信頼
「・・・。」
「・・・。」
木々に囲まれた家で、フカミとキリミドは40年前の事を思い出していた。
それは、フカミ達にとっては忌まわしき過去でもあり、それと同時にランブウ達にどれだけ叫んでも足りないくらい程の感謝を受け取った過去でもあった。
「リックルの皆だけだったよね・・・私達の・・・森の味方をしてくれたのって・・・。」
「国境警備隊になっても・・・ずっと私達を気にかけてくれたものね・・・。」
ランブウは国境警備隊に配属してからも、ずっとフカミ達を気にかけていた。特に汚染植物が開発されていた砂の竜王時代は、暴走した汚染植物達から森を守るために戦ったりもしていた。
「ランブウさんらしいですよね・・・私達をずっと守ってくれるのって・・・。」
「そうね・・・だから皆ランブウを慕ってついていくのよ。」
そう言って、ランブウ達と共に看病を受けている人達を見た。
彼等ももちろん、ランブウと同じ国境警備隊であり、その中には、あの時ランブウの味方をしてくれたリックルのメンバーと、そのリックルが保護していた孤児達の姿があった。もちろん彼等はランブウを慕い、ランブウと共に国境警備隊へと移った人達だった。
「・・・ランブウさん、何で戻らなかったのかな?国を恨んでたのかな・・・?」
40年間ランブウは国境警備隊を勤め通した。何度も城に戻ってこいという通達はあったものの、ランブウはすべてそれを拒否していた。
「・・・恨んでたかもね・・・。」
フカミは小さく呟いた。
その言葉を聞いて、二人はしばらく黙りこんだ。暫しの間、二人の間に沈黙が走る。
「でも・・・。」
最初に沈黙を破ったのはフカミだった。
「でも・・・今は違うと思う。」
「・・・私もそう思う。」
フカミの言葉に、キリミドも笑顔で答えた。二人がそう思うのには、強い根拠があった。
「何時からかな?ランブウさんが国のために戦おうと思ったのって。」
キリミドが聞くと、フカミは少し微笑みながら答えた。
「分かってるでしょ?シロヤ君がこの国に来てからよ。」
「・・・そうだね。」
二人は同時に笑った。
ランブウは何度もシロヤのため、そしてシアンのために戦った。
それは、過去にあった忌まわしき過去すらも乗り越えられるほどの二人への"信頼"の現れでもあった。
「シロヤさんやシアン様達のためにも・・・。」
「何よりランブウ達のために・・・私達も頑張りましょう。」
フカミとキリミドは拳をぶつけ合った。
「待っててくださいね。シロヤさん。」
「私達はあなたに期待してるのよ?あの時みたいに国を恨むのはもうたくさんだわ・・・だから、シロヤ君達がこの国を変えていってね。」
二人はもちろん、ランブウ達国境警備隊もシロヤ達を信頼していた。
だからこそランブウ達は戦うことを決意した。フカミ達は戦うことを決意した。
過去を乗り越えられるきっかけを作ってくれた仲間達のために・・・。