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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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銅髪

「誰!?」

 プルーパの声と共に、その場の全員が戦闘体制に入る。

「・・・。」

 全身鎧の男も同じく剣を構えた。

「!!!」

 その瞬間、場の空気が一気に緊張に包まれた。

 剣を構えるという一動作だけで、空気が一瞬にして変化した。その空気を肌で感じた四人は、いつの間にか額から汗が流れていた。

「お前・・・一体・・・。」

 手が少し震えながらも、シロヤは喉から声を絞り出した。しかしその声は、完全に"怯え"だった。

「・・・シロヤ様。」

 その時、バルーシが手が震えているシロヤの前に立ちふさがった。

「バルーシさん・・・?」

「シロヤ様、ここは私に任せてください。」

 そう言って、バルーシは剣を構えてジリジリと男に近づいていった。

「・・・。」

「シロヤ君?」

 バルーシが近づいていくのを見たシロヤは、緊張の糸が切れたように足をふらつかせた。慌ててプルーパがシロヤに肩を貸す。

「シロヤ君、大丈夫?」

「はい・・・しかし、バルーシさんが・・・あの男・・・。」

 いつの間にか、バルーシと男との距離は体二つ分にまで近づいていた。いつ斬り合いが始まってもおかしくないほどに、二人の空気は張り詰めていた。

「えぇ・・・あの男・・・すごく強いわ。」

 プルーパの表情が強ばった瞬間、先にバルーシが動いた。

「やぁぁぁ!!!」

 斬りかかるバルーシ。素早い剣撃で男に向かっていく。

「・・・!」

 バルーシが動いてきたと同時に、男は剣を振っていた。バルーシの剣撃に合わせた男の剣は、甲高い音を響かせてバルーシの剣撃を全て弾き返した。

「くっ!」

 バルーシはすぐさま体制を立て直して、さらに剣撃を加える。

「・・・!」

 しかし、全ての剣撃を男は受け止めた。バルーシは男が剣を受け止めたのを確認して、すぐさま後ろに飛びのいた。

「!」

 その隙を見て、男はバルーシの心臓めがけて剣を向けた。

「!!!」

 飛びのいた瞬間で体制を交わせないバルーシ。シロヤとプルーパは思わず声をあげた。

「バルーシさん!」

「バルーシ!」

 声と同時に、男の剣がバルーシの体に到達した。

「・・・。」

 その場が凍りついた。

「バ・・・バルーシさん・・・?」

 思わず声が震えるシロヤ。

「・・・大丈夫だ。」

 発したのはゴルドーだった。

「・・・大丈夫・・・?」

 プルーパの声と同時に見てみると、バルーシの足元に血は無かった。

「・・・?」

 本来ならば男の手には、人を貫いた手応えがあるはずなのだが、その手応えは男の手には無かった。

 そして貫かれたはずのバルーシは、剣が向かってきた左の方にその身を90度回転させていた。

「バルーシさん!」

 シロヤの声と同時に、バルーシは剣を持ってない左の肘を男の顔面めがけて叩き込んだ。


ガキィン!


 派手な金属音。

 バルーシの左肘は男の兜を捉え、そのまま男の兜を叩き落とした。

「そうか・・・貫かれる瞬間に狙われた左胸を守るために左に体を回転させたのね・・・。」

「言うは易し、行うは難し。命のやり取りの一瞬でそこまで計算が行くのは稀だ。」

「す・・・すごい・・・!」

 バルーシはそのまま体を元に戻し、うずくまっている男に剣を構えた。

「立て。これで終わりではないはずだ。」

 そう言うと、男はゆっくりと立ち上がった。隠していた顔がゆっくりと判明していく。




「!!!!!」




 男の顔を見た瞬間、バルーシは驚きのあまり動けなくなった。

「バルーシさん?」

「どうしたの?バルーシ!」

 二人の声が届いていないのか、バルーシは固まったままだった。

「何故・・・何故お前が・・・。」

「・・・くっ!」

 男は小さく声をあげたと同時に地面を蹴り、そのままこの部屋から去っていった。

「どうしたんですか?バルーシさん。」

 ゆっくり近づいていくと、バルーシは何とも言えないような表情で固まっていた。

「バルーシ・・・。」

 ゆっくりと近づいてきたゴルドーの表情も、形容しがたい表情を浮かべていた。

「兄さん・・・。」

「・・・。」

 しばらく互いを見つめ続けていた二人。そして、ゆっくりとゴルドーが動き出した。

「・・・行くぞ。どうやらこれ以上道はないみたいだ。」

 そう言って、ゴルドーはさっさと歩いていってしまった。

「・・・。」

 まだ固まっているバルーシに、シロヤはゆっくりと口を開いた。

「バルーシさん、あの銅の髪の男は一体・・・。」

 全身鎧に身を包んでいた男の兜が取れたとき、確かにシロヤの目には銅の髪が映った。あの銅の髪を見た瞬間、バルーシは固まった。

 シロヤは何か繋がりがあるのかと思ったが、バルーシは口を開こうとはしなかった。

「・・・シロヤ君。」

 ポン、とシロヤの頭に手を置くプルーパ。

「これ以上は・・・聞かないであげましょう。」

「・・・はい。」

 シロヤは小さく頷いた。


 更なる謎を残して、四人の禁断の地の探索は幕を閉じた。

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