宣告
「攻めてくる・・・日・・・?」
しばらく流れていた静寂をシロヤが止めた。それを聞いたフカミは、作戦会議室のテーブルに手をついて、シロヤを一点に見つめながら言葉を続けた。
「調査結果を聞いて確信したわ。ラーカは必ずこの日に攻めてくるってね。」
「その日とは・・・一体いつなのですか?」
焦るようにリーグンがフカミに尋ねると、フカミは深く深呼吸をして再び口を開いた。
「三日後よ。」
「!!!」
フカミから放たれた言葉に、全員に恐怖と焦りが降りかかった。
「み、三日後だと!いくらなんでも急すぎじゃねえか!?」
レジオンが早口で言った。衝撃の宣告に、誰もが汗を拭うことすら出来ずに固まっていた。
「・・・何か・・・理由があるんですか?・・・三日後だと言うことに・・・。」
シロヤはフカミに聞いた。その声は震えていて、相当焦っていることが見てとれた。
「えぇ、もちろんよ。だと三日後と言うのにはちゃんとした理由があるのよ。」
フカミはまた大きく深呼吸をして、今度は全員を見ながら口を開いた。
「三日後・・・それはバスナダの民にとっては神聖とされる日・・・。」
「・・・初めて聞きました。」
クピンの一言に、シロヤ以外の全員が頷いた。
「無理もないわ。長い時間が経った今、その日は人々から忘れ去られているからね。」
フカミが補足を加えた。
「その神聖な日って・・・まさか巨大な壁画に関係が?」
「えぇ、その巨大壁画が最大のヒントだったわ。」
全員が息を飲む。
「・・・その神聖な日って・・・?」
それを聞いて、フカミは少し間を置いてから口を開いた。
「流星よ・・・。」
「りゅ、流星!?」
「待ってください!流星は確か星夜祭の時に起きたはずでは!?」
全員が顔を見合わせた。確かに星夜祭、シロヤがレーグと戦ったあの日、流星は起きたはずだった。
「えぇ、確かにあのとき起きたのも流星よ。でもあれは星がシロヤ君を選んだことによって起きた流星。本来の流星ではないわ。」
「では・・・その本来の流星と言うのが三日後というわけですね。」
全員が驚愕の表情で固まる中、フカミは言葉を続けた。
「三日後、流星の日っていうのはラーカにとっては最も忌むべき日なのよ。」
「忌むべき日・・・?」
誰もが疑問に思う中、レジオンが壁に預けていた背をすっと放した。
「なるほど、その日はラーカが封印された日ってわけか。」
そう言われて全員がハッとなった。
「正解よ、流星と言われてる日はラーカが勇者と勇者の女によって封印された日。」
「それで忌むべき日ってわけですか・・・。」
フカミはさらに続けた。
「その封印によって出来た産物が私達が星と呼んでいる力の結晶。それをラーカは狙っているのよ。」
話を終えると、全員が顔を見合わせた。
「三日後、星を巡ってラーカと戦うというわけですね。」
「急すぎだよー、お兄様、大丈夫かな?」
ローイエが心配そうにシロヤの袖を掴んだ。
「・・・大丈夫です。俺達は決めたんです、絶対に皆で生きるって。」
その言葉に、全員の焦りを含んでいた表情が緩んだ。
「そうでしたね・・・シロヤ様。」
「国王様がやる気なんだ。俺達だってやらないわけにはいかないだろう?」
「非力ながら私も協力させてください!」
リーグン、レジオン、クピンが緩んだ表情を引き締めた。
「いつ攻めてくるのかわかればこっちのものよ。」
「私達も対策を練りましょう!」
シロヤ達の反対側にいたフカミとキリミドも駆け寄ってきた。
「・・・お兄様。」
そっと袖から手を離し、ローイエは表情を固めた。
「絶対・・・勝とうね!」
「はい!」
その場の全員が、シロヤの言葉によって再び戦う決意を固めた。
「・・・。」
月明かりが降り注ぐ部屋の中、バルーシは窓の外を眺めていた。
「何故・・・何故あいつがあんな・・・。」
コンコン
突如ドアがノックされ、バルーシはすぐさまドアを開けた。
「・・・急にごめんね、バルーシ。」
「・・・プルーパ様。」
「ちょっと・・・話したいことがあるんだけど・・・いい?」
バルーシは小さく首を縦に振った。