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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第2章 『餓鬼』の騒乱
71/123

16話 それぞれの思いが交差するとき

 ■■■


 「ああああああああああ!」


 アテネは自分に無詠唱で加速魔法を掛け、瞬時にクロワールとの距離を詰めた。クロワールの懐に潜り込んだアテネはグリフィンを袈裟懸けに思いっきり振り切った。


 「っと」

 ギンッと音を立てて、アテネのグリフィンがクロワールの瞬時に掲げられた銀色に光る本来のものとは様相の違うスカルペルに受け止められた。


 「ふんっ、『竜骨』!」

 アテネは攻撃が受け止められるやいなや、左手をクロワールへ突き出した。アテネの左手は金色に輝いて、クロワールに触れると同時にクロワールの体を吹き飛ばした。



 「魔力伝導良し、っと」

 クロワールが吹き飛んだ先を確認することなく、後ろにいる麗奈へ振り返った。


 麗奈は両手に持つ2丁の魔法拳銃に魔力を込め、いつでも発射できるようにトリガーに指をかけた状態で構えていた。

 麗奈の目には、それまでを振り切った決意に満ち溢れていた。


 「麗奈、あなたは『殺戮の少女(キリング・キティ)』を抑えなさい。あっちの白衣の犬は私が殺る」

 「わかりました、お姉さま」



 麗奈は、ゆらりゆらりと体を震わせながら怨嗟の慟哭を上げる友人の成れ果てた魔女に向かって2丁拳銃を構えた。


 「オオオオオオオオオオオオォオオオオオオォオオオオオオオオオオ!」

 「凛、ごめんね」



 麗奈は迷うことなくトリガーを引いた。

 「魔力弾『炎恨弾』!」


 魔力で構成された弾丸が何十発も吐き出され、『殺戮の少女(キリング・キティ)』の体に殺到した。


 「オオウゥ、オオゥオオオオオオオオオオオオオオオオゥォ!」

 『殺戮の少女(キリング・キティ)』は両手の刀を操り、迫り来る弾丸をすべて切り捨てた。


 「次・・・魔力弾『雷迅弾・フルカスタム』!」


 麗奈は2丁拳銃をクロスさせて豪速で飛ぶ弾丸を放った。


 「オアオオオゥア!」

 『殺戮の少女(キリング・キティ)』は先程までと同様に目にもとまらぬ速さで飛ぶ弾丸を何事もないかのように切り捨てた。

 しかし、その弾丸は切られるや否や辺り一帯に電撃をまき散らした。


 「次に、魔力弾『光塵弾・全力掃射』!」

 麗奈の周りにいくつもの拳銃が現れ、それらが一斉に弾丸を放った。


 『殺戮の少女(キリング・キティ)』は先程受けた電撃が目眩ましになって、光の弾幕を視認することができずその身に弾丸を受けた。


 「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアゥォァァァァァ!」


 「ふぅ、はぁ・・・はぁ・・・」

 麗奈は一気に魔力を使ったため、体がふらつきを覚えたことに気付いた。

 「とにかく、体力減らして瘴気を減らさなきゃ・・・!」


 麗奈は『殺戮の少女(キリング・キティ)』を倒すのではなく無力化することを考えていた。出来ればかつての親友を切り捨てたくなかったのだ。

 一般的に瘴気に対し、光属性魔法は有効である。囮の弾を使って隙を狙って光属性の銃弾を叩き込むことによって『殺戮の少女(キリング・キティ)』の瘴気を打ち払おうとした。


 しかし・・・

 「アァあアあゝアア!コロスコロスコロス・・・!」


 『殺戮の少女(キリング・キティ)』は体の至るところから黒く染まった血を流し、目を血走らせて刀を振り回しながら咆哮を上げた。

 すでに正気を失い、ただ殺戮だけを求める獣と化していた。


 「凛・・・!やっぱり、もう無理なの?」

 「ハヤクワタシ二チヲ!」

 「・・・悔しいわ」


 麗奈は刀を振るう『殺戮の少女(キリング・キティ)』からバックステップで攻撃を避けていく。避けきれず、刀が服を少しずつ切り裂いていくのを、麗奈は内心を暴れまわる恐怖を押さえ付けながら隙を窺った。


