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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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仲間

「前哨戦・・・!?」

「明日って・・・いくらなんでも急では!?」

「戦いに急も何も無いではないか?」

「・・・一理あるわ。」

 男に言われた宣戦布告に、キリミドは信じられないといったように慌てる。対してシロヤとフカミは冷静だった。

「それで・・・その狼煙は一体どこから?」

 シロヤの問いに、男は小さく笑った。

「そこまで伝える気はない。我々はラーカに逆らう貴様達の抹殺を目的としている。」

「だったら・・・おかしいんじゃない?」

 男の言葉に、フカミはあくまで冷静に問いかけた。

「私達の抹殺が目的なら・・・何で私達にそれを教えるの?」

「・・・。」

 フカミの問いに対して、男は表情を変えずに何も答えなかった。その反応を見て、フカミはさらに追求するように問いかけた。

「あなた・・・端から闇討ちみたいな卑怯な真似をする気はないみたいね。」

「・・・。」

「それは武人としての誇り故じゃない・・・察するにあなたは私達に・・・いえ、私達の中の誰かに情があるから、違う?」

「・・・黙れ。」

 男は初めて表情を崩して、肩に掛けていた剣を振り抜いた。その瞬間、強い威圧感を三人は感じた。

「それ以上の狂言は許さぬ。続けようならば貴様の首を斬り奴等の前に掲げてくれる。」

「・・・どうやら図星みたいね。」

 その言葉に、男の表情が無表情となった。それと同時に男は目にも止まらぬ速さで間合いを詰め、フカミに向かって剣を振るった。


キィィィン!


「!」

 男の剣はフカミに届かなかった。男の剣を受け止めていたのはシロヤだった。

「フカミさんに手を出すな。それ以上やるなら俺が相手してやる。」

「・・・ふん。」

 シロヤの言葉に、男は後ろに飛び退いて剣を肩に掛けた。

「伝えることは確かに伝えた、さらばだ。」

 そう言って、持っていた兜を身に付け、男は横に飛んで森の中に入っていってしまった。そのまま目にも止まらぬ速さで駆けていき、数秒もしない内に男の姿は見えなくなっていた。

「全身鎧を着けているのにあんなに動けるなんて・・・!」

「ラーカの配下・・・一筋縄じゃいかないみたいね。」

 フカミとキリミドの言葉に何も言わず、シロヤは男が駆けていった方角を見続けていた。

「それよりも・・・シロヤさん。」

「そうね、狼煙の話を皆にしなきゃね。」

「・・・そうですね。」

 三人は森の家を後にした。




「それは本当ですか!?」

「前哨戦ね・・・中々粋な真似をしてくれるわね。」

 シロヤ達の言葉に、バルーシが驚き、プルーパが感心したように頷いた。

「とうとう明日・・・始まるのですね。」

「一世一代の大戦争ってやつかい。」

 リーグンの額からは汗が落ち、レジオンの顔はいつも以上に真剣だった。

「・・・。」

「クピンちゃん・・・大丈夫?」

 震えているクピン、それをなだめているローイエも不安そうな表情だった。

「シロヤ・・・。」

 横から聞こえた声。それは、まるで幼くなってしまったように不安な表情のシアンだった。

「・・・。」

 それぞれの表情を見て、シロヤも表情を曇らせた。

 今回の戦いが、今までの比ではないことはシロヤが一番よく知っていた。下手をしなくても犠牲者が出てしまう可能性があるこの戦い、それが明日に迫っている事実は、如何に歴戦を乗り越えたと言えど容易に受け入れられるものではない。

「・・・皆さん。」

 シロヤは口を開いた。

「今さら激励なんて・・・俺には言えません。正直、俺も怖いです。」

 震える声。それでもシロヤは言葉を紡ぎ続けた。

「でも・・・これだけは言わせてください。絶対に・・・死なないでください。命の危険を感じたらすぐに逃げてください。願わくは・・・生きてまた皆さんとここに集まれることを」

「ちょっとちょっと?」

 シロヤの言葉を遮ったのはプルーパだった。

「シロヤ君、私達は負ける気はないわよ?」

「もちろんです。願わくはではありません。私達は必ず生きて帰ってきます。」

 その言葉に、全員の不安そうな表情が緩み、次第に笑顔へと変わっていった。

「お兄様、皆で誓ったよね?」

「私達は離れ離れになりません。」

 とリーグン。

「もし誰か死にそうだったらひっぱたいてでも連れ戻してやるぜ。」

 とレジオン。

「次元牢で誓った約束は必ず守ります。」

 とクピン。

「あはは、どうやら考えすぎみたいだったわね。」

「皆さんの言葉を聞いて、私達も安心しました。」

 とフカミとキリミド。

 全員が不安だった表情を吹き飛ばし、約束を守るために戦うことを決意していた。その表情を見て、シロヤの顔も自然に綻ぶ。

「皆さん・・・!」




「その通りだぜ?シロヤ。」




「!」

 突然かけられた声。振り向くと、そこに立っていたのはゴルドーだった。

「まだ勝ち負けが決まった訳じゃねぇ。お前が仲間を信じなきゃ誰が信じるって言うんだ?」

「・・・はい!」

 シロヤの表情から不安の色が消えた。

「それとな、皆に渡しておくものがあるんだ。」

 そう言ってゴルドーが全員に渡したのは、小さな袋だった。

「ゴルドー兄さん、これは一体?」

「俺が作った御守りみたいなもんだ。気休め程度にでも持っておけ。」

 全員が御守りの袋をしまうと、一斉にシロヤの方を見た。

 シロヤは大きく息を吸い込むと、大きく口を開いて叫んだ。

「絶対に勝ちます!!!必ず帰ってきてください!!!」

 九人の答えを言うまでもなかった。

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