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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第2章 『餓鬼』の騒乱
66/123

11話 白雷の能力者(1)

 ■■■


 一方、真理はというと。

 すでに家に着き、思いのままに過ごしていた。真理はリビングで文庫本を読んでいた。

 


 ピーンポーン


 来訪者の存在を告げるチャイムが鳴り、真理は文庫本に栞を挟み机の上に置いた。そして席を立ち玄関へ向かった。


 「はーい」

 玄関の覗き穴から玄関を見た真理の目には一人の黒づくめの男がいるのが映った。どうやら自分と同じくらいの歳だろうと感じた。


 「すみません、人を探しているのですが・・・手伝って頂けませんか?」

 丁寧で実直さが表れている言い方に真理は玄関の扉を開けた。


 「はい、なんでしょう」

 「ありがとうございます。俺の名前は黒岩と申します。すみません、この人を知りませんか?」

 黒岩が差し出した写真を真理は受け取った。


 その写真には中肉中背のなんともさえないような少年・・・神内(じんない)真理(しんり)が写っていた。

 真理は驚き戦くものの、今の姿は少女であり嫌な雰囲気を感じ取って逃げ出すよりも先に情報収集しておくべきだと判断した。傍から見ると百面相でもしていそうな表情だっただろう。

 しかし、黒岩は気付くことはなく真理に話しかけていく。


 「この人、神内(じんない)真理(しんり)っていう名前なのだそうですが、心当たりありませんか?」

 「・・・・・・わかりません」


 真理は素知らぬ顔をしながら嘘を吐いた。

 黒岩は顔を上げた。


 「・・・そうか。あれっ、君を・・・どこかで見たことある気がする」

 「そうですか?ここに住んでいますからどこかでお見かけしたのかもしれませんね。それで、なぜその人を探していらっしゃっているのですか?もしもよろしかったら教えていただけると有難いのですが。探す手伝いになるかと」

 その真理の言葉に、黒岩は少したじろいだ。


 「あぁ・・・そのなんだ俺の知り合いなんだ。急に連絡が取れなくなったからこうして聞き込んでいるというわけなんだ。この辺に住んでいるらしいから」


 “嘘だ”と、真理は思った。第一、真理にこんな知り合いはいない。ましてこの黒岩の不審な態度は明らかに嘘であることが分かった。それと同時に黒岩が嘘をつかなければいけないのか思い当たった。

 魔法を無力化できる力を持つ神内(じんない)真理(しんり)を追い求め、嘘をついてでも探し出さなければいけない理由。それはおそらく・・・


 「ちょっといいですか?」

 黒岩の言葉に真理は思考を一旦停止させて耳を傾けた。


 「何か・・・君から彼の“匂い”を感じる。もしかして、君が神内(じんない)真理(しんり)?」

 「いえ、違います」

 真理は嘘はつかなかった。“今”は神内(じんない)真理(まり)だ。

 黒岩は目を瞑り、意識をどこかに合わせる。


 「・・・わかった。君が持っているんだね。少し外までついてきてもらおうか」

 「なぜ、私があなたについて行かなければいけないのですか?あなたの真の目的はなんですか?」

 「・・・めんどくさい」

 「?」

 「いいからついて来い!」

 黒岩はいきなり真理の首元を掴むと外に飛び出した。

 真理は必死に抵抗するものの、姿が少女であるためほとんど抵抗できなかった。




 黒岩は空を飛び、真理を抱えて近くの河原に着地した。


 「・・・まったく、何なんですか?」

 いきなり連れて行かれた真理は黒岩に敵意の視線を浴びせた。

 「ここに連れてきたのは邪魔が入らないようにするため。俺の目的は君が持っているその力だ。まさか君が持っているとはな・・・神内(じんない)真理(しんり)が持っているとの話だったが」

 「なるほどね。まぁ、私が神内(じんない)真理(しんり)なんだけどね」

 「なっ、なんだと・・・」

 「ちょっといろいろあって女の子になっちゃたんだけど。で、あなたは私から力を奪うわけね。でもどうやって?」

 黒岩はズボンのポケットから石を取り出す。

 「これを使えば君からその力を奪える」

 「そう・・・でもやすやす渡さないわ」

 「そうか、ならば戦うしかないな。見た目は女の子だが、あの力を持つ者なら躊躇はしない」




 真理は小さな拳をぎっちり握り締め、対する黒岩はどこからか出した剣をすらりを抜き、中段に構えた。黒岩の構える剣は西洋風の線対象なものではなく、片方に反りの付いたどちらかといえば刀といったほうが近いようなものだった。その剣は黒岩の髪や服の黒色と対照的に銀色に輝いていた。


