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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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王家

「王家の血を継ぐ者・・・?」

 ラーカの突然の言葉に、その場の全員が固まった。

「どういうことだ!正当な王家はシアン様やプルーパ様、ローイエ様が継いでいる!私に王家の血が流れているなどあり得ない!」

 固まったまま、王家の血を継ぐ者と言われたバルーシが怒りの表情を向ける。 しかし、ラーカは臆することなく話を続ける。

「ふん、偽りの王家を真実と崇めるか。」

「偽り・・・?どういうことだ・・・!」

 信じられない表情で聞くシロヤ。

 そんなシロヤに向かって、ラーカは笑いながら言葉を続けた。

「ならば貴様らに教えてやろう。この大地を統治するべき真実の王の血を。」

「ちょっと・・・待ちなさいよ・・・!」 ラーカの言葉を遮るように、プルーパが震えながらも威圧に負けないと立ち上がる。

「あなたの言葉・・・まるで私達が偽の王族みたいじゃない・・・!」

 プルーパが威圧に耐えながら言うと、ラーカはそれを聞いて再び笑った。

「ふん、ならば貴様らが本物だと言う確証があるのか?」

「なんですって・・・!」

 ラーカの言葉に、プルーパは面を食らったような表情で固まる。自分が正当な王家である、というのは昔か教わってきたことだが、証明などできるはずがない。

「出来ないであろう。貴様らの中に正当な王の血は一滴すら流れていないのだからな。」

「正当な王の血・・・?」

 ラーカは静かに語り始めた。

「私が封印された忌まわしきあの日・・・国の王として据えられたのは、忌まわしき勇者とチラプナの子供だ。」

「ということは・・・プルーパ様やローイエ様は勇者とチラプナの子孫・・・?」

 そこまで言うと、ラーカの声の調子が怒りへと変わった。

「しかし、本来その子供に王を継ぐ資格はない!王を継ぐべきは私の血を受け継ぎし者のはずだ!」

 どんどんと怒りを強くしていくラーカの声。空気をも変えんばかりの威圧感に全員が身を固くする。

「だが!私の血を受け継ぎし者は迫害されていた!虚構の王家によってだ!」

「迫害・・・!?そんなこと!」

 ラーカの言葉に反論するプルーパ。しかし、それでもラーカの怒りは収まらない。

「今の王家など所詮は虚構に過ぎん!私は今の王家を抹殺し、我が王の血を再び復活させなければならぬのだ!」

 ラーカの言葉に、プルーパとローイエが恐怖の表情で固まる。

 そんな中一人、ラーカの言葉を聞いて震えている男がいた。

「・・・バルーシ・・・さん?」

 シロヤが気づき、震えているバルーシに向かって声をかけた。

 ただ一人、バルーシのみが体を震わせていた。それは怒りや武者震いといったものではない、言うなればそれは"恐怖"だった。

「・・・まさか・・・!」

 その言葉に、ラーカは怒りから一転し高笑いを始めた。

「その通りだ!貴様こそが私の血を!正当な王の血を受け継ぎし者だ!」

 ラーカから放たれた言葉に、全員が衝撃を受けた。

 そしてその当事者であるバルーシは、体の震えがどんどんと強くなっていた。

「・・・!」

 我に帰ったシロヤが見ると、いつの間にかバルーシは剣を落として茫然としていた。

「な・・・!何を根拠に言っているんだ!バルーシさんがラーカの血を受け継ぐ者だなんて!」

 シロヤが叫ぶが、ラーカは全く笑いを止めようとしない。

「簡単なことよ!貴様らが禁断の地と呼ぶ地下王国の扉は我が血を受け継ぐ者にしか開けられん!」

 シロヤはそれを聞き、その時のことを思い出した。

 あの時、シロヤがいくらやっても開かなかった扉を、バルーシはいとも簡単に開けてしまった。

「まさか・・・あれが・・・!」

 そう言った瞬間、バルーシは膝をついて崩れ落ちた。

「バルーシさん!」

「バルーシ!」

 すぐさまシロヤとプルーパが駆け寄る。

「バルーシ!しっかりして!」

「私は・・・ラーカの・・・敵方の血を引いてる・・・。」

 うわ言のように呟くバルーシ。

「ふはははは!その通りだ!さぁ、我が元に来るのだ!正当な王の血を受け継ぎし、新たなる王よ!」

 ラーカの言葉に、さらに精神にダメージを受けるバルーシ。

「バルーシ!」

 プルーパが体を起こそうとするが、もはやバルーシは自分の力で立つことすら出来ないほどに脱力していた。それは、以前レーグによって脱力していたシアンに近い、言わば"生きる気力"を失った状態に近かった。

「・・・。」

 それを見て、シロヤはバルーシから離れ、バルーシとラーカの間に立って剣を構えた。

「シロヤ君・・・?」

「シロヤ様・・・?」

 プルーパとバルーシが同時にシロヤの名前を呼ぶ。

「お前なんかに・・・バルーシさんは渡さない。」

「!」

 シロヤの言葉に驚くバルーシ。

 そんなバルーシを後ろに、シロヤは剣を構えたままラーカに向かって言う。

「例えバルーシさんがお前の血を受け継いでいようが、新たな王であろうが、俺達の仲間であることに変わりはない!」

 シロヤの言葉がだんだんと強くなる。それを聞いていたバルーシは、膝をつきながらいつの間にか涙を流していた。

「愚かな者だ。勝てないとわかっていながらも仲間のために私に歯向かうか。」

「その通りだ!仲間を守るためならば、例え勝てない相手でも立ち向かう!そして・・・勝つんだ!」

 強者を前にしてなお揺るがないシロヤの決意。それは、崩れ落ちていたバルーシの心に深く刻まれた。

「・・・。」

「バルーシ・・・!」

 そして、バルーシは自分の力で立ち上がり、自分の力で剣を拾い、構えた。

「バルーシさん・・・!」

「シロヤ様の決意・・・確かに受けとりました。そしてその決意と共に・・・私も戦わせてください!」

「・・・はい!」

 そして、二人は再び剣を構えてラーカに向かい合った。

「貴様!我が血を裏切ると言うのか!」

 激昂するラーカだったが、バルーシはその威圧に負けずに剣を構えたまま答えた。

「私は確かにお前の血を継いでいる。だが、私は自分の意思で選択する!」

 その言葉を聞いた瞬間、ラーカの威圧感が一気に空間を満たした。

「下らぬ!!民を導き全てを支配すべき血に人の情や思いなどは無力なり!」

「それは違う!」

 今まで以上の威圧感を浴びながらも、全く怯まずに剣を構えたままラーカに向かって立っているシロヤ。そこには、ラーカの威圧感をも弾き飛ばす程の仲間を思う強い気持ちが現れていた。

「お前に見せてやる!仲間を思う力を!誰にも負けない強い力を!」

「はっはっは!ならば見せてみよ!人の思いの強さとやらを!」

 その瞬間、黒い繭から怪しい闇が溢れだした。

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