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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
123/156

技巧

「エェイ!」

「ハァ!」

「甘いわ!」


キィィィン!


「きゃっ!」

「くっ!」

 プルーパが短剣、ローイエが槍で斧のルーブと接近戦を行うも、武器の重量によって簡単に押し負けてしまった。

「あらあら?意気込んだわりには大したことないわね。」

 嘲笑いながら斧を回転させるルーブに対して、プルーパとローイエは表情を曇らせていた。

「お姉様・・・やっぱり力じゃ勝てないよう・・・。」

 ローイエがそういうのも無理はない。

「・・・。」

 さらに表情を曇らせながら、ローイエはレジオンとの槍の修行を思い出した。




「ローイエ、まずはお前の槍の特性を知れ。」

「とくせー?」

 首を傾げるローイエに、レジオンは解説を始めた。

「プルーパの剣舞踊はともかく、槍を使う奴ってのは男女関係なくいる。」

「そうなの?」

 そう言って、ローイエは以前、バルーシが槍を使っていたのを思い出した。兵団の訓練で、バルーシはたまに使い慣れた剣ではなく槍を使うときがある。バルーシ曰く、それは様々な敵に対応するためだと言うが、そんなもの関係なしに力でねじ伏せていたバルーシの姿は今でも印象に残っている。

「それでだ、男と女じゃ槍の使い方が根本的に違う。その理由はわかるか?」

「え?う〜ん・・・。」

 ローイエは頭を捻って考え込んだ。しばらく唸りながら考えるが・・・。

「わかんないよ〜。」

 レジオンは小さくため息をつくと、自分が持っていた大剣を前に出した。

「じゃあ聞くが・・・お前がこの大剣を扱う場合、どうやって使う?」

「う〜ん・・・私こんな重いもの振れないから・・・これを軸にして・・・。」

 難しそうに呟くローイエ。

「そう!そこだよ!」

「軸にすることー?」

「違う違う。要は男と女じゃ力の差があるってことだよ。同じ武器を扱うにしても扱い方は変わってくるんだ。」

「男の方が力強いってことー?」

 確かにローイエの戦い方と、さっき思い出したバルーシの戦い方は圧倒的に違う。力でねじ伏せるバルーシに対して、ローイエは相手の動きや武器の軌道に合わせる、言わば"技術"を重視した戦い方だ。

「それぞれ長所短所があるのは言うまでもない、だからといってどっちとも体得するには時間が無さすぎる。」

「じゃあどうするのー?」

 そう聞くと、レジオンは前に出していた大剣を思いっきり振り上げた。

「簡単だ、要は力を重視する戦い方をする奴に対応できるようになればいい。」

 振り上げた剣をそのまま肩に担ぎ、レジオンはローイエに向かって威圧の目を向けた。

「つまり・・・レジオンと戦って覚えろってこと?」

「正解!」

 そう言って、二人の戦いは始まった。




「そっか・・・技か・・・!」

 レジオンの教えを思い出したローイエは、気づいたようにハッとなって槍を再び構えた。

「あら?まだ戦う気があったの?」

 笑いながら斧を構えるルーブに、ローイエはあくまで冷静に槍を構えた。

「ローイエ・・・あなた・・・。」

「お姉様、見ててね!」

 軽くウィンクをして、ローイエは再びルーブの方を向き直した。

「いいわ!貴女から先に切り刻んであげるわ!」

 勢いよく踏み込んで切りかかってきたルーブに対し、ローイエは一切動かない。二人の間がルーブの持つ斧の攻撃範囲内に入っても、全く動かない。

「ローイエ!」

「諦めたようね!死になさい!」

 勢いよくローイエの頭目掛けて振り下ろされた斧。

「・・・!」

 斧が振り下ろされた瞬間、ローイエの手が動いた。

「エェイ!」

「!」

 ローイエの槍はルーブの斧を弾いた。弾いた斧に引っ張られ、ルーブはローイエから離れていった。

「くぅ!」

 すぐさま構えて再び切りかかってくるルーブに、ローイエはさらに槍を振るった。


キィィィィィィン!


「あぁ!」

 さらに甲高い音を立てる斧と槍。見てみると、弾かれた斧に引っ張られていくルーブと同じように、ローイエも槍に引っ張られて離れてしまっていた。

「ローイエ!・・・なんて反発力なの・・・!」

 プルーパが小さく呟いた後、ローイエの持っている銀色の槍を見てハッとなった。

「あの槍の原料・・・!もしかして!」

 プルーパの驚きを聞いて、ルーブも気づいたような顔をしかめた。

「思い出したわ・・・その槍の原料、加わった力を倍加させてさらに逆の方向にも力が加わるレアメタルね。」

 レジオンの教えは、加わった力に対して逆の方向に力が加わる、"反発力"を利用して戦うのがこの槍のセオリーだと言い、ローイエは修行内でこれを完全に体得することに成功していた。

 ルーブに槍の仕組みを指摘されたローイエは、持っていた槍を高く振り上げた。

「・・・正解!」

 そして、槍を肩に担ぎ上げて、ローイエはルーブに威圧の目を向けた。

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