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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第2章 『餓鬼』の騒乱
62/123

9話 戦いの後の風呂って気持ちいいよね

早苗って出番ないなって思ったので戦いを入れてみました。

 ■■■


 再び目を開けた二人は、そこが商店街の道路であることに気がついた。

 アテネはすぐに辺りを見渡したものの、地下(じげ)の姿はどこにもなかった。


 アテネは深くため息をついた。ふと横を見ると真理が大きく肩で息をしているのが見えた。


 真理がさきほど使った魔法『無辺世界・改』は普通の『無辺世界』と比べ、魔力をより大量に消費する代わりに破壊力を増させた魔法だ。せいぜい魔法による変身を解いたり魔法攻撃を消し去ったりしかできなかった。即席で作られた魔法事象には干渉できたが、固定された魔法現象には干渉できなかった。それがこの『無辺世界・改』になることで、魔力を固定して創り出す結界・谷を削り、至近距離で撃てば相手の中にある魔力さえも吹き飛ばせる代物になった。ただ、以前よりも消費魔力が格段に増えたため、数発なら撃てた『無辺世界』と違い『無辺世界・改』は一発しか撃てない。そのため使いどころを考える必要がある。


 「はぁ、なんとか大丈夫だよ」

 「それなら良かった。真理の体が一番心配だから。それにしてもさっきは真理の機転のおかげで谷からは出られたわ。ありがとね」

 「ううん。それはアテネがうまくあの・・・じげ?を追いこんでくれたからだよ」

 「地下って書いて地下(じげ)ね。アイツはほんとどこへ逃げたのかしら・・・」

 「アテネ、それは後で考えるとして今は買い物しよ」

 「・・・わかったわ。そうよね、私たちは買い物しに来たんだから」


 アテネと真理は本日の晩御飯の食材を買い求めた。




 その日の晩ご飯は肉野菜炒めとなった。それはちょうど肉屋の売りが豚の挽き肉だったからだ。それと八百屋でアスパラが売られており、そこから真理は慣れた手つきで肉野菜炒めを作った。アテネは冷蔵庫にあるものを使って卵を使った野菜スープを作った。真理の母親:栞は現在家にいないため、ここ最近の神内家は二人分だけの食卓となっていた。それはこの神内家ではよくあることだった。

 父親がいなく、日々忙しくどこかへ飛び回っている母親。当然、真理は一人ぼっちだった、一年前にアテネがこの家に居候してくるまでは。真理は正直言ってアテネが居候してくれていることに喜びを感じていた。もう一人ぼっちで夕食を迎えることはない。一人ぼっちでこの家にいるわけではない。アテネがいてくれることによって安心感を得ていた。

