降臨
「どこまで私をコケにするつもりだぁ!!!」
突然響き渡る怒号に、全員が恐怖を感じて身構える。
「許さぬぞ貴様ら・・・!この国ごと貴様らを消滅させてくれるわ!」
その瞬間、地面が激しく揺れ始めた。
全員が突然の揺れによって倒れたその先で、砂の地が割れて黒い巨大な繭が現れた。
「あれは!」
「ラーカ・・・!」
地面を割って出てきたそれは、地下帝国で見たラーカの繭、そのものだった。
繭は空高く浮かび上がると、闇を放出しながら激しく収縮を始めた。
それを見たシロヤは、瞬時に理解した。あの繭のあの動きは、危険なものだ。
「皆さん!伏せてください!」
シロヤが叫ぶと、全員が一斉に地面に伏せた。
その瞬間、収縮を続けていた繭から、闇の波動が一気に放出され、シロヤ達に襲いかかってきた。
勢いよく降りかかる闇の波動に、全身に力を込めて耐えるシロヤ。少しでも力を抜けば、シロヤの体はたちまち飛ばされてしまうだろう。
しばらく闇の波動から耐えると、やがてその流れが緩やかになり、最後には闇の波動が消えた。
「・・・!」
落ち着いたシロヤが上を向くと、そこには巨大な闇が浮かんでいた。
「あ・・・あれが・・・!」
その闇の中に浮かぶ人影。闇を後ろにして宙を佇む黒髪の男を見て、シロヤは恐怖で固まった。
「ついに目覚めたか・・・!」
「あぁ・・・ラーカ様・・・!」
ドレッドとルーブが、宙に浮かぶ男に向かって手を合わせる。
「じゃあ・・・あれが・・・!」
「その通りだ。」
同じく宙に浮かぶ男を見て恐怖しているバルーシ。
そしてそのバルーシの言葉に反応したのは、金髪の青年、ゴルドーだった。
ゴルドーは宙に浮かぶ男を見上げながら口を開いた。
「あれが、この地に封印されていた悪の化身。その昔、勇者とチラプナによって封印された男、ラーカだ。」
その言葉に、全員は声を出せないでいた。ついに、倒すべき敵が目の前に現れたこと、そしてそのラーカが見せる絶対の存在感に、全員が恐怖していた。
「あれがラーカ・・・?」
「お兄様・・・!」
その存在感に圧倒されるプルーパと、不安そうにシロヤに寄っていくローイエ。
他の人達も、そのラーカの存在感と不安感に表情を歪めている。
それを横目に、ゴルドーは白く光輝く剣をラーカに向かって構えた。
「久しぶりだな、ラーカ。」
ラーカに向かって剣を向けるゴルドー。
「・・・貴様、あの時私を封印した人柱か。」
ラーカはゴルドーに向かって指を差す。たったそれだけの動作で、全員の緊張が一気に高まる。
「あぁ、あの時、お前を倒すことが出来なかった無念をここで晴らす。」
そう言うと、ゴルドーの体が金色に光輝き始め、その金色の光がゴルドーをゆっくりと持ち上げ始めた。ゆっくりと浮かび上がっていくゴルドーは、やがてラーカと同じ高さにまで上がった。
「星の力か、小賢しい」
鼻で笑うラーカに、ゴルドーは再び剣を構え、まっすぐにラーカを見る。
「グンジョウ国王の・・・敵討ちだ!」
雄叫びと共に、ゴルドーはまっすぐラーカに向かっていった。