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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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剣袖

「そ・・・それは・・・!?」

 プルーパの着ていた服が地面に落ちるのを横目に、ルーブはプルーパを奇異な目で見た。

 プルーパが今着ているそれはあまりにも異質だった。絹のように鮮やかに流れる布生地に同素材の鮮やかな帯。足元まで隠れる長さのそれは、袖が膝まで伸びる程に長かった。

「プルーパ様・・・それは・・・?」

 クピンが口を開くと、プルーパは小さく微笑んだ。

「これは剣舞踊の使い手の奥義、"剣袖"よ。」

「剣袖・・・?」

 プルーパがクルリと一回りすると、袖がまるで意思を持ったように鮮やかに舞い、鮮やかに空を切った。

「これは私の霊力を吸って剣となる着物よ。私の霊力が尽きない限り、この袖は全てを切り裂く刃となる。」

 プルーパはそこで、改めてルーブの方を向き直った。

「もっとも・・・私の霊力はさほど高くないし、そう長くは持たないでしょうね。でも・・・それまでに決着を着けるわ。」

 その言葉に、ルーブは怒りの表情で斧を構えた。

「いい度胸ね!果たして時間内に私を倒すことができるかしらね!」

 言葉と同時に地面を蹴るルーブ。対してプルーパは冷静な表情でその場から動かないでいた。

「倒すわ・・・バスナダのために、シロヤ君のために!」

 プルーパも言葉と同時に地面を蹴る。しかし、プルーパはただ前に出るのではなく、ルーブの足元をめがけて体制を低くして走った。

 それについていこうと足を止めるルーブ。それを見た瞬間、プルーパは地面を強く蹴って高く飛び上がった。

「ちぃ!」

 すぐさま斧を構えるルーブ。対してプルーパは、飛び上がった状態から体を大きく捻ってムーンサルトをした。そして空に足を向けた状態のまま体を回転させた。

 その瞬間、剣の袖が同じように回転してルーブに襲いかかった。

「くぅ!」

 両腕の袖から繰り出される刃を斧で受けるが、回転により威力を増す刃に次第に押されていく。

 ルーブの腕が次第に力を失っていった時、プルーパは体を再び捻って地面に着地した。

「まだよ!」

 着地と同時に、プルーパは再びルーブに向かっていった。

 ルーブも負けじと斧を振るう。二人の刃の力は互角であり、どちらも力で競り負けることはなかった。

 しかし、いつの間にかルーブはどんどんと後ろに下がっていき、プルーパがルーブを圧倒していた。

「くっ!」

 ルーブの表情が次第に曇っていく。

 ルーブの武器である戦斧は、武器の中では"重量武器"に属している。重量武器は、手数では他の武器を大きく下回るため、一撃の重さに懸けるのが正しい戦い方なのだ。

 対してプルーパの剣袖は、プルーパの舞踊の速さがそのまま攻撃の速さに繋がる。プルーパが舞踊を緩めない限り、剣袖の攻撃はスピードを緩めることはないのだ。

 さらにスピードを上げていくプルーパの動きと剣袖の刃に、次第にルーブは息を切らし始めていた。

「くっ・・・!」

 苦悶の表情で息を切らすルーブ。




キィィィィィン!!!




「っ!」

 ルーブの斧が、派手な音を立てて大きく弾かれた。

 すかさずプルーパは、武器を失ったルーブに向かっていった。




ガクッ・・・。




「!!!」

 瞬間、プルーパの体が力を無くして倒れた。

「そ・・・そんな・・・!」

 プルーパは瞬時に悟った。自分の霊力が底を尽き、剣袖を保つことができなくなってしまったことを。

「ふ・・・ふふ・・・ははははは!」

 勝ち誇ったように倒れているプルーパの前に立つルーブ。その手には、吹き飛ばされたはずの斧が握られていた。

「残念ね!もう少しだったのに霊力が切れちゃうなんてね!」

 ルーブを足を上げて、そのままプルーパの頭を踏みつけた。

「あぅ!」

「まだよ・・・苦しみをもっと味あわせてから・・・それから殺すわ・・・!」

 さらに頭を踏みつけるルーブ。プルーパの頭は次第に紅く染まっていった。

「プルーパ様!」

「邪魔をするな!」

 クピンが悲痛の表情を上げて走り寄るが、すぐさまルーブに弾き飛ばされてしまった。

「・・・そうね、まだあなたがいたわね。」

 何かを思い付いたように舌を出して、ルーブはゆっくりと動けないクピンに近寄った。

「あなたを先に殺させてもらおうかしらね・・・!」

「あ・・・あぁ・・・!」

「そこで見ているといいわ!大事な仲間が殺される瞬間をね!」

 言葉と同時に、ルーブは斧をクピンに振り下ろした。


・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。

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