 しばし微動だにしない二人の間を風が吹き付ける。


 先に動いたのは真理だった。

 真理は足元に力を込め、黒岩へ飛び出していく。


 黒岩は銀色に光る刃を横にずらして真理を待ち受けた。


 そして真理は拳を黒岩に突き出した。

 「『アイギス』」

 

 拳は、拳を受け止め切り裂こうとする刃を押し退けるようにして突き進み、黒岩の体に突き刺さった。


 「ぐはっ」

 黒岩は体を少し九の字に折り曲げた。真理は追撃を加えようともう片方の腕で殴りかかった。


 

 「っ!」

 寸でのところで黒岩は地面に転がり後ろに大きく飛ぶことにより距離をとった。



 「おいおい、まさか物理攻撃まで無効化してくるとはな」

 「準備もなしに突撃をするように見えたかしら」

 「いいや、そこまで硬いとは思わなかった」

 黒岩は拳を受け止めようとした刃を見ながら言った。


 「こちらからも行かせてもらう」

 黒岩は剣を右手に持ち、空いた左手を広げ、真理に向けた。


 「喰らえ・・・」

 その言葉が真理の耳に届くよりも先に真理は銀色の何かが目の前に殺到してきたのが見えた。


 「うわっ!」

 直接的なダメージはないものの銀色の何かがぶつかった箇所がびりびりと痺れてきたのだった。


 「なんだ・・・?」

 「それは俺の能力『白雷』だ」

 「『白雷』?」

 「そう、名前のとおり白色の雷のことだ。これは普通の雷とは違って、桁外れの力を発揮する。いくら君が無効化する力を持っていたとしてもこの白雷を完全に無効化は出来ないだろ?」

 「・・・なるほど、そうだったのか」

 真理は理解した。

 真理のもつ力『シールド』はあらゆる魔法・能力を弾く。しかしこれは限度があり、あまりに大量・重いものは弾ききれずに肉体へダメージを与える。魔法や能力に対して絶対的な優位に立っているようでそうでもないのだった。


 「さぁ、喰らうといい 『雷槍』」

 黒岩の背後に5本の光を放つ細長いものが現れた。

 黒岩はそれを掴むと次々と投げ付けてきた。

 どういう理屈なのかその『雷槍』は雷の塊のはずなのに実体を持ち、空気を切り裂きながら真っ直ぐ真理へ飛んできた。


 「『アイギス』!」

 真理は手の平で『雷槍』を掴み取り後ろへ投げ捨てた。


 「なっ・・・!」

 黒岩はその光景に思わず声を漏らす。


 驚きのあまり力の加減を間違えたのかいくつもの『雷槍』の形が崩れていく。


 「ちっ!」

 黒岩は『雷槍』をいくつも束ね、真理に放つ。


 その電撃はあまりに大きく、真理はなんとか受け流そうと両手を揃え、魔力をかき集めた。


 「構わず暴れろ!」

 黒岩の操作により『雷槍』の形状が崩れ辺り一帯に雷をまき散らした。



 「あああああああああああああああああああああああああああああ」

 至近距離にいた真理はその雷を一身に浴びる。黒岩は瞬時に離脱したが、真理は逃げることができなかった。瞬時の判断で『アイギス』を全身に張り巡らそうとしたのだったが、間に合わなかった。





 「あ・・・はぁ・・・あ・・・」

 『雷槍』が持っていたエネルギーを全て放出し終わったあと、そこには服が破れかぶれになっていて意識朦朧とした真理がいた。

 そこに黒岩が再び姿を現す。

 「悪かったな、そこまでするつもりはなかったんだ」

 黒岩はバツの悪そうな表情を浮かべながらポケットから黒光りする石を取り出した。


 「だけど、都合がいい。俺が恵理を助けるために、使わせてもらうよ。その“神のごとき力”をな」









次話も真理×黒岩戦です。

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