 「力がないのがこんなに悔しいものか!」


 『殺戮の少女(キリング・キティ)』が2刀を振り切ったところで、麗奈はバックステップを止め、加速魔法を使って『殺戮の少女(キリング・キティ)』の懐に潜り込んだ。


 「『光塵弾』零距離発射!」


 麗奈は『殺戮の少女(キリング・キティ)』の胸に押し付けた拳銃のトリガーを引いた。銃から眩い光が火を吹いた。


 「ラァアガがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!」


 『殺戮の少女(キリング・キティ)』は一際大きな叫び声を上げて後方へ吹き飛んだ。

 銃を発射した麗奈は、息を荒らげながらその場で2丁の銃を構えたまま呼吸を整えた。


 (これで終わってくれたらいいんだけど・・・・・・)


 しかし、麗奈の願いは再三に渡って叶わず、『殺戮の少女(キリング・キティ)』はゆらりゆらりと動き始めた。


 「どうすれば・・・いいの?」





 一方、アテネはというと・・・・・・


 「ねぇ、いい加減にくたばりなさい!」

 「そう言われて、はいそうですかって、訳にいか、ないからって危なっ」


 ひゅんひゅんと音を立てながらグリフィンを振り回すアテネと、それを紙一重で避けていくクロワールが一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 「っと、隙あり」

 「ふんっ」


 クロワールが突き出したスカルペルを、アテネは左手で受け止めた。左手に刃が刺さり血が流れ出たが、アテネは気にすることなく右手のグリフィンでクロワールの首を刈り取った。

 しゅぱっと綺麗に首と胴体を切り分け、そこから黒々とした血が噴水のように吹き出した。あるべき場所から離れた首は少し離れた地面にべしゃりと落ちた。


 アテネは顔を顰めることなく、喜悦に顔を歪ませた。そして、すぐに顔を引き締め、クロワールの体を突き飛ばし、距離を取った。なぜなら、地面に落ちたクロワールの首がニタリと笑いだし、アテネの背筋がすっと冷えたからだった。


 「やれやれ、こんなところでこうなるとは思ってもなかったけど、なかなかに気持ちが悪いねぇ」

 クロワールの犬面の首はニタニタと笑い、それまでクロワールの体だったものは黒い霧となって、首の周りに集まった。


 「こういう時に何と言うんだったっけね。あぁ、そうだ。

 この私は変身するたびにパワーがはるかに増す。そしてその変身を私はあと二回も残している。この意味がわかるな?」


 黒い霧は一つの姿を作り出した。


 「どうですか、この私の姿は」


 そこには先程の一回りも二回りも大きな狼が2本の足で立ち、爪と牙を尖らせ、アテネを喰いちぎろうとばかりに立っていた。その体から溢れる力は先程のものよりずっと大きく、重苦しかった。


 「まったく、面倒なことね」


 アテネはその身に溢れる魔力を練り直し、右手に構えるグリフィンに送り込んだ。


 「『起動(ブート)憤怒(イラ)』!」


 アテネの言葉をキーにして、グリフィンは赤く染まり、その刃に備える力を倍増させ、刀身が一回り大きくなった。


 「私には守るべき信念があるの。そのためにも、貴様には死んでもらわないと」


 アテネは目に怒りの想いを浮かべ、グリフィンを中段に構えた。


 「それならば、私にもありますよ。私はまだまだ研究すべきことを抱えていますからね。そのためにも、邪魔な貴女には消えてもらわないと」


 クロワールは爪でいつでも相手を切り裂けるよう水平に構えた。




 「「いざ、尋常に!」」


 アテネとクロワールは同時に相手に向かって飛び掛かるのだった。





 

なかなか終わんないですね。次話は11月3日0時を予定しています。

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