物語
「ここは・・・。」
真っ白な視界の中、シロヤとクロトは佇んでいた。
急に強い光がシロヤを包み、何も見えなくなった。そして、気づけばここに佇んでいた。
しかし、シロヤにはこの真っ白な光景は見覚えがあった。
「ここは・・・確か星夜祭の時に・・・。」
星夜祭、星の力を得たシロヤがレーグと戦った時、シロヤはここに来た。
「何で・・・またここに・・・?」
「会いたかった・・・。」
「!」
突如、後ろから声が聞こえた。しかし、振り向いてみてもそこには誰もいない。
「君に会いたかった・・・。」
今度は前から声が聞こえてきた。見ると、そこには星夜祭の時にもあった、白い鎧に身を包んだ男が立っていた。
「あなたは・・・!」
「君に会うのは二度目だったね・・・。」
男は小さく会釈をしてから、話を続けた。
「君の紡ぐ物語を見せてもらった。しかし、完結するにはあまりにも大きな壁が目の前にある。君は、その壁を越える覚悟はあるかい?」
そう言われ、シロヤは大きく頷いた。何を言っているかはよくわからないが、壁―――ラーカを倒す覚悟に嘘偽りはなかったからだ。
それを見て、男は優しく微笑んだ。
「あの時にも聞いたね。君の決意に揺らぎはない。」
そう言うと、男はスッと右手をシロヤに向けた。
「君だからこそ、この物語は紡ぐことができた。そして物語を締め括るのは君だ。だからこそ・・・君はこの力を持つにふさわしい。」
その瞬間、男が向けた右手から光が放たれ、シロヤとクロトを優しく包み込んだ。
「これは・・・?」
「君が強くなれた証、人が持つ何事にも負けない力。」
やがて光が止むと、男はゆっくりと右手を戻して、再びシロヤの目を見た。
「君だからこそ託すんだよ。ラーカを倒せる唯一の力。」
「絆の・・・力・・・!」
頭によぎった言葉を言うと、男は微笑みながら話を続けた。
「人を頼り、人を助け、人との関わりを忘れない君だからこそ、絆の力は君にふさわしい。」
「ま、待ってください!それだけで・・・何で俺が・・・?」
シロヤの質問に、男はゆっくりと語り出した。
「ラーカの封印を解く鍵は・・・何か知っているかい?」
「鍵として生まれた者が幸せになること・・・。」
「そう、何故私がその鍵を施したか。」
そこまで聞いて、シロヤは気づいてハッとなった。
「私が・・・って・・・あなたはまさか!」
シロヤの驚きに、男は頷いてさらに続けた。
「私がチラプナと共にその鍵を施した理由。それは、鍵を開けた者がこの力を継ぐにふさわしいからだ。」
「鍵を・・・開けた者・・・?」
男はスッとシロヤを指差しながら、まっすぐとシロヤの目を見ながら言った。
「シアンを幸せにする者こそ、絆の力を受け継ぎ、ラーカを倒すことができる勇者となることができる。」
男の言葉は、まっすぐシロヤの胸に突き刺さった。
「俺が・・・勇者・・・?」
「闇に打ち勝ち、この地を永久の平和で満たしてくれる勇者。やっと出会えた・・・!」
その瞬間、男の体が光に包まれた。そしてそれは小さな光の玉となり、ゆっくりとシロヤの前から散らばり始めた。
「!」
「君の物語は・・・とても楽しく美しいものだった・・・だからこそ君の手で完結させるんだ。白い物語を、白き勇者の手で!」
シロヤは、男の言葉に大きく頷いた。
それを見た男は、あの時と同じように、望んでいた答えを聞くことができて満足したように、優しく微笑んだ。
「・・・あ、待ってください!」
次第に消えていく男に慌てて話しかけるシロヤ。
「これだけは聞かせてください・・・!あなたの絆の力って一体・・・?」
男は問いに答えず、微笑みながら光となって消えた。そして、最後に光の余韻と最後の言葉を残していった。
「君にもわかるはずだよ。愛する人がいる君なら・・・ね。」
白い空間に残ったシロヤとクロトの後ろから、新たに光が現れた。
「シロヤ・・・。」
「シアン様・・・!」
シロヤの横には、光を纏ったシアンの姿があった。その表情はとても柔らかで、どこか暖かみを感じる。
「シロヤ、行こう。」
シアンが手を差し出すと、シロヤはそっとその手を握った。二人の光が一つとなり、強い光となって二人を包み込む。
「シアン様・・・物語を、完結させましょう。」
「違うぞ。これから始まるんだ、私達の物語が・・・終わらせてなるものか。」
「・・・はい!」
二人はしばらく見つめあってから、ゆっくりと歩み始めた。
「クロト、そなたも一緒だ。共に戦おう。」
シアンの言葉に、クロトは大きく頷いた。それは「もちろん!」とクロトが言ってくれたようだった。
「シアン様・・・行きましょう!」
シロヤの言葉に、シアンは強く手を握り返して答えた。
そして、二人は光に包まれた。