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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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告白

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええぇぇぇぇ!!!」

 シアンがシロヤに用意した席、それは国を統べる者の席、王の席だった。

「お!おぉ!俺が・・・おうに!?じょ!冗談ですよね!?」

「冗談ではない・・・私と・・・結婚して・・・王になって・・・ほしい・・・。」

 シアンの顔がトマトのように赤く染まる。今、シアンが放った言葉は、間違いなく"告白"だ。

 女王の告白を受け戸惑うシロヤは、口をパクパクさせて首を忙しく動かすことしかできなかった。

「・・・どうだ?それとも私は・・・魅力的ではないか?」

 潤んだ瞳で上目使いをするシアン。

 もちろんシロヤから見て、シアンが魅力的に映らないわけがない。ロングの髪の毛に華やかなドレス、綺麗な顔立ちにスタイルは誰もが魅了される。見た目だけではなく、性格や気配りも一級品。シアンは一国を統べる姫なのだから、そんなことは当然と言えるが、それはあくまでもシロヤからかけ離れた世界、王族や貴族などでの話だ。

 単なる農民が姫と結婚、しかも恋愛結婚など、世界をひっくり返しても事例は出てこない。

「どうした・・・?私は早く・・・そなたの返事が聞きたい・・・。」

 シアンの瞳がどんどんと潤んでいく。じっとシロヤを見つめるが、当の本人はまだまだ正気を保っていられない状態だった。それに気づいたシアンは、シロヤの頬に手を当てた。

「むぅ・・・やはり急に王になると言われても・・・答えるのは難しいか。」

 シアンは優しく微笑んだ。

「ならば・・・そなたにこの国をもっと好きになってもらいたい。」

 シアンはベッドから降りて、カーテンを開けて窓を見た。砂漠の夜の空は遮るものがなく、美しい星が国の空を彩っている。

「三日後、この国をあげて行われる最大級の祭り、"星夜祭"に、そなたを国賓として招待しよう。そこで、この国をもっと好きになってもらいたい。」

 星空の光が部屋に差し込み、シアンの体を照らす。シロヤは何故か、星の光を浴びるシアンが神秘的に見えた。

「私たちバスナダ国一同、最大限のおもてなしをしよう。そして、星夜祭の終わりに、そなたの答えを聞きたい。」

 三日、それはシロヤが答えを出すために考える時間。そして、答えを出すためにレーグの野望を止めなくてはいけない制限時間。シロヤにとって残された猶予だ。

「わかりました・・・三日・・・考えてみます。」

 シロヤは小さくうなずいた。それを見たシアンの顔は、優しさを含んだ微笑みを浮かべていた。

「うむ、良い答えを期待しておるぞ。」

 そう言ってシアンは、再びベッドに入り、シロヤに寄り添った。

「では今日はここで寝させてもらうぞ。」

 シロヤの横にシアンも横になり、添い寝の形をとった。


 あれから時間は経っていない。しかし、シロヤには何時間もの長い時間に感じた。シアンはずっとシロヤに寄り添っている。

 ふと、シロヤはシアンに尋ねた。

「シアン様、この国の人たちは好きですか?」

「もちろんだ、民は皆、家族であると私は思っている。」

 女王らしい答えだが、シロヤにとっては違和感しか生まれない答えだった。シロヤは続けた。

「もちろん・・・家臣も皆ですよね?」

「無論、家臣も皆バスナダの民だ。誰一人とて例外はない。」

 シロヤの顔が曇った。聞いてはいけない質問をしたのではないか、という考えが頭をよぎる。そして、次にシロヤが口にした言葉も、また聞いてはいけない質問だった。

「もし・・・家族の誰かが・・・シアン様を暗殺しようとしても・・・ですか?」

 即座にシロヤは後悔した。こんな質問はするべきではない。それがわかっていても、確認だけはしておきたかった。

 曇った表情のシロヤとは対称的に、シアンの顔は微笑みを浮かべていた。

「もし私が狙われているのならば、喜んで受けよう。私は逃げも隠れもしない。命が欲しいのならば、くれてやる覚悟だ。」

 覚悟、シアンの言葉に嘘偽りはない。清々しいくらいにまっすぐな答え。しかし、シロヤは清々しさを感じる余裕なんてなかった。

 シアンは、今自分が狙われていることを知らない。当然の話なのだが、シロヤにはきつい現実だ。

「シアン様は・・・強いお方なのですね。」

「そなたも強いではないか。見ず知らずの私を魔の物から守ってくれたのだ。」

 シアンはシロヤに向かって微笑んだ。しかし、シロヤは再び顔を曇らせた。

 俺は強くなんかない・・・。助けたのは単なる良心、もし襲っていたのがバシリスクでなければ、シロヤは逃げていたかもしれない。

 シロヤは何も喋ることが出来なくなった。

 そのまま、無音の空間が二人を包み込む。シロヤは、色々とありすぎた今日の出来事を思い出す前に、深い眠りについてしまった。その頬を撫でながら、シアンも深い眠りについた。

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