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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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予知

「私はこの景色大好き。でもね、最近砂漠が変わった気がするの。」

「砂漠が・・・変わった?」

 目の前に広がる夜の砂漠は、確かに昼とは違った神秘的な印象があった。しかし、そんなことではないだろう。ローイエが見ているのは表面上だけではない、さらに奥深い何か・・・。

「何かが起こる・・・砂漠が壊れるような何かが起こる。」

 ローイエの呟きはとてつもなく重く、それでいて暗い。

「・・・・・・・・・。」

 ふとシロヤは二人を見た。シロヤの目に映ったのは、体を震わせる少女の姿だった。しかしそれは寒さではない。これから起こるであろう未来を予知しているような震え、恐怖だ。

「ク!クピンさん!?」

「どうしたのクピンちゃん!?」

 震えていたのはクピンだった。その震えは自分で止めようにも止められないようで、震えはさらに強くなりクピンの顔を青くする。

「いや・・・いやぁ・・・いやぁぁぁ!」

 クピンは頭を抱えながら悲鳴をあげたのち、そのまま前に倒れこんだ。

「クピンさん!クピンさん!」

「お兄様!プルーパお姉様のところに運びましょう!」


「気絶してるわ・・・。」

 プルーパがクピンの顔を覗きこんで言った。

「でも・・・どうして気絶なんか・・・。」

「・・・話しておいた方がいいかしらね。」

 プルーパはしばらく考えたのち、ゆっくりと語り出した。

「クピンをメイドとして雇ったのは、シアンじゃなくて私なのよ。」

 クピンの顔を軽く撫でて、再び続けた。

「クピンには強い霊力があるのよ。それを自分で制御できないから、たまにこうやって暴走を起こすのよ。多分、今回のは暴走が起こったことで未来が見えたんじゃないかしら。」

 強い霊力を持つ者は、制御が難しく暴走を起こす。それはごく当たり前の話だ。

 しかし、未来を見ることができるなんて話は稀である。よっぽど強い霊力がないと、未来を見るなんてことはない。

「まぁ一日経てば目覚めるから心配しないで、さぁローイエ、もう寝るわよ。」

 プルーパはローイエを部屋から出すと同時に、シロヤを見た。

「シロヤ君、ちょっといいかしら。」

 プルーパは重く言った。瞳が深く、それは見ているだけで吸い込まれそうだ。

「クピンは未来を見て気絶した。その意味がわかるかしら?」

 シロヤは考えた。

「えっと・・・霊力が強すぎて負担になったからですか?」

「いいえ、原因は"見えた未来"よ。」

 プルーパは顔を伏せた。おそらく、プルーパも信じたくないのだろう。

「クピンが見た未来は・・・おそらく星がレーグに奪われた未来よ。」

「えぇ!じゃあ未来はもう決まって!?」

「いいえ、あくまでもその可能性が一番高いって話よ。クピンには耐えられない未来の映像だったみたいね・・・。」 心配そうにクピンを見る二人。青かった顔は少しずつ戻っているようだ。

「クピンは私が看病するわ。シロヤ君、今日はもう休みなさい。」

「は・・・はい。」

 プルーパに促され、シロヤは部屋を出た。


 シロヤは少し考え込んだ。

「未来・・・。」

 クピンが見た未来、恐怖に飲まれ気絶する程の未来。いったいどんな未来なのか。

「・・・。」

 星が奪われ、シアンは暗殺され、バスナダがレーグの手に落ちたとしよう。そしたら他の人たちはどうなるだろうか。

 おそらく、レーグの計画を知っている、そして知ろうとしている人は処刑されるだろう。ということは、ローイエも、プルーパも、バルーシも、レジオンも、そしてシロヤも・・・。

「・・・いやいや駄目だ!」

 頭を軽く振って考えていたことを消す。マイナス方向に考えていてはキリがない。そう思って布団に入る。

「・・・・・・・・・!」

 一度出たマイナス思考は消えない。布団に入って忘れようとすればするほど、どんどんと深く思考が頭をめぐる。

 次第にシロヤは恐怖を覚えた。広い部屋に一人でいるということが、さらに恐怖心を強くする。

 いつしかシロヤは、体をブルブルと震わせていた。


ガチャ・・・。


「・・・!!!」

 急に開いた扉、シロヤは反射的に剣を握った。

「ど!どうしたのだ!?何かあったのか?」

 シロヤは手を下ろした。

「シアン様・・・!」

 部屋に入ってきたシアンだった。シアンはシロヤのベッドに上がり、シロヤに寄り添った。

「どうしたのだ?汗だくではないか。」

 いつの間にか、シロヤは汗だくになっていた。

「私が・・・拭こうか?」

 頬を少し赤くして、シアンは呟いた。

「いや!あ・・・遠慮します・・・。」

 激しく拒否すると失礼だと思ったシロヤは、最後に小さく拒否の言葉を呟いた。

「ふむ・・・嫌ならいいだろう。」

 シアンは寄り添いながら呟いた。

「そういえば、そなたにしかできぬことの話だが。」 シアンは、シロヤを見つめながら呟いた。

「私と共に・・・この国を支える王に・・・なってほしい・・・私と・・・結婚して・・・ほしい・・・。」

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