覚醒
「・・・!」
「・・・ロブズン・・・ロブズゥゥゥン!!!」
後ろを振り向くと、そこには闇の波動によって心臓を貫かれ、糸の切れた人形のように崩れ落ちるロブズンの姿があった。
「ロブズン!しっかりしろロブズン!ロブズン!」
バルーシはすぐさまロブズンを支えるが、ロブズンの体はだんだんと冷たくなっていっている。
「兄・・・さん・・・!」
「ロブズン!もう喋るな!」
バルーシは涙を流しながら叫ぶが、ロブズンは構わずに震える声で叫び続ける。
「ごめん・・・なさい・・・認めて・・・欲しかった・・・だけだった・・・のに・・・!」
「もう言うなロブズン!お前は十分強い!ゴルドー兄さんにだって私にだって負けない立派な戦士だ!」
涙を流しながら言うバルーシの言葉を聞いて、ロブズンは次第に霞んでいく視界にバルーシを映し、最後に優しく微笑んだ。
「ありがとう・・・銀兄・・・ちゃん・・・!」
最後にそれだけ言って、ロブズンの体は完全に力を無くして、ゆっくりと瞳を閉じた。
「ロブズン・・・ロブズゥゥゥゥゥン!!!」
柔らかな表情のまま息絶えたロブズンの体を腕に抱きながら、バルーシは激しく涙を流しながら叫んだ。
「弱い・・・やはり人の心では人は救えぬか。」
その言葉を聞いて、目の前で息絶えたロブズンの姿を見ていたシロヤが、ゆっくりとラーカの方を振り返った。
「ラーカ・・・それがお前の強さか・・・!」
震えながら言うシロヤの問いに、ラーカは高笑いをしながら答える。
「当然だ!人をも掌握するこの我が力こそが全て!絶対の力だ!」
そのラーカの言葉に、ドレッドとルーブが歓喜の叫びを上げる。
「すげぇ!その力さえあれば誰にも負けねぇ!」
「ラーカ様!私達にもその力をご教授ください!」
仰ぐようにラーカに手を向ける二人に向かって、ラーカは手をかざした。
「いいだろう、くれてやる。」
「さすが話がわかるぜ!」
ラーカは手をかざしたまま、冷たく言い放った。
「・・・用済みの貴様らには死をくれてやる。」
そして、ラーカは手から闇の波動を二人に向けて放った。
「な!何故ですラーカ様!私達はあなた様に!」
「下らぬ思想に敗れた貴様らに用はない!私の前から消え去るがいい!」
「そんな!ふざけてんじゃねぇ!」
ドレッドの激昂をよそに、闇の波動は完全に二人をとらえ、まっすぐ向かってきた。
「くそぉ!」
「ラーカさまぁ!」
目の前まで迫った闇の波動と、迫り来る死の恐怖に目を閉じた。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
二人は目を瞑り身を屈めたまま、しばらくしてからゆっくりと目を開けて身を起こした。
「・・・!」
「あなた・・・何を・・・!」
二人は信じられない表情で固まった。
闇の波動は、二人との間に現れた第三者によって遮られていた。
「ラーカ・・・!信頼している自分の部下まで手にかける気か!」
闇の波動をその手で防ぎながら、第三者―――シロヤはラーカに向かって叫ぶ。
「下らぬ思想などに負ける者などいらぬ!」
「だからって・・・信頼している者を切り捨てることが許されると思っているのか!」
その言葉を聞いて、ラーカはさらに手から放たれる闇の波動を強くする。
「いらぬ者は切り捨てるのみだ!貴様もろとも消し去ってくれるわ!」
さらに強くなっていく闇の波動に、シロヤは次第に押されていく。
「くっ・・・!」
腕の力が次第に無くなっていき、足が震え始めるシロヤ。すでに限界は迎えているシロヤだが、後ろの二人を守るために防ぎ続ける。
「何で・・・何で私達を・・・?」
ルーブがシロヤに聞くと、シロヤは振り向いて笑顔を向けた。
「例え敵でも・・・俺は死んでほしくないんです!生きてる限り、必ず償うチャンスはあります。だから、無駄に人が死ぬのは・・・見たくないんです!」
「何だよそれ!ただの偽善者じゃねぇかよ!」
シロヤの言葉を理解できずに叫ぶドレッド。しかし、それでもシロヤは笑顔を止めない。
「それに・・・俺は許せない。簡単に人を切り捨てるラーカが・・・人と人との繋がりは確かに脆いかもしれない、でも、それがどんな力にも負けない強い力にもなるんです。だから俺は・・・信じるんです。」
「信じる・・・?」
ルーブの疑問に、シロヤははっきりと答えた。
「人と人が紡げる繋がりの力・・・絆を!」
その瞬間、砂の大地が突然、黄金に染まり始めた。