表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
15/156

決意

「俺・・・戦います!」

 シロヤは凛とした声でレジオンに言った。対してレジオンは口を少し緩めた。

「関係ない話に首突っ込むのか?命を懸けてまで。」

 シロヤは顔を引き締め、再びレジオンを見た。

「でも・・・目の前で人の命が危険にさらされているのを・・・見過ごすことはできません!」

「それが例え・・・見知らぬ他人でもか?」

「他人とかそんなの・・・関係ありません!」

 シロヤは目線を緩めずにまっすぐとレジオンを見つめる。

「俺だって不思議ですよ・・・立ち寄った国でいきなりもてなされたり、かと思えば女王様の命を守れと言われたり・・・。」

「怖くないのか?」

「怖いです!下手すれば俺だって危ないのに・・・今からでも逃げ出したい気分です・・・。」

 レジオンはシロヤを見た。うつむきながら話すシロヤの姿は、何故だか震えてるように見えた。

「でも・・・何だかこの国の人間とふれあったりしているうちに・・・何だか守りたいと思ってしまうんです。」

 顔を上げたシロヤは、微笑みを浮かべていた。

「だから俺はできる限りのことをします。弱い俺は弱いなりに戦います。」


「ハッハッハー!よく言ったぜ兄ちゃん!」

 さっきまでの雰囲気から一転、まるで酔っぱらったかのようにシロヤの背中を叩く。

「どうやら俺は兄ちゃんを過小評価してたみたいだな!あいつらの目に間違いはなかったみたいだ!」

 見回り台を降りて、シロヤを連れて歩くレジオン。

「お前になら・・・任せられるな。ついてこい!」

 そう言ってレジオンはさらに奥へ歩いていった。


 歩いた先にあった場所は、暗くジメジメした狭い場所だった。

「あの・・・ここは?」

「城の各部屋の屋根裏に続いてる隠し通路だ。作戦会議室だろうが屋根裏から覗けるぜ?」

 レジオンとシロヤは、ほふく前進しながら奥へ奥へ進んでいった。

「城に長くいるからな、このくらいの知識はあって当然だ。」

「でも・・・すごい狭いですよ・・・。」

「贅沢言うな。さぁ、着いたぞ。」

 レジオンが立ち止まった場所は、通路の途中にある小さな小部屋だった。真ん中から光が漏れているのを見ると、おそらく小部屋の真ん中から作戦会議室を覗くことが出来るのだろう。

「声・・・聞こえますか?」

「静かにしてりゃ聞こえるさ。黙って聞くぞ、バレたらアウトだ。」


「では今回の会議での結果を最後確認します。」

 わずかに聞こえる声、会議はどうやら終盤、ギリギリセーフだったようだ。そしてその会議を取り仕切る男の声、シロヤはよく知っていた。

「レーグ・・・。」

「あいつが計画に一枚噛んでいたとはな・・・。」

 レジオンが呟いた。レジオンとレーグは、砂の竜王時代から人の上に立っていた、スピード出世した同期の二人だった。

 会議はどうやら、議題とその話し合いの結果を最後に報告する段階だったようだ。

「では、星の入手方法を変更。リーグンを王族にすることで星を合理的に入手する方法を断念、新たな計画として・・・。」


「シアン現女王の暗殺を実行しようと思います。」


「な!何だっムグッ!」

「馬鹿・・・!でかい声を出すな・・・!」

 慌ててレジオンがシロヤの口を塞ぐ。

 しかし、レジオンも驚きの顔を浮かべていた。当然だ、今聞こえたレーグ達の計画は、"シアン女王の暗殺"なのだから。

「レジオンさん、どうにか止めないと・・・!」

「落ち着け兄ちゃん、暗殺ったってこれからやるわけじゃねぇ。レーグもそこまで馬鹿じゃねぇさ。」

 レジオンはシロヤの横を通って、隠し通路を出ようとした。慌ててシロヤもついていく。

「暗殺するにも最適な場があるってものだ。おそらく時期はこれから・・・。」

「時期・・・近々何かが?」

「あぁ、おそらくそれは・・・バスナダ国最大の祭り・・・。」

「最大の・・・祭り・・・?」

「あぁ、全国民が一日中ごった返し、その中を女王様がパレードカーで通るんだ。おそらくそこを狙うだろう。その方がばれにくいからな。」

 二人は隠し通路を抜け、立ち上がって埃を払った。

「なぁ兄ちゃん、暗殺の件はバルーシ達には言わないでくれ。事を大きくされると動きづらいからな。」

 レジオンはシロヤにお願いした。

「え?でもそしたら俺・・・一人になっちゃうんじゃ?」

「心配するな!なんかあったら俺のところに来な。」

 その言葉を聞いたシロヤは、安心したのか快く頭を縦に振った。

「すまねぇな。俺も何かあったら話すぜ。じゃあ頼んだぜ。」

 レジオンはドアを開けたところで立ち止まった。

「兄ちゃん!」

「は!はい!」

「あんたのこと・・・気に入ったぜ!いつか剣術でも教えてやるよ。」

 そう言ってレジオンは走り去っていった。その背中には、元兵士団長の力強さを放っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