砲身
「それって・・・!」
ランブウがマントから取り出したのは、人が扱うには巨大すぎる程のガトリング砲だった。
巨大なガトリング砲を見て驚いている全員の表情を横目に、ランブウは軽々とそのガトリング砲を担ぎ上げた。
「こいつを使うのは本当に久しぶりだぜ。」
そう言うと、ランブウは担ぎ上げていたガトリング砲を大きく振りかぶって黒い塊に向かって投げつけた。
そしてランブウは、勢いよく飛んでいくガトリング砲の後ろで深く腰を落とし、そのままガトリング砲に追いつくように高く跳び上がった。
「うぉぉ!!!」
跳び上がった瞬間、ランブウの右手から勢いよく煙が上がる。
そして右手から上がる煙が止まった瞬間、ランブウの右腕が勢いよく外れ、そのまま重力にしたがって勢いよく落ちてきた。
「!!!」
全員が驚いた。
「ランブウさんの右手が!」
「シロヤ様!あれは!」
バルーシが指を差すと、落ちてきた右手は機械仕掛けの義手だった。
「ランブウって義手だったの・・・!」
プルーパが言うと、他の全員も同じように驚いた。長くランブウと一緒にいるレジオンやフカミ達でさえ、ランブウが義手であることを知らなかった。
義手を落としたランブウは、飛んでいるガトリング砲に近づくと、その砲身に向かって義手があった右半身を向ける。
そのままガトリング砲の砲身とランブウの義手があった右半身は、大きな音を立ててしっかりと固定され、義手の代わりにガトリング砲が右半身に装着された。
「うぉりゃあああああ!」
右半身についたガトリング砲を空中で振り上げて構えると、そのまま黒い塊に向かって放つ。
回転しながら、激しい音を立てて黒い塊に向かって弾を放ち続けると、黒い塊のヒビがさらに大きくなり始めた。それでもなお、ランブウのガトリング砲から放たれる弾は止まない。
「すごい・・・!」
激しいランブウの攻撃に感嘆の声を漏らすシロヤ。シロヤ以外もその光景に声さえ出せないでいる。
そして、ひたすらガトリング砲で撃ち続けた後、ランブウが突然撃つのを止めて地面に着地した。
すると、ランブウの右半身から再び激しく煙が上がると、先ほどの義手のようにガトリング砲の先が音を立ててランブウの右半身から落ちた。
「あれは!」
ガトリング砲の先が落ちると、そこには巨大な穴が開いていた。しかしそれがただの穴ではない事は、容易に想像できる。
ランブウはそのまま再び高く跳び上がると、その巨大な穴を黒い塊に向けて構えた。
「こいつで最後だ・・・食らいやがれぇぇぇ!」
ランブウの雄たけびと共に、巨大な穴から巨大な弾が激しい音を立てて勢いよく発射された。
「あれは・・・大砲!」
巨大な穴から発射されたのは、巨大な砲弾だった。
砲弾は勢いよく加速しながら黒い塊に向かっていき、そのまま黒い塊に直撃した。
その瞬間、黒い塊から大爆発が起こった。
「うわぁ!」
「きゃあ!」
周りに広がる爆風に身をかがめるシロヤ達。その爆風は、少しでも気を抜けば体ごと飛んでいってしまいそうな程の強さだった。
足に力を入れて耐えるシロヤ達の目線の先では、黒い塊が炎に包まれてゆっくりと落ちていっているのが見えた。
「倒した・・・!闇の塊を!」
そして、ラーカが放った地下帝国を破壊する程の巨大な闇の塊は、炎に包まれながらゆっくりと落ちていった。
その光景を背景に、ランブウはゆっくりとシロヤ達に歩み寄る。その途中、砲身が激しい煙と音を立てながらランブウの右半身から落ちた。どうやら、砲身は壊れて使い物にならなくなってしまったようだ。
シロヤの前に立つと、ランブウは微笑を浮かべながら左手で強く胸を叩いた。
「待たせたな!国境警備隊ランブウ、完全復活だ!」
その表情は、極限状態を乗り越えてさらに強くなったランブウらしい表情だった。
「・・・はい!」
シロヤはランブウの前で、笑顔を浮かべて大きく頷いた。
「許さぬ・・・許さぬぞぉ・・・!」
「!!!」
その時、地を這う声が全員に恐怖を与えた。




