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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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計画

「どういうことだリーグン!?」

「言葉通りの意味です。シアン様と結婚はできません。」

 その場にいる全員が目を丸くした。

「元々は父上が勝手に決めた政略結婚、シアン様にも相手を選ぶ権利があるでしょう。」

「ならぬ!リーグンよ、今の発言を取り消すのだ!」

「父上・・・何故そこまでシアン様との結婚を強要するのですか?」

 レーグは口を閉ざした。一瞬ボロを出しかけたが、そのまた一瞬で思い止まったのだ。

「まぁリーグンよ、先のことなど気にするな。そなたもゆっくり考えるがよい。今夜は城に泊まるがよい。」

 シアンはクピンを呼び出し、リーグンを客室から違う部屋に向かわせた。それに合わせて、その場にいた全員が部屋を出た。


「あれが・・・本当にレーグの息子なんですか?」

「ふふ、びっくりした?」

 イメージとはかけ離れた青年、そしてシアンのことを考えての結婚拒否。できた人だな、とシロヤは思った。

「レーグの狙いは我が息子を王族にして星を手に入れることよ。」

「なるほど・・・それでレーグは結婚を強要したんですね。」

 しかしリーグンはそれを拒否した。これはレーグにとって計算外なのだろう。

「でも・・・この計算外が変な方向に行かなきゃいいけど・・・。」

 プルーパはそっと呟いた。


「シロヤ様、リーグン様がお呼びです。」

 突然、クピンが部屋に入ってきた。

「え?リーグン様が?」 シロヤがドアの方を振り向いた。そこにいたのはクピン、そして

「いえ、お話があるのはこちらです。私が出向くのが礼儀です。」

 クピンの横からリーグンが現れた。シロヤとプルーパの真向かいにある椅子に座るリーグン。座り方も非常に綺麗だ。

「リーグン様、それでお話って言うのは・・・。」

「あなた達もご存知でしょうが、父上のことです。」

 さっきまで見せていた顔から一転、表情が引き締まる。それに合わせて、シロヤとプルーパも表情が引き締まった。

「父上の目的は星を使ってのこの国の支配です。そして、旧バスナダ国王が作り上げた汚点、最強の軍事国家の形成です。」

「それに関わっているのが、バスナダ七人衆・・・?」

「はい、彼らの間では旧バスナダ国の世界的通称を取って付けた名、"砂の竜王計画"と呼ばれています。」

 砂の竜王、シロヤはこの名前を聞いたことがあった。前に旅した国で聞いた噂、バスナダに眠るとされている砂に住む巨大な竜王。一度逆鱗に触れれば、国全てが紅く地に染まるとされていると。

「砂の竜王って・・・旧バスナダ国家の事だったんだ。」

「国民が思い出したくない、過去に実際にあった最大の汚点です。」

 シロヤは背中に冷たいものを感じた。

「私の父上は、その時代はまだ一学者としてですが、政治に携わっていました。

そして、旧バスナダ国王が暗殺された事件から大臣になったのです。」

「レーグは懐かしき時代を取り戻そうとしてるのね。迷惑な話だわ。」

 プルーパは首を振った。


「シロヤ様!プルーパ様!」

 慌ただしく入ってきたのはバルーシだった。顔を汗で濡らして、肩で激しく息をしていた。

「レーグとバスナダ七人衆が会合を始めました!場所は作戦会議室、今、レーグ側の兵士が前を警備していて情報がとれない状態です!」

 シロヤ、プルーパ、リーグンが一斉に席を立った。

「会合・・・?いったい何の会合を?」

「おそらく、リーグン様が結婚を断ったから何かまた作戦を考えているのでしょうね。懲りない奴等ね。」

「しかし・・・、父上は予備策は常に持っておいているはずです!」

「どうにかして少しでも情報が取れればいいのだが・・・。」

 四人は黙りこんだ。確かに情報は欲しいところだが、得る術が見当たらない。せめて警備がいなければ、先に作戦会議室に入っていれば・・・、せめてという言葉がシロヤの頭の中を埋めた。

「せめて・・・少しでも近づけられれば・・・。」

 シロヤがそう呟いた瞬間、バルーシとプルーパが手を叩いた。

「あるわ・・・レーグ達に気づかれないで会合を盗み聞きできる方法。」

「しかしそれには・・・"あの方"の力が必要ですね。」

「そうね・・・まぁ私が説得してみるわ。」

 二人はとある人物を思い浮かべて、深くため息をついた。

「あの・・・"あの方"というのは・・・。」

「ん?めんどくさい男よ。これから何かとお世話になるだろうから、シロヤ君にも紹介しとこうかしら。」

 プルーパはシロヤの顔を見て、にっこり笑った。

「シロヤ君、何か言われても軽く受け流すのよ。一回付き合うと非常に・・・めんどくさいから。」

 まるで何かを言おうとしているかのような笑顔に、シロヤは変な違和感を感じた。

「じゃあプルーパ様、倉からあれを出しておきましょうか?」

「えぇ、お願いするわ。少しでも勝率を上げておかないとね。」


 しばらくしてバルーシが持ってきたのは、シロヤにとっては異臭と感じる刺激臭を放つ物体だった。

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