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Sand Land Story 〜砂に埋もれし戦士の記憶〜  作者: 朝海 有人
第一章 白の青年と砂の国
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入国

「後は・・・バスナダ国だけか。」

 森の中の一本道に、青年が馬に乗って歩いていた。青年の名はシロヤ。どこにでもいる一般的な青年だ。背丈は一般男性と同じくらいで、背中に細身の剣を携えていた。

「バスナダに行ったら名物料理を食べて一泊しようか。スタンプは明日にしよう、クロト。」

 クロトと言うのは、彼の相棒とも言える黒い毛の馬の名前だ。決して足の早い名馬という訳でもない、単なる一般的な馬だ。クロトは、シロヤが初めて馬の出産に立ち会った時に産まれた馬だ。シロヤにとって、クロトは弟のような存在なのだ。

「さぁクロト、バスナダの国境が見えてきたぞ。」




「バスナダ国の入国手続きをお願いします。」「おぉ、久々の入国者か。歓迎するぜ。」

 国境にいた中年男性が、書類に色々と書き始めた。

「若いのに世界を巡る旅か・・・流浪の旅かい?」

「いえ、国中のスタンプを集めているんです。」

 国にはそれぞれ国を表すスタンプがあり、それを集めて世界を旅する人も少なくはない。シロヤもその一人なのだ。

「んで、今スタンプはどれくらい集まったんだい?」

 そう聞かれたシロヤは、一枚の紙を広げた。

「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・ほぉ!バスナダ以外のスタンプは揃ってるのか!?いやぁ〜この国が最後たぁ〜嬉しいねぇ〜!」

 中年男性は書き終えた紙をシロヤに渡した。

「まぁ砂漠ばっかの国だけどゆっくりしていきな。俺の名前はランブウだ。なんかあったらここに来な。」

「ありがとう、ランブウさん。」

 シロヤとクロトはゆっくりと進みだした。




 砂漠の国だが、国境付近はまだ森地帯だ。森の中の一本道を歩くシロヤとクロト。

「とりあえず宿を見つけよう。確かこの国の名物は甘砂まんじゅうと・・・。」


キャーーー!!!


 森地帯に響く女性の悲鳴。シロヤは名物料理の思考を止めて、クロトの手綱を引いた。

「こっちの方から聞こえた!行くぞクロト!」


 全速力で走るクロト。走りながら、シロヤは背中の剣を抜いた。

「見えた!アレだ!」

 シロヤの目線の先に、大きなトカゲが人を襲っている。襲われている女性は、恐怖でさっきのような悲鳴をあげられないみたいだ。大きなトカゲはバシリスク。森地帯に住む低級の魔物だ。

「バシリスク程度ならいける!行くぞクロト!」

 シロヤは剣を低く構え、バシリスクを狙う。狙われたバシリスクは足音でシロヤ達に気付き、すぐさま戦闘モードに入る。牙を剥き出しにし、今にも飛びかからんとしている。

「・・・勝負!」

 飛びかかってきたバシリスクを交わし、後ろから剣を背中に突き刺す!


ギシャアアアアア!!!


 バシリスクは剣を背中に刺されたままの状態で奇声をあげ、そのまま動かなくなった。


「ふぅ・・・なんとかいった・・・。」

 剣に刺さっているバシリスクを抜き捨て、襲われていた女性に目を向ける。凛とした目は女性の芯の強さを感じる。

「助けていただきありがとうございます!」

 深々と頭を下げ、礼を述べる女性。来ている服は上等な者で、彼女の裕福さを物語っていた。

「いえ、この辺は危険ですので気を付けてください。しかし何でこんなところに一人で?」

 女性は目を閉じて黙った。言葉を考えているような感じだ。

「さっきこの国に帰ってきた、だから・・・。」

「よかったら安全なところまで一緒に行きませんか?」

 女性はシロヤの言葉を聞くと、フッと軽く笑って走り出した。

「結構です!もう安全な場所に来ましたから!」

 そう言って女性は走り去っていった。その先には、砂漠と行き交うたくさんの人々の姿があった。

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