力戦
「くぅ!たかがレアメタルごときで意気がってるんじゃないわよ!」
斧を構え直したルーブが、槍を肩に担ぎ上げたローイエに向かって叫んだ。
「ローイエ!」
「お姉様、私だってレジオンと一緒に修行したんだよ!」
小さく笑いかけるローイエ。それでもプルーパは表情を崩さなかった。
「よそ見とはいい度胸ね!そのいけない首は私が刈り取ってやるわ!」
すぐさまルーブがローイエに向かって走ってきた。対してローイエは、ルーブの方を向き直して槍を構えた。
「死ねぇぇぇ!」
ローイエの首をめがけて振られた斧。その斧がローイエの首を捕らえた時、ローイエは握っていた槍を横に振った。
「エイ!」
「くぅ!」
再び倍加された衝撃によってぶっ飛ぶルーブ、対して反発力で後ろに下がるローイエ。
「えぇい!」
反発力の勢いを殺さずに一回転すると、ローイエはそのまま体制を崩しているルーブに向かっていった。
ルーブが体制を立て直して斧を構えるより、ローイエの動きの方が速かった。
「くぅ!」
すかさず繰り出されたローイエの攻撃を辛うじて受けるルーブだったが、すぐさま倍加された衝撃で後ろに吹っ飛ばされた。
「まだまだだよぉ!」
ルーブの動きに合わせてさらに槍を振るうローイエ。
「えぇい!えぇい!えぇぇぇい!」
「ぐぅ!」
ルーブは何度もローイエの攻撃を受けていくが、次第にその動きは鈍っていた。
「くぅ!このガキ・・・次第に槍の威力が増している・・・!」
最初の一撃よりも、ローイエの攻撃は一発打つごとに威力を増していっていた。
「あれは・・・反発力をプラスしているのね。」
プルーパが気づいた。
ローイエに最初の攻撃より反発力を得る。その勢いを殺さないままもう一撃を繰り出せば、今度は(勢い+反発力)×倍加分のダメージを与えることができる。それを何回も繰り返すと、反発力が増していきその分の勢いも増していく。これが、ローイエのだんだんと強くなる攻撃のカラクリだ。
さらに勢いを増していくローイエ。そして押されていくルーブ。
キィィィン!
「しまった!」
勢いに負けたルーブ。槍の一撃によって斧が空中を舞った。
「待ってたよ!」
斧が飛んだ方向に目をやると、ローイエは跳躍して落ちてくる斧に向かっていった。
「貴様!何をする気だ!」
ローイエを目で追うルーブ。その目線の先で、ローイエは空中を舞う斧に向けて槍を振るった。
キィィィン!
「なっ!」
甲高い音と共に、倍加された衝撃を受けて地面に落ちる斧。
対してローイエは、今までの勢いの反発力で空を舞っていた。
「まさか・・・目的は反発力を利用して空を飛ぶこと・・・!」
反発力による空を舞うローイエは、さながら空を飛んでいるようだった。そのままローイエは、勢いを殺さないまま回転して、ルーブに向かって槍を振るった。
「えぇい!」
今までの勢いを乗せた槍は、ルーブの体、そして顔を勢いよく切りつけた。
「あぁぁ!」
切りつけられたルーブの体は血で塗られていき、切りつけられた顔は血と共に深く傷が刻まれた。
その状態のまま膝から崩れるルーブ。それを横目に、ローイエは空を舞いながらゆっくりと着地した。
「・・・ふぅ。」
小さく息をして体制を直すローイエ。
「ローイエ!」
その光景を見て、プルーパは目を輝かせて叫んだ。
「あなた・・・ずいぶんと強くなったのね!」
プルーパの言葉に、ローイエは槍を持ったままVサインを向けた。
「えへへ!お兄様のためだもん!もっと強くなってお兄様の一番になるもんね!」
ザッ・・・!
「!」
「!」
ローイエとプルーパが向き直すと、そこにはルーブが立っていた。
「許さない・・・!もう許さない!!!」
ローイエに向かって激昂するルーブ。すぐさま槍を構えるローイエ。
「無駄だぁ!」
ルーブはすぐさま何かをローイエに向かって放った。
キィィィン!
「きゃあ!」
甲高い音と共に槍に当たったのは、ルーブの持っていた斧の刃の部分だった。
予想外の攻撃に後ろにのけぞるローイエに、ルーブは刃を失った斧の棒を持って勢いよく向かってきた。
「えぇい!もう一回!」
「遅い!!!」
ローイエが槍を振ろうとした瞬間、ルーブの棒がローイエの槍を弾いた。
「あぁ!」
力強い一撃に、ローイエは槍を持ったまま後ろに倒れた。そのまま倒れたローイエに向かって、ルーブは棒を持ったまま飛びかかった。
「手間取らせやがって!」
馬乗りになった状態で、ルーブは何度もローイエに棒をぶつけた。
「あぁ!かはっ!」
何度も何度も棒を打ち付けられ、ローイエは口から血を吐いた。
「ローイエ!」
プルーパはすぐさま短剣をルーブに投げつける。
「ちぃ!」
短剣を避けてローイエから離れるルーブ。それを見たプルーパは、すぐさまローイエに駆け寄った。
「ローイエ!大丈夫!?」
「お姉・・・様・・・。」
小さくローイエがそう言うと、プルーパはローイエの口元に人差し指を当てた。すると、ローイエはゆっくりと目を瞑って意識を手放した。
「ふん!今度はあなたが相手?」
嘲笑うかのように言ったルーブに、プルーパは拳を握りしめて立ち上がった。
「許さないわ・・・!私の妹を散々痛め付けてくれたわね・・・!」
「止めておきなさい!あんたの短剣じゃ私は倒せない!」
さらに嘲笑うルーブに、プルーパは小さく笑った。
「ふふ・・・確かに短剣じゃ役不足かもね・・・でも、"刃"だったらどうかしら?」
その言葉と同時に、プルーパの着ていた衣服が宙を舞った。その衣服が地面に落ちた時、プルーパは立派な着物に身を包んでいた。