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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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戦術

「おいどうした?お前はそんなもんだったか?」

 人気のない街中に響く声。両手に剣を持った声の主の先には、剣を持って銀色の防具に身を包んだ青年が立っていた。

「なんだ?あの時から弱くなっちまったのか?つまらねぇじゃねぇかよ!」

 声の主―――ドレッドはそう言うと、右手の剣を左手の剣にくっつけた。

 その瞬間、ドレッドの右腕が消えた。

「!!!」

 消えた右腕が現れた時、右手に握られている剣には激しく燃える炎が纏われていた。

「オラァ!」

 ドレッドは炎のついた右手の剣を思いっきり振った。その瞬間、剣に纏われていた炎が刀身を離れて青年―――バルーシに向かって飛んでいった。

「っ!」

 高速で飛んでくる炎を寸でで交わす。しかし、交わす体制から攻めの体制に持っていった瞬間、目の前からドレッドの右手の剣が迫ってきた。

「くっ!」


キィィィン!


 金属音が街中に響く。バルーシは目の前まで迫っていた剣を柄の部分で受け止めていた。

 すぐさま体を回転させて切りかかろうと体制を変える。

「甘いぜ!」

「何!?」

 突如、ドレッドの左腕が消えた。切りかかろうとしていたバルーシに向かって、今度はドレッドの左手の剣を振るってきたのだ。避けようとするも、迎撃体制に入っていたバルーシは攻撃についていけず、避けることができなかった。

「ぐっ!」

 ドレッドの斬撃をまともに受け、バルーシは後ろによろめきながら下がった。その切られた腕からは、血が流れ始めていた。

「へっ!まともについていけてねぇじゃねぇか!」

 ドレッドの"消える"剣に翻弄されるバルーシ。対してドレッドは、劣勢のバルーシに向かって二つの剣を鳴らして嘲笑っていた。

「何故だ・・・奴の剣撃はさながら神速・・・目で捉えられない。」

 目で捉えられるなら防御のしようも回避のしようもある。しかし、ドレッドの剣は目で捉えることができない。故に防御も回避も出来ない。

「くっ・・・このまま長期戦に持ち込まれてはこちらが不利になる・・・何とかして奴の消える剣を見極めねば・・・。」

 そう言って、バルーシは再び剣を構えて立ち上がった。

「へ!まだやるってのかい!」

 笑うドレッドとは対称的に、バルーシは額に汗を流しながら向かっていった。

「何度やったって同じだってのによぉ!・・・ってのわぁ!」

 油断しきっていたドレッドに、バルーシは自分が持てる最速で近づいて剣を振った。

「ちっ!」

 ドレッドはバルーシの剣を、左手の剣で受け流そうと構えた。


キィン


「!?」

 響いた金属音を聞いたとき、バルーシの顔が一瞬にして疑問に変わった。

「おらよ!」

「っ!」

 間髪入れずにバルーシの体を切り裂く右手の剣。バルーシはすぐさま後ろに飛び退いた。

「・・・今の金属音、今までに聞いた金属音とかけ離れてる・・・何故だ?」

 構えながら思案するバルーシ。

「そしてあの手応え・・・まるで細い鉄棒を切りつけたような感触だった・・・普通の剣ではああはなるまい。」

 しばらく思案するバルーシ。そして、あるキーワードがバルーシを閃かせた。

「"普通の剣ではない"・・・奴の剣は何かしら異質な剣なのではないか・・・?」

 そう思って、バルーシはそれを確かめようと再びドレッドに向かっていった。

「おらおらどうしたぁ!俺はまだまだ疲れてないぜ!」

 そう言って、ドレッドは両手の剣を同時に高く上げると、向かってきたバルーシに向かって消える両腕で降り下ろした。


キィィィン!


「ぐわぁ!」

 強い衝撃を受けてよろけるバルーシ。

 その時、バルーシはあることに気がついた。

「あれだけ剣を振っておいて疲れていないだと・・・まさか奴の剣・・・腕への負担を軽くして・・・。」

 ここまで言って、バルーシはハッとなった。

「そうか・・・!奴は剣を軽量化しているのだな!そうすれば全ての問題が解決する。」

 切りかかった時の異質な音は、鉄の量が少ないために普段とは違う音になっていたのだ。

 そして問題の"消える"両腕。

「あれはおそらく・・・剣を振る速度があまりに早いために消えて見えるだけ・・・軽量化した剣は普通に振っては威力が落ちる、そのために速さで力を補ったというわけか・・・。」

 ドレッドの戦術に答えを出したバルーシは、そこで小さく口角を上げた。

「似た者同士だと思っていたが・・・戦術は全くの真逆と言うわけか。」

 ドレッドの速さで力を補う戦術に対して、バルーシは力で速さを補うパワータイプ。二人は決定的に違っていたのだ。

 戦術が全く違う相手を前にして、バルーシは再び表情を固めた。

「戦術は見破った・・・後はそれを打ち破るのみだ。」

 バルーシの額から、また一筋の汗が流れ落ちた。

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