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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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砂丘

 頭を下げるクピンを見たシロヤは、ゆっくりとクピンの頭を上げさせた。

「わかっていますよ。どこまでやれるかは分かりませんが・・・出来る限り戦ってみます。」

 その言葉を聞いて、クピンは笑顔のまま目に涙を浮かべた。

「あ・・・ありがとう・・・ございます!」

 シロヤは、近くにあったミニタオルでクピンの涙をぬぐった。


 次の日、シロヤは部屋にいた。

「・・・。」

 いよいよ明日は星夜祭、決戦の日だ。

 バルーシ、プルーパ、レジオン、リーグンの協力があるとはいえ、自分の無力な力でどこまで戦えるのかがわからない。

 外を見てみると、街は明日の星夜祭を待ちきれないのだろうか、人々が忙しく街を走り回っている。

「・・・。」

 何だか外に出てみたくなったシロヤは、ドアノブに手をかけた。


「・・・ですよ、ヒヒヒヒヒ・・・。」


「!!!」

 瞬時に手をドアノブから離す。

 ドアの向こうから聞こえてきたのは、レーグの含み笑いだった。

 何かを話しているのだろうか、気になったシロヤはドアに耳をつけた。

「では明日の・・・時、パレードの時間・・・暗殺を・・・します・・・ヒヒヒヒヒ。」

 誰かと話しているようだ。話している相手はわからないが、話している内容はわかる。どうやら、シアンの暗殺について話しているようだ。そしてその内容には、暗殺時間とその決行場所が話されていた。

「では手筈通りに・・・ヒヒヒヒヒ。」

 含み笑いが近づいてきた。少しずつ近づいてきて、聞こえてきたのはドアを挟んで数センチの所。

「・・・ヤバイ!」

 すぐさまドアから離れる。そしてその数秒後、ドアが開かれた。

「ヒヒヒヒヒ、シロヤ様、朝食の時間になりました。」

 ムカつく含み笑いが部屋に響くが、シロヤの耳には入らなかった。それよりも気になったのは、レーグのさっきの会話だった。


「シロヤ君、気分はどう?」

「シロヤお兄様〜!明日一緒にお祭り回ろう〜!」

 席に座ると、すぐさまシロヤに近寄るプルーパとローイエ、その横で微笑んでいる(ように見える)シアンがいた。

「明日・・・そなたを目一杯おもてなししよう。それでこの国をもっと・・・好きになってもらいたい・・・。そして・・・答えを聞かせてほしい。」

 モジモジするシアンを見たプルーパが、ニヤリと笑った。

「あ〜ぁ!私も側室に入れてくれないかしら?シ・ロ・ヤ・く・ん〜?」

「ぶふっ!」

 飲んでいた牛乳を吹きこぼすシロヤ。

「な!何言うんですかプルーパ様!」

「クスクス、本当に可愛いわね。」

 プルーパは笑いながら、近くの牛乳に手を伸ばした。

 シアンは顔を真っ赤にして俯いている。どうやら告白したのをプルーパに見透かされたことが恥ずかしかったのだろう。

「側室に入れるんだったら、私以外にもローイエとかクピンとかも・・・。」

「バルーシとかレジオンも〜?」

「ぶふっ!」

 ローイエの発言にシロヤ、そして今度はプルーパも吹きこぼした。

「ローイエ・・・あなた少し黙ってなさい・・・。」

 プルーパは半笑いしながらローイエに言った。


 朝食を食べ終えたシロヤは、すぐさま身支度を済ませて城を出た。途中、ローイエがついていきたいと駄々をこねたが、プルーパによって阻止された。おそらくプルーパは、シロヤが行こうとしている場所がわかっているのだろう。

 シロヤが来たのは、もちろんプルーパが予測した場所だ。

 賑やかな街を通り、準備に奔走していたバルーシに挨拶をしたのち、シロヤがついたのは砂丘だった。

「・・・。」

 砂漠の優しい風を体に受け、シロヤは砂丘の向こうを眺めていた。

 景色を見ているうちに、シロヤは心配していたことを忘れていた。

 ・・・シロヤは、後ろに人の気配を感じた。

「よぉ、確か・・・シロヤっていったかな?」

 立っていたのは、シロヤがバスナダに来て一番最初に見た人だった。

「あ!確か・・・ランブウさん?」

 シロヤは思い出したように手を叩いた。それを見たランブウは、軽く笑いながらシロヤに語りかける。

「明日から星夜祭か・・・、わくわくするな。」

 子供のように楽しみにしているランブウ。

「安心しな。明日の星夜祭は危険なんか無いぜ?安全に祭りを楽しんでもらうぜ?」

 ランブウはシロヤの背中をバンバンと叩いて高笑いした。

「危険・・・ですか・・・。」

 シロヤは少し黙った。

 そうだ、危険なんてないようにしないといけないんだ。シアンの命も、国の皆も守らなければならないんだ。

 ・・・ん?

「あの!?ランブウさんの役職って」

 シロヤが後ろを振り向いた時、ランブウの姿はもうなかった。

「・・・?」

 首をかしげるシロヤ。そんなシロヤを、砂漠の風は優しく包んだ。

 まるで、明日に向かう人達を、そしてシロヤを応援するかのように・・・。




 そして、星夜祭本番の日がやって来た。

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