大罪
未開拓地帯の入り口で、二人の男が剣を交えていた。
「へ!やるじゃねぇか!死んでも腕がなまってねぇなんてな!」
「貴様も・・・やる・・・ではないか・・・!」
甲高い金属音が止むと、レジオンはすぐさま距離をとり、荒い息をしながら大剣を構え直した。
「ったく、さすがあの三姉妹を育て上げただけあるぜ。」
小さく笑うレジオン。
「娘達は・・・?」
「あ?元気でやってるぜ?」
それを聞いて、グンジョウは小さく微笑んだ。まるで、聞きたかったことを聞くことができて満足したかのように。
「ならばよい・・・。」
「なぁグンジョウ、俺達が戦う理由なんてあるか?」
微笑むグンジョウに対して、レジオンは笑っていた表情を引き締めてグンジョウを一点に見つめた。その表情に、いつもの飄々とした雰囲気は一切見られなかった。
「娘を思う気持ちがあるなら、俺達が戦う意味なんてないだろう?今すぐにでも成長した娘の姿でも見に行けばいいじゃねぇか。」
「・・・。」
レジオンの言葉を聞き、グンジョウは考え込むような表情で固まった。
「私はもう・・・人ではない・・・。」
「あぁ?」
グンジョウの呟きに聞き返すレジオン。その視線の先のグンジョウは、わずかだが涙を流していた。
「私は・・・この地を蝕む悪魔と・・・契約してしまったのだ・・・!」
次第に強くなるグンジョウの言葉。それに比例して、流す涙の勢いも増していた。
「犯してはならぬ大罪を・・・私は犯してしまった・・・!」
「・・・。」
「死をもっても償えぬ・・・私は娘達を・・・そして・・・私を信じて死んだ・・・我妻を裏切ったのだ・・・!」
グンジョウは拳を握り、力一杯に地面を殴った。砂が小さい舞い上がり、すぐさま風に流されてグンジョウを包み込む。
「今さら・・・私は現世で娘に会うことも・・・冥界で妻に会うことも・・・許されない・・・!私は・・・!」
「うるせぇよ。」
グンジョウの言葉を遮り、レジオンが言葉を発した。
「大罪とかどうでもいいんだよ。大事なのはてめぇが会いたいか会いたくないか、だ。」
レジオンの言葉に、グンジョウは小さく身を震わせながら口を開いた。
「会えるわけがないだろう・・・大罪を犯した私が・・・正義のために戦う娘に・・・!正義のために死んだ妻に・・・!」
「あぁぁぁ!」
突然の叫び。レジオンは再びグンジョウの言葉を遮り、怒りの表情でグンジョウを見た。
「何度も言ってるだろうが!大罪なんてのはどうでもいいんだよ!てめぇが会いたいか会いたくないかで判断しやがれ!」
「・・・。」
レジオンの言葉に黙りこむグンジョウ。それを見たレジオンは、ため息をつきながら首を振った。
「やれやれ・・・しゃあねぇな・・・!」
そう言って、レジオンは懐から小さな袋を取り出して、その封を解いて袋を逆さにした。その瞬間、袋からキラキラと輝く砂金がこぼれ落ちた。
「それは・・・!」
目の前の光景に驚くグンジョウ。キラキラと輝く砂金は、地面に着く前に風で舞い上がり、レジオンの体に溶け込んでいった。
「こいよグンジョウ!てめぇの性根を叩き直してやる!」
大剣を振り上げ、星の力を得たレジオンが構えた。