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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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大地

 シロヤ達がやって来たのは、城の奥の兵士の詰め所だった。

「では・・・開けますよ。」

 一拍置いたのち、バルーシはドアを開けた。途端に流れてくる異臭。

「うぅ!」

 思わず鼻をつまむシロヤ。詰め所の中は異臭しかしなかった。そんながらんどうな詰め所の奥に、シロヤは動く影が見えた。

「ウック!なんだなんだ〜!揃いも揃って〜ウック。」

 樽にもたれ掛かっている男がいた。ゆっくりと立ち上がって近づいてくるが、その足はおぼつかない。ふらふらと近づいてドア付近に再びもたれ掛かる。

「ん〜?なんだお前〜!?」

 男はシロヤの顔をのぞきこんだ。全身から異臭を放ち、口からはさらに強い臭いを放つ。

 これは・・・酒だ。

 バルーシは、持っていた物を男に渡すと、男は物を口に当ててひっくり返した。そこからまた臭う異臭。おそらくバルーシが持っていたのは酒だろう。

 しばらくして、バルーシは男に言った。

「その方はシアン様が招待した客人、シロヤ様です。」

「あぁん?客人!?ただの農民にしか見えんが!?」

 事実なだけに否定できないシロヤ。苦笑いしながら、プルーパは本題を持ち上げた。

「それで本題なんだけど、ちょっと協力してほしいことが」

「断る!」

 プルーパの言葉を途中で遮った。

「待ってくださいレジオンさん!今回の件はレジオンさんの力が!」

「知らねぇよそんなもん!大体俺は引退した身だ!そんなやつの力なんか借りずにてめぇで何とかしやがれ!」

 シッシッシっとバルーシ達を追い返し、再び詰め所の中に入る。

「まぁ・・・予想通りでしたね。」

 バルーシが苦笑いした。

「にしても・・・レジオンがいなきゃ話にならないわ。別の説得方法を考えましょう。」

 プルーパも同じく苦笑いしたのち、四人は詰め所を離れた。


「しかし・・・これじゃ手がありませんよ。」

 バルーシは頭を抱えた。それを見ながら、プルーパとリーグンが同じように考え込んだ。

「私・・・もう一回レジオンのところに行ってくるわ。バルーシ、あなたも行くわよ。」

「はい!」

 再びバルーシとプルーパが部屋を出ていった。

「あの・・・レジオンさんっていったい・・・?」

 シロヤはリーグンに尋ねた。

「レジオンさんは、砂の竜王時代に兵団長に配属になった方です。今は体のことを考えて兵団長を引退、現在は兵士達の剣術指南等を主とした活動をしています。」

 それを聞いた直後、部屋の扉が開いた。バルーシとプルーパが戻ってきたのかと思って振り向くと、そこにいたのは違う人だった。

「シロヤ君・・・だったかな?」

 立っていたのは、さっきまで泥酔していた男、レジオンだった。しかし、今部屋に入ってきたレジオンに酒気はない。シラフのレジオンだ。

「そう・・・ですけど。」

 思わず声に緊張の色が混じる。シラフのレジオンからは強い威圧感が発せられていて、歴戦を乗り越えてきた事がわかる。

「さっきはすまなかったな。それで改めて、君と話がしたい。一緒に来てくれないか?」

「は・・・はぁ・・・。」

 シロヤはレジオンのあとについていった。しばらく歩いてたどり着いた場所は、城の見回り台だった。


「国ってなぁ・・・難しいと思わねぇか?」

 見回り台の上で砂の国の大地を見ていたレジオンは、突然シロヤに話しかけた。

「この国の砂漠には、たくさんの人達の命が眠っているんだ。もちろんそれは、砂の竜王時代に散っていった人達だけじゃねぇ。国をよくしようと尽力した歴代国王、そしてそれを支えた国民達皆の命も含めてだ。」

 レジオンは遠くを見ながら、再び語りだした。

「俺はこうして・・・砂漠の風を感じながら砂漠を眺めるのが好きなんだ。」

 砂漠の風がフワッとシロヤの髪を撫でた。

「今お前達が相手にしてる奴ってのは・・・そんな大地を、国を壊そうとしている奴だ。」

 シロヤは砂漠を見た。たくさんの命が眠る大地。それを再び戦いの大地に変えようとしているのがレーグ。改めてシロヤは、戦っている相手が強大だということを再認識した。

「そんな奴ら相手と・・・お前は戦うことができるか?」

 レジオンはシロヤを見た。再度吹く砂漠の風。しかし、同じ風とは思えないほど、今吹いている風は重かった。

「誰も言わないから言うが、バルーシもプルーパもお前を過大評価しすぎだ。お前は戦士のように強いわけでもない。学者みたいに頭がいいわけではない。そしてお前はこの国の人間じゃないよそ者だ。」

 はっきりと言うレジオン。しかし、シロヤはそれに聞き入っていた。

「こんなよそ者なんかを巻き込むなんて酷な話だぜ。それでもお前は、国を支配しようとしている脅威に立ち向かうことができるか?」

 優しく吹く風がどんどんと強くなる。

「後戻りするなら今のうちだ。降りたきゃ降りろ。これは俺達バスナダ国の問題だ。」

 レジオンは見回り台を降りようとした。しかし、シロヤはレジオンの腕を握り、静かに呟いた。

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