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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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土産

 気絶者二人が運ばれていくのを横目に、三人は街中を進んでいった。

「約束の時間まではまだあるみたいね・・・シロヤ君、これからどこに行くのかしら?」

「お腹いっぱ〜い!」

 お腹がふくれた様子のローイエとクロト。

 とりあえず辺りを見回してみると、シロヤの目に一つの屋台が飛び込んだ。

「野菜の・・・叩き売り?」

 とれたての野菜を売っている屋台だ。

 バスナダの砂は特殊な成分が入っているらしく、野菜を植えれば極上の野菜に、家畜に食べさせれば極上の肉になると言われている。バスナダが"隠れた美食大国"と呼ばれている理由がこれだ。

 野菜の屋台をしばらく見ていると、シロヤの頭にふと二人の人物がよぎった。

「あ!そういえばお土産!」

 よぎった人物、未開拓地帯でシロヤが助けた、そして助けられた二人の人物。

「あぁそうね。私も忘れてたわ。」

 そう言ってプルーパは、野菜の屋台に向かって歩きだした。

「ローイエ様、少しだけ付き合ってください。」

「ん〜・・・わかった〜!」

 シロヤとローイエは、屋台へと走っていった。


 買った野菜を持って、シロヤ達が未開拓地帯に向かった。

「ここ入ったことない〜!怖〜い!」

 ローイエの体が震えている。心なしか、クロトも震えているような感じがした。

「改めて見ると確かに不気味ね・・・。」

 改めて未開拓地帯を眺めて、プルーパは森に入っていった。

「あ!プルーパ様!」

「お姉様早い〜!」

 遅れて、二人も入っていった。


「あら?また来たの?」

 森に入ってしばらく歩くと、会おうとしていた人物にすぐに会えた。

「この間のお礼に来たわよ。はい、バスナダ自慢の野菜。」

「わぁ〜!ありがとうございます!」

「本当に届けに来るなんて思わなかったわ。まぁ、ありがたくもらうわ。」

 目をキラキラされて野菜を受けとる妹、キリミドと、軽く頭を下げる姉、フカミ。この森に住んでいる精霊の姉妹だ。

「どう・・・かな?喜んでもらえてるかな?」

「まぁ・・・まあまあって所かしらね。」

 顔を背けて言ったフカミに、キリミドがクスクスと笑いながら呟いた。

「もう、お姉ちゃんったら・・・素直じゃないんだから。」

「キ!キリミド!何言ってるのよあなた!」

「私知〜らな〜い!」

 笑いながら野菜を持って逃げるキリミド。その後を、顔を真っ赤にしたフカミが追いかけていった。

「こらぁ〜!待ちなさ〜い!」

 森を走り回っている精霊の姉妹。何だか微笑ましい光景だ。三人は、そんな姉妹をしばらく眺めていた。


 未開拓地帯から出て街に戻ると、約束の時間が近くまで迫っていた。

 急いで集合場所に向かうシロヤ達。クロトに三人を乗せて、砂漠を一気に走り抜ける。

 結果、約束の時間ギリギリに集合場所に着いたシロヤ達。すでにシアンは集合場所に来ていた。

「むぅ・・・どうやら急がしてしまったようだな・・・すまない。」

「いえいえ!俺が時間にルーズ気味なだけですよ!シアン様が謝ることありませんよ!」

 必死に頭を上げさせようとするシロヤに、クスクスと笑うプルーパとローイエ。

「まぁ・・・そなたが無事でよかった。さぁ、案内させてもらおう。」

 シアンはシロヤの手を握った。どきどきしながら、シロヤはゆっくりとシアンをクロトに乗せる。そしてシアンは、ゆっくりとシロヤに身を預けた。

「そなたの背中・・・大きいのだな。」

「えぇ!?あ!あの!どちらに行けば・・・!」

 それを聞いてシアンは、ゆっくりと体を直し、クロトに語りかけた。

「クロト殿、すまぬが城の逆側に向かって歩いてほしい。・・・すまぬな、二人も乗っては重いであろう。」

 クロトはその場で足踏みをした。まるで「気にしないで」と言っているかのようだ。

「じゃあシロヤ君。きっちりエスコートしなさいよ?」

「お兄様もお姉様もいってらっしゃ〜い!」

 手を振って二人を見送るプルーパとローイエ。そんな二人を背に、シロヤとシアンは城の逆側の方角へと進んでいった。


 城の逆側、方角で言うと北には、海が広がっていた。

「ここは・・・これから始まる祭りのイベントの穴場スポットだ。」

 シロヤ達が来たのは、海にそびえる灯台だった。灯台の中に入り、長い階段を上がっていくと、城の向こうの街の明るさまで見渡せてしまうほどの高さになった。

 街の向こうを眺めるシロヤ。そんなシロヤに、シアンはゆっくりと寄り添った。

「・・・!」

 そのまま、シロヤの肩に頭を乗せる。まるで恋人同士のようであり、シアンにはそれが心地よかった。

「あの・・・シアン・・・様?」

「今、そなたと二人っきりなのだな。」

 わずかに震える声。

「静かだな・・・まるで世界がそなたと私だけになったみたいだな・・・。」

 体も小さく震えている。シロヤは、シアンの手を握った。

「ふふ・・・そなたの手・・・暖かいぞ・・・。」

 突然、寄り添う二人が見上げる空に、光の華が咲いた。

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