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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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故郷

「!」

 バッと上半身を起こすと、そこにあったのは王家の墓だった。

 シロヤはゆっくりと身を起こし、回りを見渡してみる。しかし、さっきまでいた男の姿はどこにもなかった。


バァン!


「シロヤ!」

 勢いよく開けられた扉。その先にいたのはシアンだった。

「急にいなくなってびっくりしたぞ。何故ここにいるのだ?」

「えっと・・・それは・・・。」

 正直に言わない方が察したシロヤは、しどろもどろになりながら言葉を探した。

 それを見たシアンは、少し微笑みながら小さくうなずいた。

「言いたくないのならば言わなくてもいい。私もこれ以上聞かないでおこう。」

 そう言うと、シアンはシロヤの横を通り、一つの墓標の前に来て、ゆっくりと膝をついて頭を下げた。

「お父様・・・お父様が望んだ平和には、まだ時間がかかるかもしれません。しかし、私達は必ずや平和を成し遂げてみせます。」

 墓標に向かって言葉を紡ぐ。

 シロヤはシアンが語りかけている墓標の文字を確認した。そこには、"29代バスナダ国王 グンジョウ"と書いてあった。

「やっぱり・・・あれは夢なんかじゃなかったんだ・・・。」

 そう思ったシロヤは、グンジョウの墓標に向かって小さく手を合わせた。

「・・・。」

 しばらく黙祷を捧げる二人。

 そして、二人は同時に頭を上げた。

「シロヤ、明日、行きたいところがある。同行してはくれぬか?」

「は!はい!もちろんです!」

 シロヤの答えに、シアンは優しく微笑んだ。




 二日目、シロヤはシアンに連れられてある場所にたどり着いた。

「シアン様・・・ここは?」

 二人が来たのは、王家の旗が立てられた祠のような所だった。

「ここは・・・我らは禁断の地と呼んでいる場所だ。」

「禁断の地・・・?」

 そこでシロヤは、グンジョウの言葉を思い出した。

「そう・・・絶対に立ち入ってはならぬ場所だ。」

 そう言ってシアンは、祠の入り口に手を当てながら、悲しげに語り出した。

「ここは・・・私の最初の故郷だった。」

「え?」

「私は孤児だったらしい。母がここに捨てられた私を保護したそうだ。」

「・・・。」

「それを知ったのは・・・私がまだ10歳の時だった。最初は信じられなかったが・・・いや、信じたくなかった。しかし、私が孤児であった記録はいくつも見つかった。」

 何故シアンがそのことを知っていたのか、シロヤは疑問に思った。

「何より最大の証拠だったのが・・・母の手記だった。そこには私が孤児であったということが書かれていたのだ。」

「・・・!」

 そこまで聞いたシロヤは、ローイエが話してくれたシアンの過去の話を思い出した。

「まさか・・・それをシロヤに教えたのって!」

 シアンが口にした言葉は、シロヤが予想していた通りだった。

「レーグだ。」

 シロヤの頭の中で、全ての謎が解けた。あの時、レーグが10歳のシアンの心を砕いたあの日、レーグが何を言ったのかが・・・。

「しかし・・・私は何も変わっていない。」

 複雑な表情をしているシロヤに、シアンは優しく語りかけた。

「孤児だろうと関係ない。私は父や母の愛情を受けて育った。父や母の意志を受け継ぎ、平和な国を作り上げるという思いに変わりはない。」

 決意を秘めたシアンの表情。その表情を見たシロヤは、暗くなっていた表情を自然と明るくした。

「シアン様は強いのですね。」

「私はそなたのおかげで強くなれたのだ。現実と向き合い、未来へと向かう力をくれたのはそなただ。礼を言う。」

 小さく頭を下げるシアン。

「行こう。明日は皆の答えを聞く日だ。」

 そう言って歩き出すシアンに、シロヤは急いでついていく。

「・・・絶対に平和を成し遂げよう。シロヤ。」

「・・・はい!」


 二人は歩き出した。平和を成し遂げると言う絶対の誓いを胸に秘めて・・・。




 そして、夜が明けた。

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