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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
120/156

散開

「シロヤ様!市街地の建物各所から火が!」

 兵士の言葉に、王室にいた全員が反応した。

「狼煙が・・・上がった。」

 シロヤの言葉に、全員が一斉に動いた。

「兵団全員に伝令せよ!今から兵団は全員!街の消化活動に当たれ!」

「城にいるメイドと学者全員に伝令よ!今すぐ城から避難しなさい!」

「僧侶と医者の皆に伝えて!皆で怪我した人をすぐに看病してあげて!」

「魔術師達に伝令だ!今すぐ城を囲むように魔法の結界を張れ!」

 バルーシ、プルーパ、ローイエ、シアンがそれぞれ、城にいる人達に命令する。

「シロヤ様!」

 伝令が終わると同時に、再び兵士がやって来た。

「一般市民の避難勧告がまだ出ていません!」

「!!!」

 その言葉に、シロヤを含めた全員が変わった。

「今すぐ街の皆に避難勧告を!」

「はっ!」

「シロヤ様!街に謎の生物が大量発生!街を破壊しています!」

「なんですって!」

 先手を越された、と全員が思った。

「なるべく被害を最小限に抑えてください!街の皆への避難勧告が優先です!」

「第1から第5の兵団は謎の生物から市民達を守れ!」

「はっ!」

 兵士達が一斉に城から出ていく。それを見て、シロヤは苦い顔で膝をついた。

「奴等め・・・市民を狙ったのか・・・!」

「常套手段ってやつだな。」

 拳を強く握るシロヤの横で、レジオンが冷静に呟いた。

「とにかく今は市民の誘導が先決です。人手が足りないようならば手が余った人達も誘導に」

「シロヤ様!」

 シロヤの言葉を入ってきた兵士が遮った。

「どうしました!?」

「変です!市街地に人がいません!」

 全員が驚いた瞬間、さらに兵士が走ってやってきた。

「シロヤ様!市民全員が城の北西に向かっています!」

「城の・・・北西?」

 全員が顔を見合わせた。城の北西に何があるか、何故そこに人が向かっているのか。それを考えたシロヤは、ある一つの結論にたどり着いた。

「・・・地下帝国!」

 城の北西にあるのは、以前シロヤ達が訪れた禁断の地、地下帝国への入り口があるところだった。

「市民全員が・・・地下帝国に向かっている?」

 敵の罠かと思ったが、短時間で市民全員を洗脳するという芸当は不可能であり、何よりそんな高等技術を使う術士がいないことはシロヤ達がよく知っていた。

「誰かが・・・地下帝国へ誘導して避難させようとしている?」

 プルーパが呟いた瞬間、シロヤとプルーパは王室を見渡した。

「!!!」

「やっぱり・・・いない!」

「お兄様!もしかして・・・!」

 ローイエの言葉が途切れた瞬間、プルーパは全力で床を蹴っていた。

「シロヤ君!地下帝国へは私が向かうわ!」

「お姉様!私も行く!」

 ローイエは背中に槍を掛けたまま、プルーパの後を追った。

「ローイエ!」

「シアンお姉様!私だって戦えるもん!」

 そう言って、二人は城の入り口を目指して走っていった。

「ローイエ!」

「シアン、行かせてやれ。いつまでもあいつを子供扱いするな。」

 そう言ってシアンを制したのは、レジオンだった。

「レジオン・・・!」

「奴は守りたいもののために戦うと決めたんだ。その気持ち、汲み取ってやれ。」

 レジオンの言葉に、シアンは小さく頷いた。

「・・・シロヤ様。」

 次に声を発したのはバルーシだった。

「私はこれから市街地の方へ向かいます。おそらく・・・そこには誰かがいます。」

 バルーシの言葉に、シロヤは頷いた。

「はい・・・市街地はよろしくお願いします。」

「はっ!」

 力強く敬礼をして、バルーシは全速力で入り口に向かっていった。

「さて・・・シロヤ君。」

 次に言葉をかけてきたのはフカミだった。

「シロヤ君に向かってもらいたい場所があるんだけど・・・いいかしら?」

「向かってもらいたい・・・場所?」

 シロヤの言葉に、フカミは真剣な表情で言った。

「向かってもらいたいのは、地下帝国の最新部よ。」

「!!!」

 全員の表情が再び引き締まった。

「でも・・・街の方が」

「シロヤよ。」

 躊躇うシロヤの手を、シアンはギュッと握った。

「城は私が守る・・・そなたは地下帝国に行け。」

「し、しかし・・・。」

 さらに躊躇うシロヤ。ギュッと握った手に力を込め、シアンはさらに言った。

「私達を信頼してくれ・・・必ずやこの城を、この国を守って見せようぞ。」

 その言葉に、躊躇っていたシロヤは小さく頷いた。

「シアン様・・・。」

「大丈夫だ。そなたのためならばどんな敵でも倒してみせようぞ。」

 その言葉を聞いて、シロヤは決心したように手を離した。

「フカミさん・・・行きましょう、地下帝国へ。」

 シロヤの決心に、フカミは小さく笑った。

「シロヤ様!地下帝国へ行くまでの護衛をさせていただきます!」

「城で指示ばっかしてるのは性に合わないんでね。」

 リーグンとレジオンが一歩前に出た。

「はい!お願いします!」

 シロヤが頭を下げると、二人は表情を引き締めた。

 そして、シロヤはフカミの方を向いて、再び決心を口にした。

「行きましょう!地下帝国へ!」


 それぞれの戦いが、今始まった。

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