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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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意味

「お兄様、起きて起きて!」

 地下帝国探索の次の日の朝、ローイエはベッドで寝ているシロヤを起こしていた。

 ユサユサと何回も揺らしていると、やがてシロヤはゆっくりと目を開けた。

「うぅ・・・ん・・・ふわぁ・・・。」

 大きなあくびを一つして、シロヤは大きく伸びをした。

「おはよう、お兄様。」

「おはようございます、ローイエ様。」

「・・・。」

 ジーっとシロヤを睨むローイエ。

「あ・・・おはよう、ローイエちゃん。」

「♪」

 言い直したシロヤの言葉に、ローイエは満面の笑みになった。どうやらご機嫌になったようだ。

「あ、お兄様。フカミちゃんが話があるって言ってたよ?作戦会議室にいるから。」

「え?フカミさんが?分かりました、ありがとうございます。」

 そっとローイエの頭を撫でるシロヤ。

「もぅ・・・敬語やめてよぉ・・・えへへ・・・。」

 いつもなら不機嫌になるローイエだが、頭を撫でられたことで帳消しになってしまったようだ。




「来たわね。」

 作戦会議室に行くと、中にはフカミとキリミドがいた。

「俺に話ってなんですか?」

 シロヤがそういうと、フカミとキリミドはシロヤに駆け寄ってきた。

「ちょっとあなたに見てほしいものがあるのよ。」

「私達についてきてください。」

「え?見せたいもの?」

 フカミとキリミドはシロヤの手を掴んで、グイグイと引っ張って作戦会議室を出ていこうとした。

「ちょ!ちょっと引っ張りすぎですって!」

 ふたりの精霊に連れられ、シロヤは城を出ていった。




 連れられてやって来たのは、未開拓地帯の奥の教会だった。

「ここって確か・・・レーグを尾行したときに来た・・・。」

 一年も経っていないはずなのに、ずいぶんと昔のことのように思えてしまうシロヤ。

「シロヤ君、こっちよ。」

 フカミに招かれて、シロヤは森のさらに奥へと歩を進めていった。


・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


「さぁ、着いたわ。」

 森の奥へとどんどん入っていくと、やがてシロヤ達は拓けた場所に出てきた。

「ここは・・・?」

「ここは私達の家よ。ほらあそこ、入り口があるでしょ?」

 フカミが指差した方向に、人が屈んで入れる程度の大きさの穴があった。

 その穴を潜ると、フカミは中央にある大きな花に手をかざした。

「わっ!」

 花が光を帯びると、周りを照らし始めた。明るい部屋で、キリミドが一つの方向を指差した。

「つい最近まで、そこにランブウさんがいたんですよ。」

「今はどこへ?」

「国境警備隊の皆さんを連れてどこかに行ってしまいました。」

 そんな話をしていると、フカミが二人を手招きしていた。

「見てほしいものはこれよ。」

 そう言って指差した方向にあったのは、大きな石板だった。

「こ!この石板の絵!」

 石板を見た瞬間、シロヤは驚きの表情で叫んだ。

「見たことあるでしょ?地下帝国で。」

「はい・・・まさしくあの壁画の絵と同じです・・・!」

 シロヤが見ている石板の絵は、地下帝国のさらに奥で見た巨大壁画の絵と同じものだった。

「今日、ここに呼んだ理由はね、この絵の意味をシロヤ君に教えるためだったの。」

「この絵の意味?」

 シロヤの問いに、キリミドが深呼吸を一つしてゆっくりと語りだした。

「空を取り込まんばかりの巨大な闇がこの地を覆う時・・・人が持つ何者にも負けぬ強い力が集まり・・・闇に打ち勝つ英雄、この地に現れる・・・。」

「巨大な闇・・・?闇に打ち勝つ英雄・・・?」

 石板の絵の意味を語るキリミド。シロヤは気になった部分を復唱した。

「あくまでも憶測だけどね、これは英雄と魔の戦いを表した物だと思われるわ。」

 まだバスナダという国がなかった時代、旅人だった男がチラプナと共に魔に立ち向かった話、それがこの絵だとフカミは言っていた。

「じゃあ・・・やっぱりあの地下帝国は・・・。」




ザッ・・・。




「!!!」

 突然響いた草を踏む音。勢いよく振り向くと、そこには鎧の男が立っていた。

「あなた・・・!いつからそこへ・・・?」

 フカミの問いに答えようとせず、男は兜を取った。銅髪の髪がサラサラと揺れる。

「あなたは確か・・・地下帝国にいた・・・。」

 男は兜を持ったまま、ゆっくりと語り始めた。

「貴様達の推測・・・二日後にラーカが攻めてくるのは真実だ。」

「え!?」

 全員が驚きの表情になると、男はさらに言葉を続けた。

「だが・・・明日、この街に狼煙が上がる。」

「狼煙・・・?」

 男はゆっくりと、狼煙の意味を話した。


「その狼煙は前哨戦の合図だ。ラーカの下についている我々は明日、この国に攻撃を開始する。」


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