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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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父子

 森の中を走るシロヤ達。

「・・・!」

 しばらく走ってから、シロヤは異変に気づいた。

「レジオンさんが・・・いない?」

 勢いよく走っていた勢いを止めて、シロヤは後ろを振り向くが、もう森の入り口は見えなくなっていた。

「シロヤ様!」

「シロヤ君!早く行くわよ!」

 フカミの叫びにハッとなって、シロヤは再び前を向いて走り出した。

「信じてますよ・・・レジオンさん。」

 シロヤは心の中で呟いた。


・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


「ここが・・・フカミさん達の家・・・?」

 目の前に見える草花で作られた家に、リーグンは見とれるように立っていた。

「この中に・・・地下帝国への入り口が?」

「えぇ、こっちよ。」

 フカミに先導されて歩いていくと、そこには人工物の跡が転がっていた。

「この先をまっすぐ進めば地下帝国の最深部に着くわ。そこには必ず何かがあるはずよ。」

 フカミの言葉に、シロヤは表情を引き締めて先に向かっていった。

「さて・・・シロヤ君、ここから先は一人で行くことになるわよ。」

「えっ?」

 立ち止まるシロヤの前に、フカミ、キリミド、リーグンが揃って背を向けて立っていた。

「シロヤさん、私達のことは気にせずに進んでください。」

「でも・・・。」

 その言葉に、リーグンは振り向いて笑顔を見せた。

「シロヤ様、私達を信じてください。私達は誰一人欠けることなく平和を手に入れる、そう誓いましたので。」

 リーグンの言葉に、シロヤは強く拳を握ると、勢いよく振り替えって地下帝国に向かって走っていた。

「・・・行ったわね。」

 フカミがそう言ったと同時に、目の前の木々が暴れだして枝をフカミ達に向かってなぎ払った。

「危ない!」

 リーグンの声と共に、三人の周りを草花が取り囲んで木の枝を防いだ。

「ふぅ、容赦なしね、まさか汚染植物まで出してくるなんて。」

「・・・出てきてください!」

 強いリーグンの声は、暴れている木の先に向かっていった。そしてその声に答えるかのように、その先から声が返ってきた。

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 笑い声はゆっくり近づいてきて、やがてその声の主が木の奥から現れた。

「おやおや、誰かと思えば役立たずさんでございましたか、ヒヒヒヒヒ!」

「あらあら・・・!」

「あなたは・・・!」

 フカミとキリミドがその姿を見て驚きの表情を露にした。しかし、リーグンだけは表情を変えずに杖を構えたまま声の主を見続けていた。

「・・・薄々気づいてました、私達が森に入った時から、あなたの気配が私達の後ろをつけていたことを。」

「ヒヒヒヒヒ!貴様ごときに見抜かれるなど、少し体が鈍ってしまいましたかね。」

 そう言うと、声の主は持っていた杖を振った。その瞬間、木々がさらに暴れだして枝をリーグン達に向かって放った。

「ヒヒヒヒヒ!」

 笑い声と共に、一つの枝がリーグンの体に向かっていった。

「リーグンさん!」

 キリミドの声と共に、リーグンの体は枝に貫かれ、リーグンは貫かれたまま力を無くしてぐったりとなった。

「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 笑い声が強くなった。

 しかし、その笑い声は不意に止まった。それは、貫かれたリーグンの体が砂となって崩れ去ったのを見てからだった。

「な、サンドドールだと・・・!」

 初めて声の主が余裕のない声をあげると、その後ろから声が聞こえた。

「お父様・・・出来れば私はお父様とは戦いたくありません・・・降伏してください。」

 寂しげな声を聞いて、お父様と呼ばれた声の主が振り向くと、先に立っていたのはリーグンだった。

「ヒヒヒヒヒ!何を今さら、私はラーカ様に素晴らしい力と復讐のチャンスを頂いた!全てはあの忌々しいシロヤに復讐するため!そのためならば例え息子であろうと容赦はしませんよ!ヒヒヒヒヒ!」

 その言葉を聞いて、リーグンはさらに悲しげな表情を強め、フカミとキリミドに向かって言葉を発した。

「フカミさん、キリミドさん、父のけじめは私につけさせてください。」

 その言葉に、フカミとキリミドは優しく微笑んだ。

「えぇ、私も信じるわ、あなたのことをね。」

「汚染植物の相手は私達に任せてください!」

 フカミとキリミドの言葉にリーグンは軽く微笑み、再び表情を引き締めた。

「ヒヒヒヒヒ!賢者の私に戦いを挑むのですか!?命知らずには実力の違いを父がレクチャーしてあげましょう!ヒヒヒヒヒ!」

 そして、二人同時に杖を振り上げた。

「もう迷いません!シロヤ様のためにも・・・私はあなたを!父、レーグをこの手で倒します!」

 リーグンとレーグは、同時に杖を構えて詠唱を始めた。

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