表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
128/156

作戦

 剣を構えて一筋の緊張の汗を流すバルーシ。

「さぁ!まだまだ行くぜ!」

 ドレッドはすぐさま両手の剣を構え、まっすぐにバルーシに向かっていった。

「トリャアアア!」

「っ!」

 雄叫びを上げながら襲いかかってくるドレッドの両手の剣を、バルーシは険しい表情で捌いていく。

「くっ・・・やはり二刀流の攻撃は一刀では捌ききれないか・・・!」

 ふと現れたバルーシの弱音。その弱音が、ほんの一瞬、バルーシの剣の力を弱くした。

「オラァ!」


キィン!


「しまった!」

 ドレッドの一撃がバルーシの剣を捉えると、その勢いに流されてバルーシの剣は手を離れて宙を待った。

「チャンス!」

 ここぞとばかりに、ドレッドはバルーシに向かって剣を突き刺そうと剣を向けた。

「・・・はぁ!」

「なっ!」

 ドレッドの体がバルーシを捉えた瞬間、バルーシはドレッドの剣を横に避け、そのまま前に体を倒した。一瞬何をしたのかわからなかったドレッド。対してバルーシは、倒れた状態のまま突き出されたドレッドの右手を背負った。

「うおおお!」

 バルーシはドレッドを思いっきり一本背負いで投げた。

「ぐえぇ!」

 投げられたドレッドは、建物に背中をぶつけて変な声をあげた。

 その隙に、バルーシはすぐさま飛ばされた剣を拾って再び構えた。

「いてて・・・投げられるとは思わなかったぜ・・・。」

 ドレッドは小さく呟いて立ち上がると、すぐさま剣を構えてバルーシに向かっていった。

「よっしゃあ!今度はいつもと違うぜ!」

 そう言うと、ドレッドはすぐさま左の剣と右の剣を擦り合わせ、右の剣に炎を灯した。

「炎を纏った剣で攻撃か、単調すぎる!」

 バルーシはすぐさま剣を受け流す体制を取る。

「無駄だぁ!」

 ドレッドは右の剣を振りかぶった。バルーシもそれに合わせて剣を持ってくる。

「甘い!」

「!」


キィン!


 ドレッドの声と共に、バルーシはすぐさま受け流す対象をを右の剣から左の剣に変えた。

 ドレッドは右の剣を振りかぶったが、バルーシに向かってきたのは左の剣だった。

 バルーシはすぐさま左の剣を受け流した。しかしその直後、バルーシに向かって右の剣が振り下ろされた。

「もらったぜぇ!」

「ちっ!」

 バルーシの体めがけて振り下ろされた炎を纏った剣。バルーシは本能的に左腕を前に出した。そして、ドレッドの剣がバルーシの左腕を切りつけた。

「ぐわぁぁぁ!」

 炎の剣に左腕を切られ、バルーシは今まで以上の苦痛の表情でよろけた。

「そぉらもう一発!」

 よろけるバルーシに近づいて、ドレッドはバルーシの腹部を思いっきり蹴った。

「ぐぅ!」

 蹴られた衝撃で後ろに下がるバルーシ。その表情は苦痛に歪んでいた。

「・・・!」

 自分の体を動かしてみたバルーシ。しかし、左腕が中々言うことを聞いてくれない。

「焼き切られたダメージと熱で左腕が動かない・・・しばらくは使い物にならないだろうな・・・。」

 だらんと左腕の力を抜き、右手だけで剣を構える。

「絶体絶命・・・か。」

 ふと頭に浮かんだ言葉を口にする。ダメージが少ないドレッドに対して、バルーシは左腕を負傷している。不利なのは言うまでもない。

「奴の剣の仕組みはわかった・・・ならば目には目を、歯には歯を・・・!」

 バルーシは握っている剣に力を加えた。

「あぁ?まだやる気か?」

「当たり前だ。シロヤ様のため、負けるわけにはいかない。」

 その言葉に、ドレッドは楽しそうに笑いながら剣を構えて向かってきた。

「それでこそ俺のライバルだ!今度こそ炎の剣で叩き切ってやる!」

 ドレッドが右の剣を振り上げた瞬間、バルーシに向かってくるドレッドに向かって地面を蹴った。

「なっ!」

 予想外の動きに戸惑ったドレッド。

「へっ!そっちから切られに来てくれるとはな!」

 そう言ってドレッドは剣を振り下ろそうとしたが、バルーシがドレッドに到達する方が早かった。

「ぐえ!」

 バルーシはそのままドレッドに体当たりをした。

 よろけるドレッド。そしてバルーシは剣をすぐさま右の剣に向かって振った。

「っと!甘いぜ!」

 ドレッドが左の剣で受けようと左腕を持ち上げた。


キィン!


「!?」

 甲高い音。その音は、バルーシの剣が狙い通り、右の剣を捉えた音だった。

「なっ!何で!?」

 意味がわからずといった様子で立ち尽くすドレッド。それを横目に、バルーシは再び剣を振りかぶって、右の剣に向かって思いっきり振った。


キィィィン!


 再び甲高い音。それと共に、炎を灯していた右の剣の刀身が重力に逆らわずに地面に落ちた。

「お・・・俺の剣が・・・!」


キィィィン!


「!?」

 またもや音が響くと、今度はドレッドの左の剣の刀身が、右の剣に気を取られていたドレッドを横目に地面に落ちた。

「てめぇ・・・何しやがった?」

 ドレッドが聞くと、バルーシは右手をグイッとドレッドに見せつけた。「何も・・・変わりねぇじゃねえか。」

 キョトンとするドレッドに、バルーシが口を開いた。

「貴様の剣は軽いがゆえ、先手をとらねばならない。相手の剣を受けた瞬間に折れる可能性があるからな。だからこそ貴様は"消える"剣で相手に攻撃の隙を与えないようにした。」

 バルーシはさらに続けた。

「通常の兵士が使う剣よりも軽量化されてるからこそ、私の剣の重さを恐れたというわけだ。しかし、私はその発想を変えさせてもらった。」

 そう言って、バルーシは持っている部分をさらに近づけた。

「持つ部分と剣先が離れていればいるほど、遠心力が加わり威力は高くなる、その反面、剣のスピードが遅れる。剣のスピードと遠心力は反比例するのだ。」

「そ!それとこれとどう関係が!」

「だから私は遠心力を限界まで下げ、スピードを限界まであげることに専念した。同じスピードならば、元の重さの差で私の剣が勝つ、そう踏んだのだよ。」

 そこまで説明したバルーシを見て、ドレッドは笑い声をあげて立ち上がった。

「ハッハッハッ!さすがは俺のライバルだ!よく俺の最強二刀流の秘密を破りやがったぜ!」

「観念しろ、武器を失ったお前に勝ち目はない。」

 ドレッドに向かって剣先を向けるが、ドレッドは降参するそぶりを見せず、それどころか小さく笑っていた。

「武器を失った?すまねぇな、まだ・・・隠し持ってるんだよね!」

「!!!」

 ドレッドの背中から、ゆっくりと長い何かが現れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