくる音も聞こえなかった。

「ヒーヒヒヒヒ!女王様、もうそろそろパレードの時間です。今すぐ城に戻っていただけますでしょうか?」

「もうそんな時間か、ならば・・・私はこのお方と戻ろう。」

 シアンはシロヤの腕に抱きついた。それを見たレーグは、一瞬だけ顔を歪ませた。

「それには及びません。ヒーヒヒヒヒ!」

 含み笑いをしたのち、持っていた杖を構えて何かを呟き始めた。

「待てレーグ!転移魔法を使わずとも間に合うであろう!」

「時間が惜しいんですよ。できるだけ早く準備を済ませてください。」

 そう言った瞬間、強い光がシアンを包み込んだ。強い光に目をくらまされたシロヤ。向き直ったときには、そこにシアンの姿はなかった。


「ヒーヒヒヒヒ!」

 レーグは高笑いをしたのち、そのまま杖を構えて再び詠唱する。

 レーグの体が淡く光ると、そのまま光の尾を残して灯台の窓から飛び出していった。

「しまった!やられた!」

 シアンを転移魔法で城に送り、自分は飛行魔法で城に向かって行ってしまった。

 すぐさまシロヤは灯台を降りて、クロトに跨がった。

「クロト!今すぐ城に向かうぞ!」

 そのまま走ろうとした瞬間、シロヤの頭上が光った。

 流れ星かと思ったが、明らかにおかしい。軌道が地上に向かっているような気がしたからだ。

 シロヤの目は間違いではなかった。流れ星に似た何かは、高速で地上に向かって降ってくる!

「うわぁ!クロト!しゃがめ!」

 流れ星に似た何かは、そのままシロヤ達の目の前に落ちていった。

 軽い砂ぼこりが舞う中を、シロヤとクロトは確認した。へこんだ砂の中にいたのは、杖を持った人だった。

「ごほぉ!ごほぉ!ぐぅうごっほぉ!」

 人は軽く砂を払い、見に来たシロヤに声をかけた。

「シロヤ様!」

「あなたは・・・リーグン様!」

 砂に埋まっていた流れ星に似た何かは、杖を持ったリーグンだった。

 リーグンはすぐさま表情を引き締め、シロヤに言った。

「パレードが始まろうとしています!父上率いるバスナダ七人衆も控えています!」

 シロヤは聞かされたと同時に走った。その後ろをついてくるリーグン。

「シロヤ様!転移魔法なら私も使えます!今すぐシロヤ様をプルーパ様達の元へ!」

 リーグンは杖を構えて、詠唱を始めた。

「・・・シロヤ様、女王様の命をお願いします!」

 リーグンの言葉が聞こえた瞬間、シロヤの体が光に包まれた。そして光が消えた頃には、シロヤの姿はなかった。

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