復活
気づくと、シロヤ達は全員"禁断の地"の前に立っていた。
「クピン!大丈夫?」
見ると、クピンは疲れ果てた表情で倒れていた。プルーパがゆっくりと体を起こすと、小さく微笑んでシロヤの方を見た。
「シロヤ様・・・私・・・役に立てたでしょうか?」
「・・・はい、もちろんです。」
それを安心した表情になるクピン。
「っ!お兄様!あれ!」
突如、ローイエが叫びながら空を指差した。
「な・・・!なんだあれは・・・!」
ローイエが指差した方を見ると、そこには闇に包まれた黒い巨大な塊が宙に浮いていた。
「シロヤ君!何かしようとしてるわ!」
プルーパが叫ぶと、黒い塊はたくさんの小さな闇の塊をいくつも生み出した。
小さい塊はゆっくりと地面に降りていき、地面に着いた瞬間に三つ首の狼へと姿を変えた。
「あれはさっきの!」
バルーシが叫んだ瞬間、小さな塊はどんどんと三つ首の狼へと姿を変えていき、その数は数十匹にまで及んだ。
「そんな・・・!一体であれだけ強いって言うのに・・・!」
すぐさま戦闘体制に入るシロヤだったが、狼達はシロヤ達を素通りしていってしまった。
「・・・え?」
「あの方向って・・・!」
ローイエの呟きに、シロヤは全身に冷たいものを感じた。
「こいつらの狙いは・・・街だ!」
狼が向かっているのは、国民達が住む街の方角だった。
「そんな・・・!国民の皆さんは街にいます・・・!このままでは・・・!」
クピンが弱々しく叫ぶ。それを聞いてすぐさま狼達を止めようとするが、シロヤもローイエも簡単に弾かれてしまった。
「お兄様!このままじゃ皆が!」
「くそ!ラーカ・・・国民を狙うなんて!」
怒りに震えるシロヤ。
そのとき、
「シロヤ君!危ない!」
「え・・・?」
瞬間、目の前には三つ首の獣が牙を立てて迫っていた。
完全に不意をつかれたシロヤは、襲ってくる狼の牙を見てることしかできなかった。
「シロヤ君!」
「お兄様!」
ギシャアアアアア!!!
「!」
突如、シロヤの目の前で狼が奇声を上げて倒れた。
「・・・?」
何が起こったのかわからないシロヤ。そこに、さらに狼が三匹、シロヤに向かってきた。
「おいおい、穏やかじゃないな、この犬どもが。」
突如聞こえた声。その方向を見ると、そこには二丁拳銃を構えた男が立っていた。
男はシロヤに襲いかかろうとしている三匹の狼に狙いを定め、二丁拳銃の引き金を引いた。
大きな破裂音が三回鳴り響く。その瞬間、狼は倒れて動かなくなった。
「ふぅ・・・待て、もできない犬とはな。」
男は二丁拳銃をしまい、シロヤの元に歩み寄ってきた。
「無事だったんですね・・・!」
「あぁ、一回は遅れをとったが、次はあんなんにはならないからな!」
シロヤに向かって笑顔を見せる男。
シロヤは男の名を叫んだ。
「無事でよかったです!ランブウさん!」 その場にいる全員がランブウの方を見る。
危険な状態、と聞いていたが、今のランブウを見れば本当にそうだったのか疑いたくなるほど、ランブウは元気だった。
「ランブウ!」
「ランブウさん!」
フカミとキリミドがに駆け寄ってくると、ランブウは二人の頭をそっと撫でながら微笑んだ。
「ありがとう、俺達を看病してくれて。」
しばらく頭を撫でた後、ランブウは再び空に浮かぶ巨大な塊に目をやった。
「話には聞いてたが・・・こいつは中々の大物だな。」
ランブウは巨大な塊を見ながら笑うと、その表情のままシロヤの方を見た。
「シロヤ、こいつは俺に任せてくれ。お前らは少しでいいから休んでろ。」
「・・・だけど!」
言おうとした瞬間、ランブウはシロヤの言葉を手で制した。
「心配するな。あいつらのことだから、今頃は国民の避難を終えてるだろうよ。」
「え・・・?」
黒い塊に向かっていくランブウ。
「こいつは、俺達国境警備隊のリハビリ相手だ。だから心配するな、すぐ終わらせてやる。」
ランブウの言葉を聞いたシロヤは、何故か安心感に包まれた。根拠はないが、ランブウに任せれば大丈夫、そんな気がした。
「・・・はい!お願いします!」
それを聞いたランブウは、黒い塊に向かって歩きながら二丁拳銃を構え、静かに止まって黒い塊を見上げた。
「さぁて、久しぶりに暴れさせてもらうぜ!」
ランブウは地面を蹴り、勢いよく跳び上がった。