表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
143/156

崩壊

「な!何だ!?」

 突如吹き出してきた闇に驚くシロヤ。

 闇はゆっくりとラーカの近くに塊となって落ち、やがてその闇は三つ首の狼に変化した。

「さぁ、純粋な闇をまといし獣を相手に、果たして勝てるかな?」

 ラーカの言葉と同時に、三つ首の狼は地面を蹴ってシロヤとバルーシに向かって牙を向けた。

「速い!」

「シロヤ様!」

 異常なまでの速さに対応が遅れたシロヤ。そのシロヤを守るため、バルーシは剣で狼の牙を止める。

「くっ!」

「バルーシさん!」

 予想以上の牙の強さに圧倒されるバルーシ。次第にバルーシは、狼の力に負けて後ろに下がりつつあった。

「なんという力だ・・・!このままでは・・・!」

 キィィィン!

「!」

 バルーシの剣が宙を舞い、地面に突き刺さった瞬間、狼はバルーシに向かって牙を突き立てた。

「ぐわぁぁぁ!」

 肩に牙の一撃を食らい、膝をついて肩を押さえるバルーシ。

 狼は止めを刺そうと、再び牙を突き立てようと構える。

「させない!」

 狼の動きを察知し、すぐさま狼とバルーシの間に割って入るシロヤ。

 狼は割り込んできたシロヤに攻撃目標を変え、牙を向けて飛びかかってきた。

「っ!」

 すぐさま横に飛び退く。

 何とか避けることができたシロヤだったが、避けてから体制を立て直すよりも狼の第二撃の方が速かった。

 再び飛びかかってくる狼に、シロヤは対応できなかった。

「ぐぅ!」

 肩に噛みついてきた狼を腕で防いだシロヤだったが、腕の防御では限界があった。

 何とか払い飛ばそうとするが、狼はしっかりとシロヤの腕を捕らえている。

「うっ・・・!」

 次第に力が弱まっていくシロヤ。

 やがて、シロヤの腕の防御が弱くなり、狼はその隙を狙ってシロヤに突進した。

「うぁ!」

 そのまま地面に倒れるシロヤ。何とか立ち上がろうとしたが、その瞬間に狼はシロヤの上に乗って動きを止めた。

「つまらん、やはり人の思いはその程度か。」

「くっ・・・!」

 嘲笑うかのようなラーカの言葉。

「もうよい、そのまま奴の首を食いちぎってしまえ!」

 ラーカの命令に反応し、狼はシロヤの首に向かって牙を向けた。

「シロヤ君!」

 プルーパがすぐさま狼に向かって短剣を投げようとするが、その瞬間、狼がプルーパの方を向いて吠えた。

「あぁ・・・!」

 狼の咆哮を聞いて、体が動かなくなるプルーパ。

 その強力な狼の威圧感に、プルーパは動きを封じられてしまったのだ。

「ふふふ・・・そこで見ているがよい。貴様らの愛する者が死ぬ瞬間をな!」

 ラーカの言葉と共に、狼はシロヤの首に狙いを定め、勢いよく降り下ろした。

「シロヤ君!!!」

 プルーパが叫ぶ。

「!」

 刹那、プルーパの必死な叫び声と共に空気が変わった。

 その正体は、プルーパのすり抜けて勢いよく飛んでいった風だった。

 その風は勢いよく、そしてまっすぐにシロヤと獣に向かって吹き、やがて風は獣を吹き飛ばした。

「・・・!」

 獣を吹き飛ばしたのは風ではなかった。風のような素早さでシロヤに向かっていったそれは、キラキラと光る黄金の余韻をその軌道に残していた。

「まさか・・・星を・・・?」

 この余韻は、まさしく星によるものだ。

 星によって風のスピードを得た人。プルーパはその名前を呼んだ。

「ローイエ!」

 そう、獣を吹き飛ばした風の正体はローイエだった。

 キラキラと光る星の煌めきを帯びたことにより、ローイエはラーカの威圧感を吹き飛ばし、桁違いのスピードを得たのだ。

