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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第三章 白の勇者と古の記憶
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反発

「よしよし。いい子だね。」

 森の小動物達に囲まれながら、キリミドは会話を楽しんでいた。

「え?子供が出来たの!?おめでとう!」

 一匹のリスの頭を撫でる。

「あなたは・・・え!?お城に行ったの!?危なくなかった?」

 今度は一匹のキツネの話を聞いて、驚愕の表情を浮かべた。

「・・・それにしても、今日はいつもより動物達が少ないね。皆何か知ってる?」

 キリミドが尋ねると、さっき話していたリスがキリミドに話しかけた。

「うんうん・・・。」

 リスの話を聞くキリミド。話が終わった瞬間、キリミドは驚きの声を上げた。

「えぇ!皆逃げていったの!?何で!?」

 リスが説明に入る。

「本能的に災害を避けるため?それって・・・森に何かが起こるってこと!?」

 その瞬間・・・。


!!!!!!!!


「何!?」

 急に森に響き渡る大きな音。それは、大木が斬り倒された音だった。

「キリミド!」

 その音を聞き付けて、森の奥からフカミがやって来た。その表情は、ただ事ではないといった表情だ。

「どうしたのお姉ちゃん!」

「森の入り口が城の兵士達によって破壊されてるわ!」

「!!!」

 すぐさまキリミドは立ち上がって、周りを取り囲む動物達に向かって叫んだ。

「皆!早くここから逃げて!」

 キリミドに促され、動物達はすぐさま森の奥へと逃げていった。

「キリミド!早く行くわよ!」

「でも何をするの!?」

 フカミは強く拳を握って叫んだ。

「決まってるでしょ!?止めにいくのよ!」




 森の入り口では、城の兵士達が総出で森の木々を斬り倒していた。その奥には、大臣や重装備をした兵士達に守られる国王の姿があった。

「進め!もっと地を拡大せよ!」

 国王からの命令によって、さらに兵士達の作業の手が早まる。




「やめてください!」

「あなた達!いい加減になさい!」




 木々を斬り倒す兵士達の前に、フカミとキリミドは両手を広げて立ちふさがった。

「何だお前達は!」

 大臣が二人を指差した。

「私達はこの森に住んでいる精霊です!」

「私達だけじゃないわ!この森にはたくさんの動物達が住んでいるのよ!今すぐ開発を中止しなさい!」

 しかし、大臣は二人の話を聞かずにすぐさま兵士達に作業を促した。

「お願いです!今すぐやめてください!罪のない動物達の住みかを奪わないでください!」

 キリミドの叫びは、すぐさま再開した兵士達の作業の音によってかき消された。




「待て!!!」




 突如後ろから聞こえた声。その場の全員が声が聞こえた方を振り向く。

「国王様!今すぐ開発をやめてください!」

 そこにいた男は力強く叫んだ。

 それに対して、大臣は顔を真っ赤にして男を指差した。

「またお前か!これ以上無礼な真似は許さぬぞ!ランブウ!」

 男―――ランブウは、大臣の言葉を無視して、フカミとキリミドの前に仁王立ちした。

「これ以上の開発は俺が許さねぇ!」

 ランブウは流れる動きで懐から拳銃を取り出し、作業をしている兵士達に向かって銃口を向けて放った。

「ぐわぁ!」

「うぁ!」

 ランブウが放った閃光音響弾は、作業をしていた兵士達をどんどんと倒れさせていった。

「うぬぬぬぬ!」

 その様子を見ていた大臣は、すぐさま国王の周りにいた重装備の兵達をランブウにけしかけた。

「ちっ!」

 さすがに強敵だと踏んだランブウは、背中の散弾銃を握って構えた。

「!!!」

 ランブウが今にも撃たんとしている時、フカミが叫んだ。

「ランブウ!後ろ!」


ガッ!


「!?」

 足を誰かに掴まれた。

 見ると、さっき気絶させた兵士の一人だった。

「!しまった!」

 ほんの一瞬、足元を確認したことによって、ランブウに一瞬だけ隙が出来た。それを兵達は見逃さなかった。

「ぐっ!」

 すぐさま繰り出される攻撃。反撃しようと構えるが、多勢に無勢とはまさしくこの事。あっという間にランブウは兵達によって気絶させられてしまった。

「いやぁ!ランブウさん!」

「あなた達!絶対に許さないわ!」

 ランブウを助けようとフカミとキリミドは飛び出すが、すぐさま兵達によって足蹴にされてしまった。

「作業を続けろ!」

 再び始まる作業。

「いやぁぁぁ!もうやめてください!」

「お願い!やめて!これ以上森を傷つけないで!」

 二人の叫びを聞く人はいなかった・・・。




 開発が始まった一週間後、開発に乗り出した国王は倒れ、その息子である、後のシアン達の父である先代国王に王位が継承された。

 先代国王は未開拓地帯の開発には反対だったため、継承と同時に開発は中止された。

 しかし、ランブウは先々代国王の怒りを買った罰として、リックルから追放。国境警備隊へと左遷されてしまった。

 先代国王は元の地位に戻ることを勧めたが、ランブウは40年間、国境警備隊を止めなかった・・・。

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