表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
124/156

力戦

「くぅ!たかがレアメタルごときで意気がってるんじゃないわよ!」

 斧を構え直したルーブが、槍を肩に担ぎ上げたローイエに向かって叫んだ。

「ローイエ!」

「お姉様、私だってレジオンと一緒に修行したんだよ!」

 小さく笑いかけるローイエ。それでもプルーパは表情を崩さなかった。

「よそ見とはいい度胸ね!そのいけない首は私が刈り取ってやるわ!」

 すぐさまルーブがローイエに向かって走ってきた。対してローイエは、ルーブの方を向き直して槍を構えた。

「死ねぇぇぇ!」

 ローイエの首をめがけて振られた斧。その斧がローイエの首を捕らえた時、ローイエは握っていた槍を横に振った。

「エイ!」

「くぅ!」

 再び倍加された衝撃によってぶっ飛ぶルーブ、対して反発力で後ろに下がるローイエ。

「えぇい!」

 反発力の勢いを殺さずに一回転すると、ローイエはそのまま体制を崩しているルーブに向かっていった。

 ルーブが体制を立て直して斧を構えるより、ローイエの動きの方が速かった。

「くぅ!」

 すかさず繰り出されたローイエの攻撃を辛うじて受けるルーブだったが、すぐさま倍加された衝撃で後ろに吹っ飛ばされた。

「まだまだだよぉ!」

 ルーブの動きに合わせてさらに槍を振るうローイエ。

「えぇい!えぇい!えぇぇぇい!」

「ぐぅ!」

 ルーブは何度もローイエの攻撃を受けていくが、次第にその動きは鈍っていた。

「くぅ!このガキ・・・次第に槍の威力が増している・・・!」

 最初の一撃よりも、ローイエの攻撃は一発打つごとに威力を増していっていた。

「あれは・・・反発力をプラスしているのね。」

 プルーパが気づいた。

 ローイエに最初の攻撃より反発力を得る。その勢いを殺さないままもう一撃を繰り出せば、今度は(勢い+反発力)×倍加分のダメージを与えることができる。それを何回も繰り返すと、反発力が増していきその分の勢いも増していく。これが、ローイエのだんだんと強くなる攻撃のカラクリだ。

 さらに勢いを増していくローイエ。そして押されていくルーブ。


キィィィン!


「しまった!」

 勢いに負けたルーブ。槍の一撃によって斧が空中を舞った。

「待ってたよ!」

 斧が飛んだ方向に目をやると、ローイエは跳躍して落ちてくる斧に向かっていった。

「貴様!何をする気だ!」

 ローイエを目で追うルーブ。その目線の先で、ローイエは空中を舞う斧に向けて槍を振るった。


キィィィン!


「なっ!」

 甲高い音と共に、倍加された衝撃を受けて地面に落ちる斧。

 対してローイエは、今までの勢いの反発力で空を舞っていた。

「まさか・・・目的は反発力を利用して空を飛ぶこと・・・!」

 反発力による空を舞うローイエは、さながら空を飛んでいるようだった。そのままローイエは、勢いを殺さないまま回転して、ルーブに向かって槍を振るった。

「えぇい!」

 今までの勢いを乗せた槍は、ルーブの体、そして顔を勢いよく切りつけた。

「あぁぁ!」

 切りつけられたルーブの体は血で塗られていき、切りつけられた顔は血と共に深く傷が刻まれた。

 その状態のまま膝から崩れるルーブ。それを横目に、ローイエは空を舞いながらゆっくりと着地した。

「・・・ふぅ。」

 小さく息をして体制を直すローイエ。

「ローイエ!」

 その光景を見て、プルーパは目を輝かせて叫んだ。

「あなた・・・ずいぶんと強くなったのね!」

 プルーパの言葉に、ローイエは槍を持ったままVサインを向けた。

「えへへ!お兄様のためだもん!もっと強くなってお兄様の一番になるもんね!」




ザッ・・・!




「!」

「!」

 ローイエとプルーパが向き直すと、そこにはルーブが立っていた。

「許さない・・・!もう許さない!!!」

 ローイエに向かって激昂するルーブ。すぐさま槍を構えるローイエ。

「無駄だぁ!」

 ルーブはすぐさま何かをローイエに向かって放った。


キィィィン!


「きゃあ!」

 甲高い音と共に槍に当たったのは、ルーブの持っていた斧の刃の部分だった。

 予想外の攻撃に後ろにのけぞるローイエに、ルーブは刃を失った斧の棒を持って勢いよく向かってきた。

「えぇい!もう一回!」

「遅い!!!」

 ローイエが槍を振ろうとした瞬間、ルーブの棒がローイエの槍を弾いた。

「あぁ!」

 力強い一撃に、ローイエは槍を持ったまま後ろに倒れた。そのまま倒れたローイエに向かって、ルーブは棒を持ったまま飛びかかった。

「手間取らせやがって!」

 馬乗りになった状態で、ルーブは何度もローイエに棒をぶつけた。

「あぁ!かはっ!」

 何度も何度も棒を打ち付けられ、ローイエは口から血を吐いた。

「ローイエ!」

 プルーパはすぐさま短剣をルーブに投げつける。

「ちぃ!」

 短剣を避けてローイエから離れるルーブ。それを見たプルーパは、すぐさまローイエに駆け寄った。

「ローイエ!大丈夫!?」

「お姉・・・様・・・。」

 小さくローイエがそう言うと、プルーパはローイエの口元に人差し指を当てた。すると、ローイエはゆっくりと目を瞑って意識を手放した。

「ふん!今度はあなたが相手?」

 嘲笑うかのように言ったルーブに、プルーパは拳を握りしめて立ち上がった。

「許さないわ・・・!私の妹を散々痛め付けてくれたわね・・・!」

「止めておきなさい!あんたの短剣じゃ私は倒せない!」

 さらに嘲笑うルーブに、プルーパは小さく笑った。

「ふふ・・・確かに短剣じゃ役不足かもね・・・でも、"刃"だったらどうかしら?」

 その言葉と同時に、プルーパの着ていた衣服が宙を舞った。その衣服が地面に落ちた時、プルーパは立派な着物に身を包んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