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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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墓前

 地味な格好の三人とシロヤは、王室の奥へと歩いていった。

「あの・・・何をするんですか?」

 そう聞いたシロヤがたどり着いたのは、王室の奥の通路のさらに奥だった。

「さぁ、この奥だ。」

 シアンが扉を開けると、正午の光が降り注いだ。どうやら屋外に繋がっているようだ。そしてその先にあったのは、たくさんのお墓だった。

「ここは・・・先代国王達が眠っている場所よ。私達王族は月に一回、先代達のお墓参りに行かないといけないの。」

 シアンは王室から持ってきた花を出し、一番奥のお墓に花を手向けた。

「お父様・・・もうすぐ星夜祭が始まります・・・。必ずや星夜祭を成功させます。どうか安らかにお眠りください。」

 軽く手を合わせて黙祷するシアン。それに続いて、後ろの三人も黙祷する。

「・・・先代国王は、バスナダ国を軍事国家にした国王なの。そして・・・私達を育ててくれたお父様なの。」

 シロヤは声を出さずに驚いた。

「お兄様、シアンお姉様はね、ずっと一人で頑張ってきたんだよ。お父様の残した傷痕と戦いながらね・・・。」

「こら!ローイエ!」

 プルーパがローイエに怒鳴った。ローイエも幼いながら、言ってはいけないことを言ったと直感で理解した。

「いや・・・いいのだ。確かにお父様は傷痕と呼ぶに等しいものを残していった。だからこそ私達が、私達で変えていかねばならぬのだ。」

 シアンの目はまっすぐで、それでいて凛々しかった。

「今年の星夜祭はその第一歩だ。だから、プルーパお姉様にも、ローイエにも協力してほしい。」

「何を今さら言ってるのよ、そんなの当たり前じゃない。」

「もちろんだよお姉様!私も頑張るよ!もちろんお兄様も〜!」

「う・・・うん。」

 三人は互いにうなずきあった。そこには、国を変えようという強い意志があった。


「ではそろそろ行こうか。」

 シアンは立ち上がって、王室に向かって歩き出した。その後ろについていくローイエとプルーパ。

「・・・・・・・・・シロヤ君?」

 プルーパが後ろを振り向くと、シロヤが墓前に立っていた。後ろ姿は何故か、誰にも打ち砕かれないような強い力を感じる。あれは・・・決意だ。

「プルーパ様・・・シアン様が望んでいるのはこの国の平和な未来なんですよね・・・。」

「・・・そうね。」

 そう聞いたシロヤは、墓前に座り込んで手を合わせた。

「先代国王様・・・私は旅の者、シロヤという者です。」

 淡々と語り出したシロヤ。

「今・・・シアン様が望む平和な未来を・・・脅かす者が現れています。ですがご安心ください。シアン様の体を任された以上、どんな脅威にも、俺は立ち向かいます。例え、この身が朽ちようとも・・・。」 深々と頭を下げるシロヤ。その頭を、プルーパは軽く撫でた。

「プルーパ・・・様?」

「シロヤ君だけじゃないですよ、お父様。私達は皆、シロヤ君の味方です。そして・・・シアンの味方です。」

 二人は再び黙祷した。

 黙祷を終えた二人は、静かに立ち上がって歩き出した。


 お墓参りを終えたシロヤは、王室の来賓用椅子に座っていた。用事があるとプルーパが残させたのだ。

 しばらく待っていると、プルーパは奥から走って戻ってきた。

「お待たせ、これが星夜祭の動きよ。」

 渡された紙の裏には、"超重要"と書かれていた。

 表に書かれていたのは、どうやら星夜祭の全体の動きのようだ。出店の概要から、パレードカーの動きまで事細かに書いてあった。

「これがあれば、レーグの動きも予測しやすいでしょう?」

「でも・・・これって機密事項じゃ・・・。」

 プルーパは、そう言ったシロヤの唇にそっと指を当てた。

「ひ・み・つ・よ?シロヤ君。」

 最後に軽くウィンクをして、再び紙に目を戻した。

「さ、バルーシもいないしさっさと済ませちゃいましょう。まずは・・・。」


 部屋に戻ったシロヤは、プルーパからもらった紙に目を戻した。紙には、予測した時間やそれに合わせての動きがメモしてあった。

「・・・。」

 しばらく見たのち、シロヤは目を背けた。

 あと二日後、レーグと対決をする。その事実が、シロヤを震えさせた。

 考えてみれば、長い旅の中で対人戦を経験したことがない。そして、未知数であるレーグの力。

「・・・。」

 思ってはいけないと思っても、自然と頭に浮かぶ最悪のシナリオ。だんだんとシロヤは、自分の頭の中に怒りを覚え始めた。

「・・・アー!」

 怒りを言葉に変えたのち、力任せにドアを開けた。ドアの先にいたのは、勢いよく開いたドアにビックリして座り込んでいる少女だった。

「・・・・・・・・・クピンさん?」

「シ!シロヤ様!」

 すぐさま立ち上がり、服の埃を軽く払って、シロヤの方を向いた。

「さ!昨晩はシロヤ様やローイエ様のお手を煩わせてしまって!本当に申し訳ありませんでした!」

 震えながら頭を下げるクピン。その頭を上げさせたシロヤの顔は、安堵に包まれていた。

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