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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
154/156

結束

 突如聞こえてきた声。それはシロヤでもラーカでもなければ、地上にいる人達でもない。しかし、それは確かにはっきりと聞こえた。

「何だ?今の声は」

 バルーシが周りを見渡すが、見えるのは不思議そうな顔で固まってる人達だけであり、声を発したような人物はいない。

 しかし、二人だけが何かに気づいたような表情をしていた。

「お姉様!この声って」

「えぇ、間違いないわ」

 ただ二人、ローイエとプルーパだけが気づき、巨大な光の剣を持つシロヤを見つめていた。

 そして、プルーパは叫んだ。


「シアン!あなたなのね!?」


 全員に聞こえてきた声。それはまさしくシアンの声だった。

「お姉様!どこにいるの!?」

 ローイエがキョロキョロと周りを見渡すが、どこを見てもシアンの姿はない。

「シアン、あなた一体・・・!」

 どこを見ても姿が見えないシアン。それでも、シアンの声は聞こえてくる。

「皆よ、力を貸してくれ。」

「力って・・・?」

 プルーパの声に、シアンはゆっくりと答える。

「この光の剣は、皆との強い繋がりを象徴する"絆の剣"だ。」

「絆・・・?」

「そう、皆との強い繋がりがシロヤの剣を強くするのだ。」

 シロヤが古の白の勇者から受け継いだ力、人が持つ何者にも負けない力こそが、人との繋がりを象徴する力。"絆の剣"は、その力を最大限に発揮する剣なのだ。

「皆の強い思いがシロヤの剣を強くする。だから、皆の強い力で剣を!」

 シアンの声が終わると、プルーパの横にいたローイエがシロヤを見上げながら一歩前に出た。

「シロヤお兄様!私は何があってもお兄様から離れないから!ずっとずっとずっとずっと!お兄様と一緒にいるから!」

 ありったけの力で叫ぶローイエ。

 その時、ローイエの体が黄色の光に包まれた。

「ローイエ?」

「お兄様!大好き!」

 ローイエの叫び声と共に、体を包んでいた黄色の光が勢いよく空に向かって伸びていった。

 光はまっすぐシロヤに向かっていき、シロヤの体に吸い込まれていっている。

「・・・シロヤ様!」

 それを見ていたバルーシ、ローイエ同様にシロヤを見上げながら一歩前に出た。

「私は・・・幾度もシロヤ様の勇気に感化されてきました!いつでも戦う力をくれたのはシロヤ様です!だから・・・今度は私がシロヤ様に力を貸す番です!」

 そう言った瞬間、バルーシの体から銀色の光が空に向かって放たれた。

「シロヤ君!私も・・・シロヤ君のことが好き!絶対にシロヤ君を離したりしないわ!いつまでも・・・私が一緒だから!」

 そして、プルーパから紫色の光が放たれ、シロヤに向かって吸い込まれていった。

 黄色、銀色、紫色の光がシロヤに向かって伸びている。それによって、シロヤの剣はさっきよりも強力な光を放っている。

「まさか・・・その力・・・!」

 巨大になっていく絆の剣を見て、ラーカの表情がどんどんと険しくなっていく。まさしくそれは、今までシロヤ達がらーかに向けていた目、恐怖の目だ。

「シロヤ様!」

 その時、また新たにリーグンが一歩前に出た。

「ここにいる皆さんが全員、シロヤ様に救われました!もちろん、私もシロヤ様がいてくれたからこそ強くなることができました!だからこそ私達は・・・シロヤ様に全てを託します!」

 そして、リーグンの体から緑色の光がシロヤに向かって伸びていった。

「シロヤ!お前にはまだ教えなきゃいけないことが山ほどあるんだ!こんなところでやられちまったらお前はとっくの昔にくたばっちまってるだろうよ!だからよ、そんなやつぶっ倒してさっさと帰ってきやがれ!」

 さらにレジオンからも、朱色の光がシロヤに向かって伸びていく。

「シロヤ君!あなたを見ていたら・・・私達に優しかったバスナダを思い出すわ!森を消し去ろうとしたあの頃とは違う・・・この砂のように優しいバスナダを!」

「これは私達と森に住む動物達皆の思いです!皆、シロヤさんを思ってくれています!だから・・・受け取ってください!」

 フカミから深緑色の光が、そしてキリミドからは黄緑色の光が放たれた。

「シロヤ!最初に会った時からお前はなんかするやつだと思ってたぜ!俺達国境警備隊は国から省かれたならず者の集まりだったが、お前はそんな俺達を頼ってくれた!これは俺を含めた国境警備隊全員の分だ!」

 続いて、ランブウから茶色の光が放たれる。

「シロヤ様!身分不相応で申し訳ありませんが・・・私もシロヤ様のことが大好きです!シロヤ様の専属メイドになれたことを、一生誇りに思います!だから・・・私の想いも受け取ってください!」

 そして、クピンから桃色の光が放たれた。

 全員の想いがそれぞれの色の光となり、想いの詰まった強力な絆となりシロヤに力を与える。

 やがて、シロヤの剣は強力な光を放つ巨大な剣となった。

 シロヤは光の剣をラーカに向けて、凛とした表情で言った。

「ラーカ、受けとれ。これが俺達の・・・絆の力だ!」 そして、シロヤは光の剣を構え、一直線にラーカに向かっていった。

「うぉおおおおお!!!」

 皆の想いが込められた絆の剣は、光の尾を作りながらまっすぐラーカに向かっていく。

「図に乗るなぁ!貴様らの絆など脆いものだ!」

 ラーカの周りに闇の波動が形成される。その数は、空を覆い尽くして黒く染めてしまうほどだ。

「あれだけの闇の波動を!」

「シロヤ様!」

 全員が息を飲む。

 その瞬間、


「ぐわぁ!」


 ラーカの周りの闇の波動が、一瞬にして消え去った。

「!」

 全員が一つの方向を向いていた。その方向には、剣をラーカに向けている男がいた。

「シロヤ・・・亡き先代国王が果たせなかった無念・・・そして私の想い・・・全て託す!悪魔に勝て!砂の大地に光をもたらすんだ!」

 男―――ゴルドーから、金色の光がシロヤに向かって放たれた。新たな絆によってさらに強力な光を帯びるシロヤの絆の剣。

「あ!あれ!」

 突如、ローイエがシロヤを指差す。

 その先には、光の尾を作りながらラーカに向かって飛んでいくシロヤと、その周りを飛んでいる小さな光があった。

「あれは・・・!」

「シアン・・・!」

 シロヤの周りを飛び回る小さな光は、やがてシロヤの絆の剣に溶け込んでいった。


「皆・・・そなたの味方だぞ、シロヤ。私達の想いを全てそなたに託そう。」


 シアンの優しい声が、はっきりと聞こえた。

「シアン・・・!」

 自然と笑顔になるプルーパ。シアンの決意、それはとても強いものだった。

「・・・シロヤ君!皆あなたの味方よ!」

「シロヤお兄様!」

「シロヤ様!」

「シロヤ様!」

「シロヤ!」

「シロヤ君!」

「シロヤさん!」

「シロヤ!」

「シロヤ様!」

 ローイエ、バルーシ、リーグン、レジオン、フカミ、キリミド、ランブウ、クピンの想いを乗せたシロヤの絆の剣が、ラーカに向かっていく。

「あり得ぬ!あり得ぬぞぉ!こんな下等生物共に私が負けるなど!あってはならぬのだぁ!!!」

 シロヤの剣はラーカを、そして全てを包み込んだ。

 光が大地を、そしてバスナダを覆い尽くした。

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