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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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精霊

 プルーパが放った短剣は、枝の本体に直撃した。

 その瞬間、枝が苦しむように暴れまわった。周りの木々をなぎ倒すかのように、枝は木の幹にぶつかっては落ちていった。

 プルーパとシロヤは、枝を何とか避けながら先に進もうと走る。

「・・・!」

 先に走るプルーパを追うシロヤ。暴れまわる枝の本体の横を走り抜けようとした瞬間、シロヤは森の先に人の姿を見た。

 奇妙な人だ。羽衣のように透き通ったドレスに身を包んだ少女。最大の特徴は、頭の上には綺麗で大きな花があり、少女の肌が森のように綺麗な緑色だということだ。

 少女は走り抜けるシロヤを見つめていた。そして少女の姿を確認したシロヤ。二人の目が合った瞬間、少女に向かって暴れまわる枝が襲いかかった!

「あ!危ない!」

 シロヤは叫ぶと同時に逆走した。自分の命が危ないと思ったのは、少女に向かって走り出してからだった。

「シロヤ君!?」

 異変に気づいたプルーパが後ろを確認して叫んだ。

 枝は高速で少女に向かって伸びる。シロヤも全力だが、枝の方が速かった。間に合わないと悟ったシロヤは、我が身を弾丸にするように頭から飛び込む。全力で地面を蹴って少女に手を差し伸べる。

 瞬間、枝は少女がいた先の木を幹を貫いた!


「シロヤ・・・君?」

 プルーパは走って確認に向かった。

「いてて・・・。」

 シロヤは枝を交わして、少女を胸に抱いたまま倒れていた。

 ほっと胸を撫で下ろすプルーパだったが、直後、さらに枝がシロヤと少女に向かって伸びた。

「シロヤ君!危ない!」

 倒れたまま動かないシロヤに伸びる枝。プルーパが短剣を構えた直後、枝はその動きを止めた。

 見ると、少女が枝に手を伸ばしていた。まるで少女の言うことを聞いているかのように、枝は少女の前で止まっていた。

「あなた少し・・・おいたが過ぎたわよ?」

 少女の手の先が淡く光ったと同時に、枝、そして枝の本体の木が瞬時に枯れ、腐り落ちていった。


「いてて・・・何があったんだ?」

 起き上がったシロヤは、腐り落ちた枝を見て呟いた。腕を押さえているシロヤに、少女はやさしく声をかけた。

「私を守ってくれてありがとうね。おかげで助かったわ。」

 少女はシロヤの腕を軽く触る。走ってシロヤの元にやって来たプルーパが、少女に声をかけた。

「あなたもしかして・・・精霊?」

「えぇ、そうよ。私を助けてくれるなんて物好きな人ね。」

 少女は軽く笑ってシロヤを見つめた。

「精霊?普段は姿を隠していて人間には見えないって聞いていたけど・・・?」

「この辺は人の通りが少ないし、姿隠すのって結構疲れるのよね。」

 少女はクスッと笑ったのち、思い出したように呟いた。

「でも最近、変な男がよくここを通るのよね。なんか呟きながら奥の方に進んでいってるわよ。」

「怪しい男!?その男、どこに向かってるかわかる?」

 プルーパは食いかかるように少女に迫った。おそらく、怪しい男というのはレーグのことだろう。

「わかるわよ?行きたいんだったら案内するわよ?」

「本当に!?じゃあお願いします!」

 シロヤは少女に頭を下げた。その瞬間、腕に激痛が走った。さっき少女を助けたとき、腕から着地してしまったため小枝が刺さってしまったのだろう。

「あなた・・・怪我してるわよ?まずはその怪我を治してあげるわ。」

 そう言うと、少女の目線の先、森の奥から透き通るドレスに身を包んだ少女がやってきた。前髪で目が隠れていて、助けた少女よりも肌の色が薄い。森のような深い色ではなく、草木のように淡い緑色だった。

「あぁキリミド、ちょうどよかったわ。この人の腕を治してあげて。」

 そう言うと、少女はシロヤの腕に手をかざした。少女の手の先が淡く光ると、シロヤの腕から痛みが無くなっていった。光が完全に消えると同時に、シロヤの腕は正常に動くようになった。

「治りましたがあんまり無理はしないでくださいね。」

 少女はシロヤの腕を撫でた。

「わかった、ありがとう。」

「じゃあ行くわよ。キリミド、あんたも来なさい。」

 少女二人を前にして、シロヤとプルーパは森の奥を目指した。

「あぁ、紹介がまだだったわね。私はフカミ、よろしくね。」

「えっと・・・私はキリミドっていいます。姉を助けていただきありがとうございます。」

「えぇ!二人って姉妹なの?」

「別に珍しくないわよ。精霊にだって兄弟姉妹はいるものよ。」

 驚くシロヤに、フカミとキリミドはクスクスと笑った。


「見えたわよ。あれが怪しい男が毎回来ている場所よ。」

 森の奥深く、太陽の光が届かない暗い森の中に、大きな教会が建っていた。

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