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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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成敗

 街にはたくさんの人達が笑顔で歩いている。中には他国から来た人もいる。

 街中を走り回る子供達や、恋人と肩を並べて歩く者など、本当に多種多様だ。

 その中に、黒い馬に乗って街を回っている青年と、それについていく少女と女性がいた。

「シロヤお兄様〜!あそこ行こ〜!」

「こらローイエ!あまりはしゃぎすぎるんじゃないわよ!」

 プルーパの言葉を聞き流して、ローイエは一つの屋台に向かって走り出した。

「まだ約束の時間じゃないですから。祭りを楽しみましょう、プルーパ様。」

 シロヤがプルーパに微笑んだ。


「約束の時間・・・ですか?」 朝、シロヤはシアンから時間と場所を言い渡された。

「うむ、そなたの案内は私がさせてもらうことになった。だから・・・待ち合わせ場所を決めておこうと思ったのだ。」

 "待ち合わせ"という言葉を言ったのち、シアンは頬を赤く染めた。

「それまでは・・・そなたの思うがままに祭りを楽しんでもらいたい。」

 恥ずかしさを隠すようにシアンはうつむきながら言った。


「でも本当によかったの?約束の時間までローイエと一緒に回るなんて。」

「えぇ、一人よりも皆で回った方が楽しいですから。」

 プルーパの問いに、シロヤは笑って答えた。

「お兄様〜!お姉様〜!こっちこっち〜!」 笑顔でローイエが手を振っている。その方向に向かって、クロトはゆっくりと歩きだした。

「ちょ!クロト!話してる最中なのに!」

「あらあら、クロト君も楽しみたいみたいね。」

 クスクスと笑いながら、プルーパはクロトの後ろを歩いていった。

 ローイエの所に着くと、シロヤはたくさんの人達が集まっているところに目をやった。

「あれは・・・食堂みたいなものか?」

 歩きながら食べることができない物はあそこで食べるようだ。

 ふとシロヤは、その奥がざわついているのに気がついた。どうやら、誰かに注目が集まっているようだ。シロヤはよく目を凝らして、人混みの奥を見た。

「何だ〜てめぇ〜!もう飲めないなんて抜かす気かぁ〜こらぁ!」

「うっ!ちょっと飲みすぎですよ!もうそのくらいに!」

 どうやら、酔っぱらいを誰かが制しているようだ。しかし、シロヤは酔っぱらい、そして酔っぱらいを制している人の声に聞き覚えがあった。

「てめぇバルーシ!もう一本持ってこい!俺とお前!どっちが飲めるか競争だ!」

「レジオンさん!ちょっと落ち着いてくださいってば!周りの方にも迷惑が」

「んだこらぁ!俺が迷惑だってんのか〜!」

 そう言って、レジオンは持っていた酒の瓶を振り回した。レジオンの瓶さばきは凄まじく、元兵団長の名は伊達ではないことがわかる。それに対してバルーシも、レジオンの瓶の軌道を読んで、交わしながらも反撃をうかがっている。

 街中で始まった、元兵団長対現兵団長の対決に、シロヤは思わず興奮してしまった。

「はぁ・・・しょうがないわね・・・。」

 横のプルーパがため息を一つついた。それに気づいたシロヤは、プルーパに視線を戻す。

 プルーパは、綺麗に一回転した。それと同時に、プルーパから何かが放たれた!

 放たれた物は人混みを高速で抜けていき、そのまま食堂の奥へと向かっていった。そして・・・。

「ぐわぁ!」

「ぐっ!」

 二つの悲鳴が聞こえたのち、食堂が一瞬静かになった。しかし、しばらくすると、人々は再び賑わいを取り戻した。

「ふぅ・・・。」

 横のプルーパが軽く伸びをした。

「あの・・・プルーパ様?」

 今の出来事を見ていたシロヤは、恐る恐る聞いてみた。

「・・・何をしたんですか?」

 プルーパは微笑みながらシロヤを見た。何故だか、その微笑みに怖いものを感じたシロヤ。

「ただ単に酔っぱらいを黙らせただけよ?何も不思議なことはないわよ?」

 シロヤはそれよりも、黙らせた方法が気になった。

 プルーパの戦闘能力は、この間の汚染植物との戦いで思い知っていた。まるで舞いのような動きから放たれた短剣は、汚染植物の急所を一撃で貫いた。短剣を急所に、しかも一撃で当てるほどの腕前だ。そんな腕前をもろに食らった二人を遠目で見て、シロヤは少しだけ顔をひきつらせた。

「安心して、投げたのは竹串よ。しかも尖ってない方ね。少しだけ眠ってれば自然と回復するはずよ。」

 シロヤの心配を、プルーパは優しく解決した。

「お兄様、どうしたの?」

 どうやらローイエは、屋台に夢中でレジオン達に気づかなかったようだ。

「いえ・・・何でもないです・・・。」

 クロトもローイエも、屋台で買った食べ物に夢中だった。シロヤも受け取って食べ始める。

 プルーパも受け取って食べ始めた。持っている竹串が凶器に見えたシロヤ。自然と背中に冷たいものを感じた。

「・・・・・・・・・・・・って!プルーパ様!何でバルーシさんまで!?」

「ん?ん〜・・・喧嘩両成敗ってやつ?」

 笑いながらプルーパは言った。シロヤは、ゆっくりとバルーシに手を合わせた。

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