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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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信念

 各地で火災が発生している市街地で、兵団の兵士達が必死に消火活動に当たっていた。

「まずい!周りに燃え移り始めたぞ!」

「こっちに増援を!このままじゃ消火出来ない!」

「貴重品の保護も怠るな!」

 慌ただしく兵士達が行き交う中、バルーシは中央広場の方へ走って向かっていた。

「隊長殿!どちらへ!?」

「すまない!消火活動は皆に任せた!俺は奴と決着をつけなければ!」

 そう言って、バルーシはさらに走るスピードを速めた。




「ちっ、この程度じゃ物足りねぇぜ・・・。」

 中央広場で一人、ドレッドが両手に剣を持ちながら呟いた。

「もっと盛大に燃やし尽くしてやりてぇのに・・・全くどいつもこいつも思いきりの気持ちが足りないな・・・。」

 やれやれ、と小さくため息をついて、ドレッドは左手の剣を右手の剣に重ね合わせて、高速で擦り合わせた。その瞬間、右手の剣に激しい炎が灯った。

「景気付けだ。一発どでかい火柱でも上げて前哨戦を盛り上げますかな。」

 そう言って、ドレッドは炎を纏った右手の剣を振りかぶった。

「たーまやー!」

 掛け声と共に右手の剣を振るうと、炎が剣を離れて、真っ直ぐと中央広場にある一番高い建物に向かっていった。




シュ・・・!




「あぁ!?」

 間の抜けた声を上げるドレッド。

 ドレッドの目の前で、真っ直ぐ飛んでいった炎が急に消滅した。

「な!何だ何だ!?」

 目をぱちくりさせるドレッド。その時、ドレッドの体に風が走った。

「・・・!」

 その風を感じたとき、ドレッドは表情を緩めて風が吹いている方向を見た。

「久しぶりだな!俺のライバル!」

 すぐさま両手剣を構えるドレッド。そしてそれと対峙する、銀色の防具を身に付けた銀髪の青年、バルーシ。

「お前が火をつけたのか?」

「その通りだ!まぁ、もっと景気よくやりたかったんだが・・・狼煙だからしゃあないか。」

 退屈そうな表情になるドレッドに、バルーシは表情を曇らせた。

「貴様・・・人々の情や様々な想いが籠った街を破壊するなど・・・!」

 バルーシの怒りの言葉に対し、ドレッドは笑いながら返した。

「街何かどうでもいいんだよ!情なんかいくらでも込められるじゃねぇか!壊れたものは建て直せばいい話だしよ!」

「・・・何だと?」

 ドレッドの言葉に、バルーシは眉を動かした。

「だけどよぉ!人は一回壊れたらもう直らねぇ!だったら壊れる前に戦闘を楽しむってのが戦士じゃないのか!?」

「・・・。」

 バルーシは、別人を見るような目でドレッドを見た。

 この男は、心までラーカによって悪に染まった男だと思っていたが、その考えは間違いかもしれなかった。この男、考え方は間違っているかもしれないが、自分の"信念"を重んじてる。

「なるほど、道理で似た者に見えるわけだ。」

「さぁ!似た者同士、死ぬまでやり合おうぜ!」


 主君を守るバルーシの"信念"。そして闘争と人間に対するドレッドの"信念"。

 今、二つの信念がぶつかり合う時が訪れた。


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