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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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本番

「そ、それは・・・!」

 バルーシは、ドレッドが出した何かを見て固まった。ドレッドが手に持っている何かは、バルーシの背を越すほどの長さの刀だった。

「こいつを使うのは久々だな・・・ま、それだけ実力があるってことだ、喜んで良いぜ。」

 言葉と同時に、ドレッドは持っていた長い刀を横に伸ばした。

「だが・・・喜ぶ前にこいつで斬り殺されちまうがな。」

 ドレッドの長い刀は、横に伸びたまま制止していた。200mはあろう刀を空中で制止させているのは、並の人間ができることではない。バルーシはそれを感じとり、それと同時にドレッドという相手がどれだけ強いかを再確認した。

「その刀は・・・。」

「こいつか?"長尺刀"って言うんだ、俺の切り札ってところかな。」

 ドレッドが長尺刀を構えた瞬間、強風のような闘気がバルーシを襲った。

 その闘気を受けたバルーシは、今まで以上に強く剣を握った。

 それは、まさしく本能的にとった行動だった。闘気を受けた瞬間、全身の毛が逆立たんばかりの震えがバルーシを襲った。それは、命の危険を示す本能的な"危険信号"でもあった。

「さぁ!こっからが本番だぜ?」

 ドレッドは言葉と同時に地面を蹴った。

 バルーシはドレッドの動きを目で追い、瞬時に剣を構えた。

「・・・どんな武器も長ければ長いだけ振りが遅くなる。軌道さえ読むことができればかわせるはず!」

 ドレッドに向かっていくバルーシ。そして、ドレッドはバルーシに向かって剣を振った。

「!!!」

 その瞬間、ドレッドの腕が消えた。

「ば!馬鹿な!」

 すぐさまバルーシは体制を変えて身を低くする。そのわずか上を、ドレッドの刀が高速で通りすぎていった。

「くっ!」

 身を低くした状態のまま後ろに跳び、距離をとって再び剣を構える。

「おほっ!俺の初太刀をかわしたのもお前が初めてだ!」

 陽気に言うドレッドに対して、バルーシは今のドレッドの攻撃を見てさらに焦りの表情を見せた。

「馬鹿な・・・腕が消えたのは剣の重量を極限まで軽くしたからではないのか。」

「それは間違いじゃねぇぜ?だがな、それはただ単に腕の負担を軽くしてるだけだ。普通の重量だろうと俺の剣速は変わりはしないさ。」

 ドレッドの言葉に、バルーシはさらに表情を固くした。身体中の危険信号が本格的に強まり始める。

「さぁ、やりあおうぜ!」

 再びバルーシに向かっていくドレッド。

 バルーシは、今度は剣を"避ける"のではなく"受け止める"ために構えた。

「無駄だ!」

 ドレッドの言葉と共に、バルーシの剣に強い力が襲った。

「ぐあぁ!」

 今までに感じたこともないほどに強い力。その力が剣を握っている腕に襲いかかる。


キィィィン!


「しまった!」

 強い衝撃によって、バルーシの剣が弧を描いて横に飛んだ。

「くっ!」

 すぐさま剣の所に向かおうと思った瞬間、バルーシの目の前に刀の先が突きつけられた。

「おっと・・・行かせやしないぜ?」

 ドレッドの剣によって動きを封じられたバルーシは、拳を握ったまま止まっていた。

「さぁ、覚悟を決めな。もうすぐ貴様の喉元をこいつで貫いてやるよ。」

 その言葉を聞いたか聞いていないのか、バルーシは力強く拳を握ってドレッドを睨んだ。

「・・・考えろ。こんな時、シロヤ様ならどうする・・・レジオンさんならどうする・・・プルーパ様ならどうする・・・!」

 目を瞑ってしばらく考えて、バルーシは拳の力を弱めた。

「さぁ!トドメだ!」

 瞬間、バルーシの喉元を刀の先が貫いた・・・かのように見えた。

「なっ!」

 寸ででバルーシは刀を交わし、全速力でドレッドに向かっていった。

「はぁぁ!」

 拳を強く握ってドレッドに殴りかかろうとした瞬間、横目にドレッドの腕が消えたのが映った。

「!!!」

「甘いぜ!」

 瞬間、バルーシの体を刀が捕らえて、胴体を切り裂いた。

「ぐわぁぁぁ!!!」

 刀はバルーシの胴体を半分以上切り裂いて進んでいたが、完全にバルーシの体を切断はできなかった。

 それに気づいて、ドレッドは刀を引き戻して再び構えた。

 しかし、倒れるバルーシの体に、もう反撃はおろか立つ力すら残っていなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

 荒くなる息、冷たくなる体、朦朧とする意識。それは、バルーシの体に死を意味するように襲いかかった。

 そしてバルーシは、消え行く意識の中で呟いた。

「・・・シロヤ様・・・シアン様・・・私は・・・・・・ここまでのようです・・・・・・・・・生きて帰るという約束を・・・・・・破ってしまい・・・申し訳・・・ありません・・・・・・・・・。」

 薄くなっていく意識、霞む視界の中、バルーシの目に映ったのは、小さな袋だった。

「兄さんの・・・お守り・・・・・・?」

 そこで、バルーシの意識は完全に消えた。最後に映ったのは、小さな袋から漏れ出す金色の光だった。


「ちっ、逝ったか。」

 刀を振り上げ、ドレッドはバルーシを見たまま呟いた。

「・・・何だぁ?」

 ドレッドは驚いたように声をあげた。バルーシの体を、急に金色の光が包み始めたのだ。

「何か・・・やべぇ!」

 急に全身の毛が逆立たんばかりに緊張するドレッド。それはまるで、バルーシの命の"危険信号"のようだった。

「くそ!もういっちょトドメだ!」

 ドレッドが振り上げた刀を振り下ろした瞬間、刀が空中で止まった。

「くっ・・・まさか!」

 金色の光が刀を止めていた。その正体は、死んだはずのバルーシの手だった。

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