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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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来訪

「・・・。」

 朝、シロヤは自室にいた。

 シロヤしかいない部屋は恐ろしいほどに静かであり、恐ろしいほどに空気が重かった。

「ダメだ・・・整理できない・・・。」

 ゴルドーの話を聞いてから、シロヤの頭の中の情報は全くの整理がつかなくなっていた。色んなことが起こりすぎて、色んな事実を知りすぎて、シロヤの頭の中は完全に混乱していた。


ガチャ


「シロヤ・・・。」

「・・・シアン様。」

 静寂を破った扉を開く音と共に、シアンが入ってきた。

「・・・浮かない顔をしておるぞ?」

「え?」

 シロヤの顔を見たシアンは、まるで部屋に流れる重い空気を表すかのように曇っていた。

「お!俺は大丈夫ですよ!」

 すぐさま笑顔を浮かべるが、明らかに作り笑顔だ。

「・・・そうか。」

 小さく呟くと、シアンはゆっくりとシロヤに歩み寄り、シロヤの隣に座った。

「シアン様・・・?」

 曇った表情のまま、シアンはシロヤの肩に頭を乗せた。

「・・・すまない・・・。」

「え?・・・何で謝られるのですか?」

 そう聞いた時、シロヤの足にポタッと水滴が落ちた。水滴は勢いを増し、シロヤの足を濡らしていく。

「う・・・うぅ・・・本当にすまない・・・そなたを巻き込んでしまって・・・。」

「・・・。」

 シアンは涙を流していた。流れる涙を拭おうとせず、シアンはさらに言葉を紡いでいく。

「私達の国のことに・・・シロヤを巻き込んでしまって・・・本当に・・・本当に申し訳ない・・・。」

「・・・。」

 嗚咽を漏らし始めるシアン。そんなシアンを、シロヤは軽く抱いた。

「・・・?」

 驚くシアンに、シロヤは抱いたまま語りかけた。

「俺は迷惑だとかなんて思っていません・・・。」

「命を懸ける戦いに巻き込んでしまったのだぞ・・・?」

「・・・絶対に負けません。」

 シロヤはシアンを強く抱いた。

「俺には力強い仲間達がいます・・・皆がこの国を、そしてシアン様を守るために戦っています。だから・・・俺は負けません。皆が生きている、皆が戦っている、それだけで俺は強くなれます。」

 その言葉を聞いたシアンは、涙を押さえることが出来ずにボロボロと流し続けた。

「そなたは優しいのだな・・・見ず知らずとも言える私達のために・・・。」

「・・・シアン様。」

 シロヤはシアンの顔を見つめた。

 しかしその顔は、言うか言わないかを葛藤しているような声だった。

「・・・何だ?」

「あ・・・いや・・・その・・・。」

 シロヤは決意して、ゆっくりと口を開いた。

「一応・・・俺は"国王見習い"ですから・・・見ず知らずって言うわけでは・・・シアン様とは・・・その・・・。」

 そこまで言って、再びしどろもどろになるシロヤ。そんなシロヤに、シアンは涙を流しながら微笑んだ。

「ふふ・・・そうであったな・・・シロヤはもう私の夫、国王となるお方だったな・・・。」

 そう言って、シアンは再びシロヤに胸に身を預けた。


・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


「・・・シアン様?」

「・・・。」

 しばらくシロヤの胸に身を預けていたシアンは、いつの間にか眠りについていた。

 シロヤはゆっくりとシアンをベッドに寝かせた。

「ふぅ・・・。」

 長い時間、シアンはシロヤの胸で泣いていた。時計を見ると、時刻はもう昼になろうとしていた。

 何の気なしに窓を見た瞬間・・・。

「!」

 窓の向こうに見える謎の影。それはゆっくりゆっくりと、どこかを目指しているようだった。

「あの方角・・・!」

 シロヤはすぐさま部屋を出た。




 シロヤは扉を開けた。

「・・・!」

 たくさんの国王達の墓が並ぶ王族の墓場に、見ず知らずの男が立っていた。

「・・・誰だ!?」

 叫ぶと同時に剣を構える。

 男はゆっくりと振り向くと、シロヤの方に向かって手をかざした。


バタン!


「!」

 急に扉が閉まった。一瞬シロヤの気が扉に行ってしまい、隙が出来てしまった。

「しまった!」

 そうシロヤが言った時には、もう男はシロヤに近づき剣を向けていた。

「くっ・・・!」

 剣を強く握り、シロヤは男からの攻撃に耐えようと力を込めた。

 しかし・・・。

「・・・。」

「・・・?」

 男は剣を構えたまま立ち止まっていた。攻撃しようともせず、ただそこに立っているだけだった。

「・・・お前は・・・。」

 そうシロヤが呟いた時、男はゆっくりと口を開いた。

「シアン・・・シアン・・・。」

「!!!」

 男は何度もシアンの名前を呼んでいる。シロヤに緊張が走る。

「お前・・・シアン様の命を狙っているのか!?」

 そう叫んだ時、男が涙を流した。

「!」

 剣を構えたまま涙を流す男。その時、何事かと不思議に思うシロヤに向かって、光が放たれた。

「―――――!!!」

 言葉にならないような叫びを発し、全身から発光する男。

「な!うわぁぁぁ!!!」

 光に包まれ、シロヤは意識を失った。

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