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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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不安

「シロヤ様、おかえりなさいませ。」

 部屋に戻ると、いたのはリーグンだけだった。

「あれ?バルーシ様とプルーパ様は・・・。」

「まだ帰ってきていませんよ。そういうシロヤ様はどちらに?」

 そうリーグンが聞いた瞬間、シロヤの後ろから二つの足音が聞こえた。

「相変わらずの石頭ね、レジオンを味方につけるのは難しいかもね。」

「はい・・・しかし、レジオンさんの力は強力です。レーグを相手取るためにもやはり・・・。」

 頭を抱えながら話す二人が部屋に戻ってきた。


 部屋に戻った四人は、再び話し合いを始めた。議題は、"レーグはいつ何かしらの行動を起こすのか"だ。

 シロヤを除く三人は、レーグの目的を知らない。しかし、何かしらの行動を起こすことは目に見えている。ならば、その行動をいつ、どのタイミングで起こすのかが鍵となるのだ。

「レーグは"星夜祭"を狙って行動をするんじゃないかしら?」

「"星夜祭"・・・。なるほど、それならば騒ぎに乗じて行動しやすい。」

「"星夜祭"・・・?」

 シロヤは首をかしげた。

「星夜祭とは、この国最大の祭りです。星を祭りの中央に飾って恩恵を授かるという伝統的な祭りなんですよ。」

 リーグンが補足してくれた。同時に、シロヤはレジオンの言葉を思い出した。もしレーグがシアンの暗殺を実行するならば、国最大の祭り、星夜祭が怪しいと・・・。

「ならこっちも早く行動に移さないとね。星夜祭は三日後だから。」

「三日後!?」

 シロヤは間の抜けた声を出した。暗殺決行の日時があまりにも早いと思い、シロヤは思わず声をあげてしまった。

「しかし・・・明日から兵団は祭りの準備をしなければ。」

「なら私とシロヤ君でなんとかやってみるわ。」

 プルーパはシロヤを見てウィンクをした。シロヤも頭を縦に振った。

「僕もお手伝いできることがあったら言ってください。」

 同じくリーグンもバルーシに向かって頭を縦に振った。

「すいません、私もできる限り探ってみます。」

 四人はそれぞれ意思を確認して、部屋を出ていった。


「・・・。」

 時刻は夜。夕食を終えたシロヤは部屋で考えていた。

「シアン様の暗殺なんて・・・レーグは何が目的なんだ?」

 元々は星が狙いなはずなのに、レーグは星を諦め、シアン暗殺の実行を決めた。つまり、元々の狙いは星じゃないのかもしれない。

「レーグって・・・強いのかな・・・。」

 レーグの用心深い性格上、間違っても暗殺者を依頼するとは思えない。ならばレーグが直接手を下すか、七人衆の誰かが手を下すかどちらかだ。

「・・・。」

 果たして勝てるのか。シロヤの頭にそんな事がよぎった。

 ベッドから飛び降りたシロヤは、置いておいた愛用の剣を抜いた。鍛冶職人になった友人が旅立つ前にくれた剣だ。それを持って、軽く剣を振ってみた。

 ぎこちないな・・・。とシロヤは思わず心のなかで呟いた。それも当然だ、シロヤの剣に型なんてない。

 今までの旅でも、バシリスクやゴブリン、小さめの鳥獣程度しか相手にしたことがなかった。その程度なら、剣術を習っていれば誰でも倒せる相手故に、シロヤは力の弱さを痛感する。

 実際、今日相手取った汚染植物には歯が立たなかった。プルーパがいなければ、確実に自分は切りきざまれていたいただろう。「・・・外に出るか。」

 急に外の風を感じたくなったシロヤは、そのまま部屋を出ていった。寝る前に戻ってくればクピンに心配をかけることもないだろう。

 シロヤは部屋を出た。

「あ!シロヤお兄様!」

 部屋を出た廊下の先に、ローイエが立っていた。シロヤを見た同時に、ローイエはシロヤに向かってかけていった。

「お兄様、どうしたの?」

「ちょっと・・・夜風に当たりたくて・・・。」

「私、いいところ知ってるよ!今から行こう!」

 ローイエはシロヤを引っ張って、城門とは逆方向に向かって歩き出した。


「この上〜!見晴らしいいんだよ〜!」

 やって来たのは、昼にレジオンと来た見回り台だった。

「あ〜!誰かいるよ〜?」

 台に上がると、どうやら先客がいたようだ。

「クピンさん?」

「え?あ!シロヤ様に・・・ローイエ様!」

 見回り台にいたのはクピンだった。メイド服のまま、風を感じながら景色を見ていた。二人を見るなり、急に萎縮し始めるクピン。おそらく、王族であるローイエが目の前にいるというのが、萎縮してしまう一番の原因だろう。

「クピンちゃんも一緒〜!」

「わ!私なんかがローイエ様のお隣だなんて!」

「もう〜!クピンちゃん緊張しすぎだよ〜!」

 ほっぺたをぷにぷにするローイエ。背丈などを見る限り、二人は同じ年齢なのだろう。

 緊張を落ち着けようと、ローイエはクピンの隣で景色を見始めた。

 それに合わせて、シロヤとクピンも景色を見た。

 夜の砂漠は神秘的で、それでいて優しかった。

「お兄様、この景色・・・好き?」

 何故だが、今のローイエの声が幻想的に聞こえた。

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