謝罪
「ここは・・・?」
地下帝国を進むシロヤ。しかし、以前来た場所とは全く違う雰囲気にシロヤは困惑していた。
「以前来た所より長い・・・ということは、居住区じゃないってことか。」
前は道が広く短く大きな部屋が何個も並んでいたが、今シロヤがいる所は道が長く細く、部屋はほとんどない。
「この先に・・・何が・・・!」
シロヤはまだ見ぬ恐怖に、剣を強く握りしめてどんどんと奥に進んでいった。
「・・・・・・あ、光だ!」
どんどんと続く道の先に、淡い光が見える。
シロヤは勢いよくその光に向かって走った。
「・・・!」
光が目の前まで来ると、そこには火によって照らされた広い空間があった。
しかしその空間は、さっきまで歩いていた道とは全く違っていた。
「何でここだけ・・・手がつけれていないんだ?」
さっきまで歩いていた道は壁と床が平らであったが、シロヤがいる空間は言わば洞窟の中のような空間だった。
「この先に・・・何が待っているんだ・・・?」
広い空間の先にある道見ながら、シロヤは未知の恐怖を感じた。
「・・・!」
恐怖が全身を覆った瞬間、シロヤはすぐさま身を翻して後ろを向き、剣を握り構えた。
「・・・誰だ!」
後ろに気配を感じたシロヤが叫ぶと、ゆっくりとシロヤが歩いていた道から人が歩いてきた。
「また会ったな、白の勇者よ。」
「お前は・・・あの時の!」
即座に剣を抜いて構えるシロヤ。
そこに立っていたのは、地下帝国とフカミとキリミドの家で対峙した敵、銅髪の青年、ロブズンだった。
「単身敵陣に乗り込んでくるとはな・・・命知らずなのかただの馬鹿か」
「敵陣・・・!?」
その言葉に反応して、すぐさま身を固めるシロヤ。
対してロブズンは、余裕の表情で剣を抜いてシロヤに向けた。
「ラーカのお膝元で敵大将の首をとれるとはな。どちらにせよ、貴様の命はここまでだ。」
ロブズンは言葉と共に地面を蹴ってシロヤに斬りかかる。
対してシロヤは、ロブズンの動きに合わせてガードするのが精一杯で、反撃できずにいた。
「くっ!」
「ふん、つまらん。」
ロブズンをシロヤを鼻で笑い、剣を持っている手に力を込めて振るった。
キィィィン!
「うわぁ!」
力強い一撃に押し負け、シロヤの剣は弾かれて手から離れた。
すぐさま拾いに行こうとするが、その瞬間、目の前には剣を向けているロブズンの姿があった。
「・・・!」
「死ね・・・。」
剣を振り上げるロブズン。
「待て!」
「!」
突如、ロブズンの後ろから声が聞こえた。
「もうやめるんだ・・・ロブズン・・・!」
必死に絞り出したような悲しい声。
振り向くと、そこには男が立っていた。
そしてその男を見たロブズンは、力一杯に握っていた剣を落として、立っている男を見た。
「・・・バルーシ・・・銀、兄ちゃん・・・!」
ロブズンは震える声で目の前の男の名前を言った。
「ロブズン・・・。」
動揺している顔で固まっているロブズンに対して、バルーシの表情は悲しげだ。
「すまなかった・・・ロブズン・・・!」
「!」
謝りの言葉と共に歩み寄ってくるバルーシに、ロブズンは後ずさりをする。
「やめろ!銀兄ちゃんは関係ない・・・関係ないんだ・・・!」
震える声で後ずさりをするロブズンに、バルーシは悲しげな表情を変えないままゆっくりと歩み寄り、やがてロブズンとの距離はすぐそこまで迫っていた。
「本当にすまなかった・・・あの時・・・お前を守れなくて・・・!」
「やめろ!やめてくれ!」
頭を抱えて小さくなるロブズン。
しかし、それでもバルーシは謝るのをやめなかった。あの時、ゴルドーとの約束を守れずに大事な弟を失ってしまった過去に対して、バルーシはただひたすらに謝り続けた。
「あの時、ロブズンを守ってやらなかった・・・!大事な弟を無くしてしまった・・・!」
「違う!俺は自分の意思でラーカに!」
その言葉を、バルーシはロブズンを抱擁して止めた。
「!」
「すまない・・・!ロブズン・・・!」
バルーシのその瞳には涙が溢れ、頬を伝ってロブズンの頭に落ちていった。
それに気づき、バルーシの胸でロブズンは涙を流した。
「俺は・・・守られるだけじゃ嫌だったんだ・・・!だからラーカの元について・・・俺はとんでもない過ちを・・・!」
涙を流しながら言うロブズンの言葉を聞き、バルーシはさらに強くロブズンを抱いて答えた。
「いいんだ・・・!過ちは償えばいいんだ・・・!だから・・・帰ってくるんだ!」
バルーシの強い言葉に、ロブズンは流すまいと溜めていた大量の涙を流し、バルーシの強い抱く力に答えた。
「う・・・うぅ・・・うあああぁぁぁ!」
しばらく、広い空間にロブズンの声が響き続けた。