真実
「・・・そんなことがあったのね。」
バルーシの過去の話を聞いて、プルーパはそう小さく呟いた。
「はい・・・あれからずっと二人を探しましたが・・・一向に成果が上がらないままでした。」
バルーシは、窓から見える月を眺めながらそう言った。
「ゴルドー兄さんは現れてくれましたが・・・未だに弟は見つからないままでした。」
バルーシが言った。しかし、その言葉を聞いたプルーパの頭に疑問が走った。
「見つからないままだった・・・って?」
だった、という言葉に違和感を覚えたプルーパ。まるで、最近になって弟を見つけたような言い方だ。
「プルーパ様も薄々気づいているのではないでしょうか?」
そう言われて、プルーパは今までの記憶を振り返ってみた。そして最終的に出てきた記憶、それは今日の地下帝国探索時だった。
「・・・!」
その時を思い出して、プルーパはハッとなった。思い出されたのは、あの時バルーシと敵対していた銅髪の青年。
「まさか・・・。」
「そうです・・・あの銅髪の青年が私とゴルドー兄さんの弟、ロブズンだったんです・・・。」
「・・・そうだったのね・・・。」
明かされた真実に、二人の間に沈黙が流れる。
「・・・。」
「・・・。」
今までよりも長い沈黙。プルーパは何度も話を切り出そうとするが、何をかけていいのかわからずにいた。
「・・・私も驚きでした。行方不明になっていた弟が、今は敵対勢力の一部になっていただなんて・・・。」
珍しくバルーシの声は震えていた。満天の月明かりを浴びるバルーシの表情は、どこか憂いを帯びていた。
「おそらくロブズンは・・・私を恨んでいたでしょう。」
「どうして?」
プルーパの言葉に、バルーシは少しうつむきながら話始めた。
「過程はどうであれ、ロブズンが敵になったのは私があのとき・・・ロブズンを守れなかったからです。」
「・・・。」
「あの時私が守っていれば・・・兄さんの言葉を守っていれば・・・地下帝国でロブズンと剣を交えることはなかったでしょう。」
バルーシは拳を強く握った。その拳からはポタポタと血が流れている。
「肉親一人守れないで・・・私は何を守ることができるでしょうか・・・!」
その言葉と共に、バルーシの眼から涙がこぼれ落ちた。兵団長のプライドから、人前では決して泣かないバルーシだったが、溢れだした自責の念が涙となってバルーシの頬を濡らしていた。
「う・・・うぅ・・・。」
嗚咽をこぼすバルーシをしばらく見つめていたプルーパは、そっとバルーシの頭に手を置いた。
「まだ・・・泣くには早いんじゃない?」
プルーパも満天の月明かりを浴びていたが、その表情はまるで母が子を諭すような暖かみがあった。
「弟さんは死んではいないんでしょ?悪に手を貸してるんだったら、あなたが殴って目を覚まさせなさい。少なくとも、今弟さんを救えるのはあなただけなのよ。」
その言葉を、バルーシは涙を流しながら心に深く刻んだ。
「過去の失敗は確かに消えないわ。いつまでも自責の念は付きまとってくるものよ。だけどね、それは未来に進むまいとする言い訳じゃない。むしろその逆、未来に進むための道、そしてそれを掴むチャンスよ。」
「・・・。」
「弟さんの目を覚まさせて一緒に未来を歩もうとするチャンス、それが目の前にあるのよ。泣いてたから見逃して掴めなかったなんて、あなたらしくないわ。」
そう言われて、バルーシは俯いていた頭を上げ、流れている涙を強引に拭いて立ち上がった。その瞳に迷いの欠片はない。
「ありがとうございます、プルーパ様。私はあの時果たせなかった約束を果たしに行きます・・・ロブズンを・・・救ってみせます。」
その決意を聞いたプルーパは、満面の笑みを浮かべた。
「うん、その表情が一番あなたらしいわ。」
二人はお互いの顔を見合って、小さく笑った。