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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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前夜

「・・・。」

 ここはバルーシの自室。その中で一人、バルーシは装備の整備をしていた。

「・・・ロブズン・・・。」

 誰に聞かせるわけでもなく、バルーシは小さく呟いた。

「必ずお前を・・・救い出してやるからな・・・。」

 今回の戦争で、バルーシは弟であるロブズンと対立することになるだろう。しかしバルーシは、必ずロブズンを救おうという断固たる決意があった。

「また兄弟三人で笑える日を・・・取り戻してみせる。」

 バルーシは整備の手を速めた。




「ごめんねリーグン。呼び出しちゃったりして。」

 ここはプルーパの自室。あの後、プルーパはリーグンを自室へと招き入れた。

「プルーパ様、話とは一体なんでしょうか?」

 そう言われて、プルーパは小さく息を吸って言った。

「・・・"アレ"を出してくれないかしら?」

「!!!」

 それを言われた瞬間、リーグンは驚きの表情になった。

「まさか・・・アレを使う気なのですか!?」

「えぇ・・・じゃないと今回の戦争、勝てないかもしれないわ。」

「無茶です!プルーパ様はまだアレは使いきれていないはずです!」

「・・・無茶は重々承知よ。」

 プルーパの目は真剣だった。リーグンはそれを感じとり、渋い顔をしながら小さく頷いた。

「・・・ありがとう、リーグン。」

 プルーパは優しく微笑んだ。

「それとリーグン、あなたも無茶はやめておきなさいよ?いくらあなたでもあの魔法は荷が重いんじゃないかしら?」

「な!なぜそれを!?」

 その言葉に、プルーパはいたずらっぽく微笑んだ。

「女の勘・・・よ。」




「何やってるの?クピンちゃん。」

 ここはクピンの自室。ローイエがクピンの自室を訪れた時、クピンは自室の掃除をしていた。

「お部屋の掃除をしております。戦地に赴く前は必ず部屋の掃除をすると、文献に書いておりましたので。」

 クピンが笑顔で言った。

「おいおい、それは最初から死ぬ気で戦地に行くやつの行動だぜ?」

「レジオン!」

 振り向くと、レジオンが笑いながらクピンの部屋に入ってきた。

 レジオンの指摘に、クピンは「そうだったんですか」と言わんばかりの表情で固まっていた。どうやら間違った解釈をしていたようだ。

「ク・・・クピンちゃん?」

「えへへ・・・ご安心ください、必ず生きて帰ると約束しましたから!」

「ぷっ!あははは!クピンちゃんったら!」

「ガハハハ!ったくてめぇは勘違いが過ぎるぞ!」

「す・・・すいません・・・えへへ。」

 部屋の中、三人の笑い声が響き渡った。それは、明日戦争に出向くような人達とは思えなかった。




 ここはシロヤの自室。

「・・・シアン様?」

「スー・・・スー・・・スー・・・。」

 シロヤの肩を借りていたシアンは、いつの間にか眠りについていた。

「・・・。」

 シロヤはシアンの寝顔を見て、小さく笑った。そしてそっと髪を撫でて、自室のベッドにゆっくり横に寝かせた。

「・・・心配?」

「フカミさん・・・。」

 いつの間に来ていたのか、部屋にいたフカミがシロヤに話しかけてきた。

「不安なのはわかってるわ。あなたは何人もの・・・いえ、今はこの国全ての人間の命を背負ってるんですものね。」

 フカミの言葉に、シロヤは少し考え込んだ。

 確かに今、自分は一人ではない。信頼してくれている皆のために、シロヤは必ず生きて帰らなければならない。

「でも・・・。」

 シロヤはそこで初めて言葉を紡いだ。

「それが重荷になるなんて決して思いません。むしろ・・・それが俺の力になると思います。」

「シロヤさん・・・。」

 キリミドが笑った。それを見てフカミ、そしてシロヤも笑った。

「皆さんの思いが、皆さんの願いが強ければ、俺達は必ず乗り越えられます。」

「シロヤさんらしいですね。」

「でもそんなあなたの考え・・・嫌いじゃないわ。」

 そう言って、フカミとキリミドはまた笑った。それに釣られるようにシロヤも笑った。

「・・・!」

 ふと見てみると、ベッドで寝ているシアンも笑っていた・・・ような気がした。

 それを見て、シロヤはまた小さく笑った。




 そして、それぞれの思いが交錯した夜は過ぎていった・・・。

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