「お兄様!大丈夫!?」

 すぐさま駆け寄ってシロヤを起こすローイエ。

「ローイエ様・・・!」

「よかった・・・!お兄様、ちゃんと生きてるよね!?」

 ローイエの言葉に微笑みで返すシロヤ。

 それを見て安心したローイエは、立ち上がって吹き飛ばされた狼の方を向いて槍を構えた。

「見ててねお兄様!私が人の思いの強さを証明するから!」

 そう言うと、狼は一直線にローイエに向かってきて、そのままローイエに向かって牙を向けた。

 それをローイエは槍で防ぎ、狼との力比べを始めた。

「ローイエ様!」

 シロヤは思わず叫んだ。バルーシが力負けした相手にローイエが力比べなど無謀すぎる。

「お兄様!大丈夫だよ!」

 今すぐ助けに入ろうとしていたシロヤの方に顔を向け、ニッコリと微笑むローイエ。

 そして、ローイエは再び狼の方を向いて槍に力を加えた。

「何だと!?」

 ラーカの驚きの声が響く。

「ローイエ様が・・・押してる・・・!」

 槍に力を加えた瞬間、狼はどんどんと後ろに下がっていった。

 ラーカが驚くのも無理はない。純粋な闇の結晶から生まれた狼の力は、ドレッドやルーブの比ではないのだ。

 次第にローイエが狼を押していき、そしてさらに槍に力を加えた瞬間、狼の牙が音を立てて砕け散った。

「今だ!えぇい!」

 隙を見つけたローイエは、そのまま狼に向かって槍を振るう。 狼は槍の一撃を食らい甲高い雄叫びを上げ、そのまま倒れて動かなくなった。

「あり得ぬ・・・!闇の結晶から生まれし獣を・・・!」

 呆然とするラーカに向かって、ローイエは槍を向けた。

「これがシロヤお兄様の人の思いの強さだよ!お前なんかに絶対負けないんだから!」

 ローイエの言葉を聞き、ラーカは呆然としていた状態から一転、怒り狂った様子で怒号を放つ。

「ぐぉぉ!人の思いなどという下らぬ力に!闇が負けるなどあり得ないのだ!」

 ラーカの怒号が終わった瞬間、ラーカの周りに巨大な闇の塊が出現した。

「何だ!?」

「破壊してやる!貴様らもろともこの国を全て破壊し尽くしてやるのだ!」

 その瞬間、黒い塊が巨大化を始めた。

「まさか・・・!地下帝国を壊すつもりか!」

「そんな!地下帝国には国の皆が避難してるって言うのに!」

 シロヤとローイエはすぐさま黒い塊を倒そうとするが、闇の力が強すぎて迂闊に近づけない。

「まずい!このままじゃ国民が!」

「シロヤ様!」

 焦るシロヤに、誰かが声をかけた。声の方を向くと、そこにはクピンが立っていた。

「クピンさん・・・!」

 シロヤはクピンを見た瞬間、その姿に驚いた。

 クピンの体には、ローイエ同様の金の光がまとわれていた。つまり、クピンも星の力を得たということだ。

「シロヤ様、今から私の霊力で地下帝国にいる皆さんを地上へ送ります!」

「クピンさん・・・!お願いします!」

 シロヤの言葉と共に、クピンは目を閉じて精神を集中する。

 やがてクピンの周りに光が現れた時、クピンは勢いよく叫んだ。

「皆さん!今から地下帝国の中にいる皆さんを外へ送ります!」

 そう言った瞬間、倒れていたリーグン、レジオン、フカミ、キリミドが光に包まれ、姿を消した。

 それに続いてプルーパ、バルーシ、ローイエと続き、そしてシロヤとクピンが同時に光に包まれ、地上へと送られた。

「小癪なぁ!だが残念だったな!我が目覚めまで、貴様らの命が尽きるまでの時間はあとわずかなのだ!ふははははははは!!!」

 ラーカの笑い声と共に、地下帝国は黒い塊によって破壊され、崩れ落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