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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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謝罪

「ここは・・・?」

 地下帝国を進むシロヤ。しかし、以前来た場所とは全く違う雰囲気にシロヤは困惑していた。

「以前来た所より長い・・・ということは、居住区じゃないってことか。」

 前は道が広く短く大きな部屋が何個も並んでいたが、今シロヤがいる所は道が長く細く、部屋はほとんどない。

「この先に・・・何が・・・!」

 シロヤはまだ見ぬ恐怖に、剣を強く握りしめてどんどんと奥に進んでいった。

「・・・・・・あ、光だ!」

 どんどんと続く道の先に、淡い光が見える。

 シロヤは勢いよくその光に向かって走った。

「・・・!」

 光が目の前まで来ると、そこには火によって照らされた広い空間があった。

 しかしその空間は、さっきまで歩いていた道とは全く違っていた。

「何でここだけ・・・手がつけれていないんだ?」

 さっきまで歩いていた道は壁と床が平らであったが、シロヤがいる空間は言わば洞窟の中のような空間だった。

「この先に・・・何が待っているんだ・・・?」

 広い空間の先にある道見ながら、シロヤは未知の恐怖を感じた。

「・・・!」

 恐怖が全身を覆った瞬間、シロヤはすぐさま身を翻して後ろを向き、剣を握り構えた。

「・・・誰だ!」

 後ろに気配を感じたシロヤが叫ぶと、ゆっくりとシロヤが歩いていた道から人が歩いてきた。

「また会ったな、白の勇者よ。」

「お前は・・・あの時の!」

 即座に剣を抜いて構えるシロヤ。

 そこに立っていたのは、地下帝国とフカミとキリミドの家で対峙した敵、銅髪の青年、ロブズンだった。

「単身敵陣に乗り込んでくるとはな・・・命知らずなのかただの馬鹿か」

「敵陣・・・!?」

 その言葉に反応して、すぐさま身を固めるシロヤ。

 対してロブズンは、余裕の表情で剣を抜いてシロヤに向けた。

「ラーカのお膝元で敵大将の首をとれるとはな。どちらにせよ、貴様の命はここまでだ。」

 ロブズンは言葉と共に地面を蹴ってシロヤに斬りかかる。

 対してシロヤは、ロブズンの動きに合わせてガードするのが精一杯で、反撃できずにいた。

「くっ!」

「ふん、つまらん。」

 ロブズンをシロヤを鼻で笑い、剣を持っている手に力を込めて振るった。

 キィィィン!

「うわぁ!」

 力強い一撃に押し負け、シロヤの剣は弾かれて手から離れた。

 すぐさま拾いに行こうとするが、その瞬間、目の前には剣を向けているロブズンの姿があった。

「・・・!」

「死ね・・・。」

 剣を振り上げるロブズン。


「待て!」


「!」

 突如、ロブズンの後ろから声が聞こえた。

「もうやめるんだ・・・ロブズン・・・!」

 必死に絞り出したような悲しい声。

 振り向くと、そこには男が立っていた。

 そしてその男を見たロブズンは、力一杯に握っていた剣を落として、立っている男を見た。

「・・・バルーシ・・・銀、兄ちゃん・・・!」

 ロブズンは震える声で目の前の男の名前を言った。

「ロブズン・・・。」

 動揺している顔で固まっているロブズンに対して、バルーシの表情は悲しげだ。

「すまなかった・・・ロブズン・・・!」

「!」

 謝りの言葉と共に歩み寄ってくるバルーシに、ロブズンは後ずさりをする。

「やめろ!銀兄ちゃんは関係ない・・・関係ないんだ・・・!」

 震える声で後ずさりをするロブズンに、バルーシは悲しげな表情を変えないままゆっくりと歩み寄り、やがてロブズンとの距離はすぐそこまで迫っていた。

「本当にすまなかった・・・あの時・・・お前を守れなくて・・・!」

「やめろ!やめてくれ!」

 頭を抱えて小さくなるロブズン。

 しかし、それでもバルーシは謝るのをやめなかった。あの時、ゴルドーとの約束を守れずに大事な弟を失ってしまった過去に対して、バルーシはただひたすらに謝り続けた。

「あの時、ロブズンを守ってやらなかった・・・!大事な弟を無くしてしまった・・・!」

「違う!俺は自分の意思でラーカに!」

 その言葉を、バルーシはロブズンを抱擁して止めた。

「!」

「すまない・・・!ロブズン・・・!」

 バルーシのその瞳には涙が溢れ、頬を伝ってロブズンの頭に落ちていった。

 それに気づき、バルーシの胸でロブズンは涙を流した。

「俺は・・・守られるだけじゃ嫌だったんだ・・・!だからラーカの元について・・・俺はとんでもない過ちを・・・!」

 涙を流しながら言うロブズンの言葉を聞き、バルーシはさらに強くロブズンを抱いて答えた。

「いいんだ・・・!過ちは償えばいいんだ・・・!だから・・・帰ってくるんだ!」

 バルーシの強い言葉に、ロブズンは流すまいと溜めていた大量の涙を流し、バルーシの強い抱く力に答えた。

「う・・・うぅ・・・うあああぁぁぁ!」

 しばらく、広い空間にロブズンの声が響き続けた。

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