死者
「うぅ・・・何が起こったんだ・・・?」
シロヤはゆっくりと体を起こした。
「ここは・・・何だ?」
周りを見渡すが、どこを見ても真っ白な景色しかなかった。それはさながら、巨大な光によって包み込まれたかのようだ。
「まさか・・・あの男がやったのか・・・?」
王族の墓場で向き合ったあの男。あの男から放たれた光によって、自分は気を失って、今ここにいるのだ。
「・・・。」
握っていた剣に力を込める。
「!!!」
後ろから気配を察知して、シロヤは後ろを振り向いて剣を構えた。
「待て、私は君と戦うつもりはない。」
そこに立っていた男は、シロヤの剣を手で制した。
「初めまして・・・ではないんだっけな。」
男はシロヤに向かって小さくお辞儀をした。
「初めて・・・じゃない?」
シロヤは記憶を回想した。
「・・・!!!」
そしてシロヤは、思い出したかのようにハッと表情を変えた。
「お前は!・・・いや、あなたは!」
男は再び小さくお辞儀をした。
「確か、私と会うのは二度目だったね・・・。」
「いえ・・・会うって言うか、見たことがあるだけですが・・・。」
信じられないと言った表情で固まるシロヤ。
「でも・・・何故・・・あなたがこんな所に・・・あなたは確か死んだはずでは・・・。」
それを聞いた男は、ゆっくりと暗い声で話始めた。
「・・・君だけにでも説明しなければならない。君達が戦う敵、そしてゴルドーが知らない私達の真実を・・・。」
「真実・・・?」
男はさらに続けた。
「私の名はグンジョウ。知っての通り、砂の竜王時代を築いた先代の国王だ。」
シアンの心の中で見た姿とは少し違うが、確かに目の前にいるのはあの時見たシアン達の父親、先代国王の姿だった。
「何故あなたがここに・・・?あなたは確か・・・魔を封じるために命を」
「あぁ・・・確かに私はあの時に命を失った・・・。」
そう言ってグンジョウは、来ていた服をはだけて見せた。
「!!!」
グンジョウの体は、普通では考えられないような姿だった。痩せこけた体で、皮膚は腐敗してボロボロだった。
「これが証拠だ。私の体はいわゆる"生ける屍"。この世には存在してはいけなかった・・・。」
はだけた服を直し、グンジョウはさらに続けた。
「しかし・・・封印が解けて奴が復活した時、何故か私は大地に立っていた。言葉も発することもできない私の傍らにいたのは、ドレッド、ルーブ、そしてもう一人の謎の戦士だけだった。
直感でわかった。奴には何か企みがある。それを遂行する道具として、奴は死者である私をこの世に召還したのだ。」
「奴・・・企み・・・?」
シロヤの呟きを聞いて、グンジョウは説明に入った。
「奴とは君達が戦う敵。かつてこの地を闇で統治した悪魔、名はラーカ。」
「ラーカ・・・?」
シロヤの頭に、バスナダを出ていこうと国境に行ったときが蘇る。
「確かラーカって・・・シアン様の」
「いや、私達はラーカの女だったチラプナと国を救った勇者の子孫。本来ならば正当な王位を継ぐものではなかった。」
グンジョウは少し表情を暗くした。
「私達は勇者とチラプナの封印を代々受け継いでいき、その封印を守ってきた。だが、私の代によって封印が解かれ、ラーカは目を覚ました。」
そこまで聞いたシロヤは、ずっとわからなかった疑問を投げ掛けた。
「その封印の鍵とは・・・一体何なのですか?」
「・・・。」
グンジョウは一瞬言葉をつまらせた後、ゆっくりと口を開いた。
「代々受け継いできた鍵・・・それは鍵として産まれた者が幸せになること。」
「鍵として産まれた者・・・それは一体・・・。」
グンジョウは一息置いて、鍵として産まれた者の名前をシロヤに告げた。
「・・・シアンだ。」
「!!!」
シロヤは耳を疑った。