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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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威圧

 広い空間にたどり着いたシロヤ達が見たのは、黒い塊だった。

「これは・・・繭?」

 黒い塊の正体は、壁に繋がれて佇んでいる巨大な黒い繭だった。

 動くことのない繭だったが、その威圧感は決意に満ちたシロヤ達の表情を険しくするのに十分すぎるほどだった。

「これがラーカなのか・・・?」

 バルーシが呟いた。


「・・・如何にも・・・。」


「!!!」

 突如、地を這うほどの低い声が響いた。そしてその声が響いた瞬間、全員の緊張感が最大にまで高まった。

「あなたが・・・その昔、闇でこの大地を統治しようとした・・・。」

 プルーパが絞り出したように言うと、声はそれに答えるように続けた。

「私がラーカ・・・この大地の絶対の王にして闇の化身なり・・・。」


「頭が高いわぁ!!!」


「!!!」

 突如、地を這う声が怒号に変わった。

「ぐわぁ!」

 そしてその声のとてつもない威圧感によって、全員が立っている状態を保てずに倒れてしまった。

「くっ・・・!」

「声だけでこんなんになっちまうのかよ・・・。」

 苦しそうに立ち上がろうとするリーグンの横で、レジオンがため息混じりに呟いた。

「う・・・うぅ・・・!」

「クピンさん!」

「まずいわね・・・他の人も・・・。」

 辛うじて意識を保っているフカミとキリミド。周りを見渡してみると、クピンを始め、ローイエやプルーパも倒れて嗚咽が出ていた。

「ふふふ・・・理解したか、力の差と言うものを・・・!」

 声が再び響く。

「理解したか?お前達じゃかないっこないんだよ。」

「そうね、声で組伏せられてる時点で倒そうなんて・・・え!?」

 言葉が途切れるルーブ。

 その目線の先には、ラーカの威圧感に打ち勝ってゆっくりと立ち上がるバルーシとシロヤが映っていた。

「嘘でしょ・・・!威圧感に打ち勝つなんて・・・!」

 驚きの表情で固まる二人を横目に、シロヤとバルーシは同時に剣を抜いて繭に向かって構えた。

「ほぅ・・・それほどの強き心を持つ者がまだいたとはな・・・。」

 感心するように言うラーカに向かって、シロヤは剣の先を繭に向けた。

「約束を果たすためです!絶対にラーカを倒して平和を手にすると!」

 シロヤの言葉を聞き、ラーカは高らかに笑い出した。

「ハハハハハ!この私を倒すと言うか!よほどこの世に未練がないと見た!」

 その言葉に、今度はバルーシがシロヤと同じように繭に剣の先を向けた。

「決意を下らぬと笑う外道に、私達が誓った約束を打ち砕かれはしない!」

 そして、二人は同時に地面を蹴って繭に向かっていった。

「無駄だ!決意のみでは私には勝てん!」

 その言葉と共に、繭の周りが闇に包まれた後、二人に向かって伸びていった。

「うわぁ!」

「ぐあぁ!」

 闇は二人を軽く弾き飛ばし、再び繭の周りに集まった。

「この程度の闇で押し負けるか、脆いものよ。」

 嘲笑うラーカ。

 そんなラーカに反抗するように、二人は再び立ち上がった。

「決意は・・・砕けないんだ!」

 バルーシの言葉と共に再び繭に向かっていく二人。しかし、さっきと同じように繭を取り巻く闇に阻まれ、再び弾き飛ばされてしまった。

「ふっ・・・何度やっても同じこと・・・。」

 何度も立ち上がり、そして何度も弾き飛ばされる二人。

 そして、

「ぐわぁぁぁ!」

「バルーシさん!」

 地面に倒れたまま唸るバルーシ。それを見て、ラーカはさらに笑う。

「脆い、つまらん、貴様らの決意は所詮その程度か。」

「ち、違う!」

 苦痛の表情で震えながら立ち上がるバルーシ。

「ふん・・・ん?」

 剣を構える二人を見て、ラーカが初めて声の様子を変えた。

「貴様・・・まさか貴様は・・・ゴルドーの・・・。」

「ゴルドー兄さん・・・!?」

 バルーシの言葉を聞いて、ラーカはさらに高らかに笑い始めた。

「ハハハハハ!まさかこうも偶然が重なるとはな!」

「・・・何の話だ・・・!」

 笑い続けるラーカ。

 しばらくして笑いを止めると、ラーカはバルーシに向かって言った。


「よくぞ私の前に現れた!正当なこの大地の王家の血を継ぐ者よ!」


 その場の全員が固まった。

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