帝国
「シロヤ君、足元気を付けてね。」
「は、はい。」
松明で足元を照らしながら、四人は祠の階段をゆっくりと下っていった。
「一体、この先には何があるのでしょうか・・・。」
シロヤは何気なく聞いてみた。
「さぁな、ラーカに関係していることは分かってるんだがな。」
ゴルドーが答えたと同時に、四人の目の前に壁が現れた。
「行き止まり・・・?」
シロヤとバルーシは壁に手をついて調べてみた。
「・・・。」
「・・・!」
しばらく調べていたバルーシは、何かに気づいたようにハッとなった。
「・・・シロヤ様、これは壁ではありません。扉です。」「扉・・・?」
そういうと、バルーシは扉に手をつけて、力一杯に扉を押した。
ゴゴゴゴゴ!!!
「!!!」
バルーシが開けた扉の先にあったのは、まるで迷路のようになった巨大な道だった。
「地下迷宮!?」
「バスナダの地下にこんなのがあったなんて・・・。」
周りを見渡すと、松明の炎が地下の道を照らしていた。
「ずっと燃え続けてたのかしら・・・かなり古い木よ?」
「いや、これは魔法で作られた松明のようなランプだ。」
周りを確認して、四人はゆっくりと地下の道を歩き始めた。
「一体何なのかしら・・・ここ・・・。」
しばらく歩いていると、道の先に広い空間が現れた。
「やけに広いですね。」
「・・・。」
「あ、兄さん。」
ゴルドーは壁に近づいて軽く埃を払い、壁に描かれている何かを見た。
「・・・ここは、どうやら人が住むために作られた空間らしいな。」
「じゃあ・・・ここは居住地区ってことですか?」
ますます謎が深まる空間。シロヤ達も壁に描かれている何かに目をやった。
「・・・ダメ、私達ではこの文字は読めないわ。」
「古代文字か何かでしょうか?」
シロヤとプルーパが話している横で、バルーシは壁を凝視していた。
「・・・我が望むのは更なる繁栄、ここに繁栄の象徴として、地下帝国を築き上げる・・・。」
その場にいた全員がバルーシの方を向いた。
「バ、バルーシさん?」
「あなた・・・読めるの?」
プルーパが驚いたように聞いたが、聞かれたバルーシも驚きの表情をしていた。
「わ・・・私もよくわかりません・・・見ていたら急にイメージが沸いてきて・・・。」
訳がわからずに見合わせている三人を横に、ゴルドーはさらに奥へと進んでいった。
「あ!兄さん待ってください!」
三人は慌ててゴルドーの後を追った。
「ここで行き止まりみたいだな。」
四人がたどり着いたのは、居住地区よりもさらに広い空間だった。
「ゴルドーさん!あれ見てください!」
シロヤが指差した先にあったのは、巨大な壁画だった。
「この壁画の絵・・・何かの戦いの絵かしら。」
「闇を取り巻く魔の姿をした者に立ち向かっている、白い鎧に身を包んだ戦士・・・。」
巨大な壁画には、光を背に剣を構える白い鎧の戦士。そして、闇を背に数多の魔を引き連れている魔の者。
「間違いない・・・これはあの戦いの絵だ。」
「あの戦い・・・?」
「以前話した・・・バスナダという国が出来る以前の戦いだ。」
作戦会議室でゴルドーが話した、英雄とラーカの戦いの絵が、この地下帝国の壁に刻まれていた。
「じゃあこの地下帝国って・・・。」
「その時代に作られたってことね・・・。」
ザッ・・・。
「!!!」
突如聞こえた砂を蹴る音。
全員が振り向くと、その先にいたのは全身鎧の男だった。