反発
「よしよし。いい子だね。」
森の小動物達に囲まれながら、キリミドは会話を楽しんでいた。
「え?子供が出来たの!?おめでとう!」
一匹のリスの頭を撫でる。
「あなたは・・・え!?お城に行ったの!?危なくなかった?」
今度は一匹のキツネの話を聞いて、驚愕の表情を浮かべた。
「・・・それにしても、今日はいつもより動物達が少ないね。皆何か知ってる?」
キリミドが尋ねると、さっき話していたリスがキリミドに話しかけた。
「うんうん・・・。」
リスの話を聞くキリミド。話が終わった瞬間、キリミドは驚きの声を上げた。
「えぇ!皆逃げていったの!?何で!?」
リスが説明に入る。
「本能的に災害を避けるため?それって・・・森に何かが起こるってこと!?」
その瞬間・・・。
!!!!!!!!
「何!?」
急に森に響き渡る大きな音。それは、大木が斬り倒された音だった。
「キリミド!」
その音を聞き付けて、森の奥からフカミがやって来た。その表情は、ただ事ではないといった表情だ。
「どうしたのお姉ちゃん!」
「森の入り口が城の兵士達によって破壊されてるわ!」
「!!!」
すぐさまキリミドは立ち上がって、周りを取り囲む動物達に向かって叫んだ。
「皆!早くここから逃げて!」
キリミドに促され、動物達はすぐさま森の奥へと逃げていった。
「キリミド!早く行くわよ!」
「でも何をするの!?」
フカミは強く拳を握って叫んだ。
「決まってるでしょ!?止めにいくのよ!」
森の入り口では、城の兵士達が総出で森の木々を斬り倒していた。その奥には、大臣や重装備をした兵士達に守られる国王の姿があった。
「進め!もっと地を拡大せよ!」
国王からの命令によって、さらに兵士達の作業の手が早まる。
「やめてください!」
「あなた達!いい加減になさい!」
木々を斬り倒す兵士達の前に、フカミとキリミドは両手を広げて立ちふさがった。
「何だお前達は!」
大臣が二人を指差した。
「私達はこの森に住んでいる精霊です!」
「私達だけじゃないわ!この森にはたくさんの動物達が住んでいるのよ!今すぐ開発を中止しなさい!」
しかし、大臣は二人の話を聞かずにすぐさま兵士達に作業を促した。
「お願いです!今すぐやめてください!罪のない動物達の住みかを奪わないでください!」
キリミドの叫びは、すぐさま再開した兵士達の作業の音によってかき消された。
「待て!!!」
突如後ろから聞こえた声。その場の全員が声が聞こえた方を振り向く。
「国王様!今すぐ開発をやめてください!」
そこにいた男は力強く叫んだ。
それに対して、大臣は顔を真っ赤にして男を指差した。
「またお前か!これ以上無礼な真似は許さぬぞ!ランブウ!」
男―――ランブウは、大臣の言葉を無視して、フカミとキリミドの前に仁王立ちした。
「これ以上の開発は俺が許さねぇ!」
ランブウは流れる動きで懐から拳銃を取り出し、作業をしている兵士達に向かって銃口を向けて放った。
「ぐわぁ!」
「うぁ!」
ランブウが放った閃光音響弾は、作業をしていた兵士達をどんどんと倒れさせていった。
「うぬぬぬぬ!」
その様子を見ていた大臣は、すぐさま国王の周りにいた重装備の兵達をランブウにけしかけた。
「ちっ!」
さすがに強敵だと踏んだランブウは、背中の散弾銃を握って構えた。
「!!!」
ランブウが今にも撃たんとしている時、フカミが叫んだ。
「ランブウ!後ろ!」
ガッ!
「!?」
足を誰かに掴まれた。
見ると、さっき気絶させた兵士の一人だった。
「!しまった!」
ほんの一瞬、足元を確認したことによって、ランブウに一瞬だけ隙が出来た。それを兵達は見逃さなかった。
「ぐっ!」
すぐさま繰り出される攻撃。反撃しようと構えるが、多勢に無勢とはまさしくこの事。あっという間にランブウは兵達によって気絶させられてしまった。
「いやぁ!ランブウさん!」
「あなた達!絶対に許さないわ!」
ランブウを助けようとフカミとキリミドは飛び出すが、すぐさま兵達によって足蹴にされてしまった。
「作業を続けろ!」
再び始まる作業。
「いやぁぁぁ!もうやめてください!」
「お願い!やめて!これ以上森を傷つけないで!」
二人の叫びを聞く人はいなかった・・・。
開発が始まった一週間後、開発に乗り出した国王は倒れ、その息子である、後のシアン達の父である先代国王に王位が継承された。
先代国王は未開拓地帯の開発には反対だったため、継承と同時に開発は中止された。
しかし、ランブウは先々代国王の怒りを買った罰として、リックルから追放。国境警備隊へと左遷されてしまった。
先代国王は元の地位に戻ることを勧めたが、ランブウは40年間、国境警備隊を止めなかった・・・。