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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
140/156

拠点

「シロヤ君!」

 広い空間に響く声。

 長い道を抜けてやってきたのは、着物から普段のドレスに着替えたプルーパだった。

 そしてその後ろには、ローイエ、クピン、レジオン、リーグン、フカミとキリミド、そしてクロトが揃っていた。

「皆さん・・・!無事だったんですね!」

 全員の顔を見て、安堵の表情を浮かべるシロヤ。

「当然です。私達はシロヤ様との約束を果たすため、絶対に勝つと誓いましたから。」

 シロヤの後ろで、バルーシがゆっくりと立ち上がりながら言った。

 その後ろには、同じくゆっくりと立ち上がるロブズンの姿があった。

「あなたは・・・!」

 プルーパの言葉と同時に、ロブズンはバルーシの前を抜けてシロヤと向かい合った。

「・・・白の勇者よ、今まで私は数多の過ちを犯してきた。しかし、私は兄の言葉を信じて罪を償うことを決めた。」

「ロブズンさん・・・。」

 そして、ロブズンは落ちていたシロヤの剣を拾い、シロヤの前に差し出した。

「願わくは・・・白の勇者の戦いを見届けたい。そして私は、あなたのために過去を清算する。それをここに・・・誓います。」

 ロブズンの決意、一心にシロヤを見つめブレないその様は、とても強いものだというものを物語っている。

 そのとても強い決心を前に、シロヤも強い心で差し出された剣を握り、ロブズンに答えた。

「はい!ロブズンさんの決意・・・確かに受け取りました!」

「・・・ありがとう、白の勇者よ・・・。」

 ロブズンは、小さく微笑んだ。

 その後ろでは、プルーパが目でバルーシにメッセージを送っていた。

「よかったわね、弟さんを救えて。」

 プルーパのメッセージを受け取ったバルーシは、プルーパに向かって微笑み、目でメッセージを送り返した。

「ありがとうございます、プルーパ様。」

 そのメッセージを受け取り、プルーパも優しく微笑み返した。

「・・・ところでロブズンさん、ここは一体・・・。」

 突如、シロヤが今まで持っていた疑問を切り出した。


「ここは俺達のねぐら、言わば俺達の拠点だ。」


「!」

 突如、プルーパ達の後ろから声が聞こえた。

 振り向くと、そこには赤髪の男、ドレッドと、青髪の女、ルーブが立っていた。

「あなたたち!」

 プルーパの声に、全員が一斉に武器を構える。

「お、おいおい!何もしねぇって!」

「そうよ、私達はもう負けた。武器も壊されてなくなった私達に戦う意思はないわ。」

 二人は手を挙げて武器がないことを確認させる。確かにドレッドの長尺刀もなければ、ルーブの斧もない。

「・・・戦う意思がないってのは、信じていいみたいね。」

 プルーパの言葉に安心して、全員が武器をしまって戦闘体制を解く。

 それを見て安心したドレッドとルーブは、プルーパ達の横を通り、洞窟の先の道の前に立った。

「俺達の拠点はこの先だ。そしてその先にいるのは俺達の総大将。」

「総大将・・・ってまさか!」

 シロヤの驚きに、ルーブが冷静に答えた。

「あなた達が倒すべき敵、ラーカよ。」

 その事実に、全員の体が一瞬で硬直する。

「とうとう来ましたね・・・。」

「ラーカはこの先か・・・。」

 リーグンとレジオンが呟く。

「感じます・・・この先に強い力を・・・!」

「えぇ、確かに感じるわ。」

「私も感じる・・・どす黒い闇の力を・・・!」

 クピンが怯えたように呟き、フカミとキリミドは冷静に呟いた。

「ここまで・・・ようやくたどり着けましたね・・・。」

「お兄様・・・!」

 バルーシが剣の握る手に力を込め、ローイエは不安そうな表情でシロヤに近づく。

「シロヤ君・・・。」

 プルーパも不安そうな表情で近づく。

 全員がこの先にいるラーカの闇の力を体で感じて、不安に思い、それと同時に最後の戦いに恐怖していた。

「・・・。」

 シロヤも例外じゃなかった。手がカタカタと震え、額から汗が流れている。

「・・・シロヤ。」

「!」

 恐怖に震えていたシロヤの耳に、声が聞こえた。周りを見回すが、声の主はここにはいない。

「・・・シロヤ。」

 またも聞こえてくる声。その声は、シロヤの恐怖していた心を優しく包んでくれる声だった。

「シアン・・・様?」

 確かに聞こえたシアンの声。そして、いるはずのないシアンの声がさらにシロヤに語りかけてきた。

「そなたを・・・信じておるぞ。必ず生きて帰ってくると・・・また皆で笑い合う平和な未来が約束されることを・・・。」

 そう言って、シアンの声は聞こえなくなった。

「・・・シアン様・・・。」

 シロヤは胸に手を当てて、目を瞑って心の中でシアンに語りかけた。

「約束します・・・必ず帰ってくると・・・!」

 シロヤは目を開け、まっすぐとラーカに続く道を一点に見つめた。その表情には不安の色も恐怖の色も無く、澄みきった決意の色だけが映っていた。

「皆さん、行きましょう。」

 シロヤの強い言葉に、次第に全員の恐怖が消えていく。

「・・・えぇ、行きましょう!」

 最初にプルーパがシロヤの横に並んだ。

 それを皮切りに、全員が決意に満ちた表情でシロヤの横に並んでいた。

「・・・クロト。」

 シロヤは、隣に並んでいるクロトをそっと撫でた。

 クロトも決意したように大きく鳴いた。それは「早く行こう!」と言っているようだった。

「・・・わかったよ、クロト。」

 クロトの決意を受け取り、シロヤは深呼吸をして前に一歩踏み出した。

 それに続いて、全員がシロヤに続いてラーカへと向かっていった。

 強い決意を胸に、目の前の闇に打ち勝つために、全員が足取り大きくラーカへと向かっていく。

 そして、シロヤ達は広い空間にたどり着いた。

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