挿入話 変異する少女
*注意:この話は人によっては嫌悪される話です。微R-18とでもいいましょうか。ですから、18歳に満たない方やグロテスク表現を好まない方は読まないことをお勧めします。別のこの話を読まなくても話の流れはつかめます。読んで気分を害されても保証できません。
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とある一室にて。
その部屋は薄暗く異臭を漂わせていた。せいぜい学校の教室ほどでしかない空間。そこに様々な機材が所狭しと置かれていた。
そこにはいつも一人の少女がいた。彼女の名前は、彼女自身忘れてしまっていた。代わりに周りの“人”からは、ラボアと呼ばれていた。それが本名だったのかはわからない。彼女にとって、名前なぞすでにどうでもいいことだったのだから。
彼女、ラボアは鎖に繋がれていた。服は偶然というべきか破られておらず、ピンク色のフリフリのついたワンピースだった。埃がこびりついてはいなく、まるで新品であるかのようだった。
ラボアの顔は諦めと絶望に彩られ、心底疲れ果てたような表情で空虚を見つめていた。しかし心の奥底で夢見ていた。自分がいつかここから逃げ出せるかもしれない、白馬の王子様のように颯爽と自分を助け出しに来てくれるかもしれないと。
そして誰も助けに来てくれないまま日が経っていく。この部屋に拘束され時々やって来る“人”に辛い思いをさせられ粗末な食事を食べ一日が終わる。いつになったら終わりを向かえることができるのか。
ラボアの虚ろな目から一粒の涙がこぼれ落ちた。
「ふむ、もうそろそろですね」
部屋の様子をカメラ越しに除いていた“男”は呟いた。その“男”は使い古された白衣を着崩しながら着ていて、眼鏡をくいっと持ち上げながら、黒々とした長い鼻をひくつかせていた。“男”は一見すると白衣を着た犬だった。その実態は鬼だった。
「侵食度もすでに半分を越えてますし、何よりもう精神が壊れかかっている。前の実験体と比べて体調は良好ですし、隊員からの受けもいい。あと数日で完全に変異します」
「そうか、それは楽しみだ」
白衣を着た犬の言葉に向かい側に座っていた“男”は興味深そうに頷いた。その“男”もまた鬼だった。
「本当に面白い話だよな、我等を狩るはずの魔法少女が我等と同じ存在へ堕ちるなんてな」
「全く同感です。まだ成功体はいませんが、もしもこれで成功すれば私くらいと同じくらいの力を持つと推測されます」
「はっはっは、できるものなら先に“喰って”みたいところだが、それだと勿体ないな。せっかくの手駒になりうる存在だ、存分に暴れさせろ」
「はっ」
「それと、あの個体のことはお前に一任してある。壊さない程度ならお前の好きに扱え」
「ありがとうございます」
白衣の犬は深々と頭を下げた。
「私はヤッてないが、どうなんだ?」
「新鮮な体験ですよ、塗り潰していく感覚が。一度ヤッたら病み付きになります」
「そうかそうか、ほどほどにな」
「はっ」
「それでは私は戻る。無事変異したら連絡しろ」
「了解しました」
黒いスーツに身を固めた“男”は部屋を後にした。一人監視部屋に残った白衣の犬はにやにや笑みを浮かべた。
「さて、餓鬼様の許しを得たことだしお楽しみの時間としますか」
部屋のドアをキィと音を立てて白衣の犬は隣の部屋へ向かった。
そして数日後。
その部屋に捕われていた少女の姿はなく、代わりに無表情な人形が生まれていた。
後に『殺戮の少女』と呼ばれる魔女の誕生だった。
作中に出てきた「ラボア」は「laboratory animal」から取ってます。実験動物です。
次話も挿入話を挟みたいと思います。次は普通のお話にしたいと思います。