 真理は今でこそ女性の身体であるが、心は未だに男を保っている。半分女性化している気がするが。


 だから・・・


 「なんで、一緒に風呂に入ってこようとするんだ!?」

 真理は叫んだ。

 それもそのはずだ。真理が風呂に入っているところにアテネが入ってきたのだったから。


 「なんでって・・・真理のお風呂って長いからよ。後に入ったら温くなるでしょ?」

 「沸かし直せばいいじゃないか」

 「それこそ電気代の無駄よ。ほらほら」

 「って、タオルも巻いてないじゃないか」

 「えっー、めんどくさいし」

 「いや、一応私は男だよ」

 「今は女の子でしょ?」

 「むぅ・・・」

 「それっ!」

 「うわっ、身体洗わないで入ってくるなんて!」

 「いいじゃん、後でこの浴槽も洗うんだし」

 「うぅ・・・」


 真理は自分の中で男であるものが湧き出てこようとするのを感じた。それと同時になにやら背徳なものを抱えているような気持ちになった。

 そんな中アテネは真理の胸を揉み始めた。


 「ちょっと、待って。なんかそれは私がいくら女だとしてもダメな気がする!」

 「よいではないかよいではないか・・・・・・なんで私より胸大きいのかな、ほんとちぎりたくなる」

 「ちょ、それはやめて!」

 「ふふふっ、冗談よ冗談」

 「全然冗談に聞こえない!」

 「ほらほらっ」

 「うっ・・・あっ」


 これ以上は描写できないような光景が30分ほど続いた。

 一つ言えるのは、いくら真理が女の子になろうと、アテネは変わらず接して・・・いやむしろそれまで以上にスキンシップをとるようになったことだ。






 ■■■


 深夜。辺り一帯が静まり返り、人一人いないはずの河原にて。二人の男女がいた。


 「このあたりだっけ?」

 「そうだな、もう少し行ったところだ」


 黒いTシャツを着たポニーテールの少女と同じく黒いシャツを羽織った少年は深夜にも関わらずに河原をずんずん歩いて行った。

 少女の名前は柴早苗(しばさなえ)。一方、少年の名前は安倍大輔(やすべだいすけ)

 彼らはこの辺り一帯にある“谷”を破壊するためにここに来ていた。


 「そのあたりだ」

 大輔は小さく、それでいて鋭い声で早苗に注意を喚起する。

 「OK。私にもわかるわ」

 早苗はそのあたりに渦巻く不穏な魔力の流れを察知した。


 「じゃあ、いつもの手筈通りに。早苗が中に入って、俺がサポートする。いいな?」

 「もちろん、何年やっていると思っているの」

 「だな。ただ、気をつけろ。油断はするな」

 「はいはい、行ってくるわ」


 早苗は魔力が渦巻いているところに手を当てて中に入っていく。

 その様子を大輔はじっと見つめていた。


 「どうやら、罠というわけではなさそうだ。さて、引き続き警戒はしておくか」


 大輔はその辺り一帯に人が来ないように結界を張りながらつぶやいた。




 ■■■


 早苗は“谷”の中に入ると同時に魔法少女へ変身した。

 黄色い縁取りの白の巫女服が周りの暗闇の中で輝く。


 「さーて、早く帰りたいものだねぇ」

 早苗はぶんぶん腕を振って奥へ進んでいく。



 少しして。

 「あなたがここの主かしら」

 早苗の目の前には、早苗の身の丈をはるかに超える骸骨がそこに鎮座していた。


 早苗の声に反応して骸骨は動き出した。

 「いかにも、儂がここ“戸惑う迷宮”の主、ハミルトンだ。お主は何の用でこんな場所へ来たのじゃ?儂を倒すためか?」

 「決まっているじゃないですか、あなたみたいな存在(くず)を消し去るお仕事をしているのですから」

 「ほっほっほ、面白いことをぬかすものじゃな。その減らず口がいつまで続くものかね」

 「なら、一発やってみる?」


 早苗は腰から六連星(むつらぼし)を目にも見えないスピードで抜く!

 刀身から放たれた衝撃がハミルトンにぶち当たり、骸骨の表面を削り取った。



 「おぉおぉお・・・なるほどじゃ、な」

 ハミルトンは雄たけびを上げながら腕を振り上げる。


 「『雷撃(シングルショット)』4連発」

 早苗の詠唱により4つの電撃がハミルトンへ撃ち出された。


 「ぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 対するハミルトンはその電撃を気にすることなく腕を振り下ろした。


 「遅いわ、よ!」

 早苗はその攻撃を横に移動することによって回避する。

 ハミルトンは早苗が回避するのを横目で見ながら言葉を紡ぐ。

 「『迷宮(ラビリンス)』」


 その言葉が早苗の耳に届くや否や、早苗の視界が白い靄で覆われた。

 「なっ、なんなの!これは」


 早苗は目の前の靄を払おうとしても晴れることはなかった。

 「はっはっは、愉快じゃな」

 ハミルトンの声が早苗の耳に聞こえるのと同時にハミルトンの拳が早苗の体に突き刺さった。


 「がはっ」

 早苗は突然の衝撃に、胃の中にあったものを吐き出す。

 「それもう一発」

 ハミルトンはもう片方の手を振り下ろした。


 「くっ、喰らうものか!」

 拳から聞こえる風を切る音と気配を頼りに早苗は六連星(むつらぼし)の鞘で受け止める。

 その上からの重い一撃は、鞘で受け止めた早苗ごと地面に押しつけていく。早苗の足もとは衝撃でめりめりと沈んみ込んでいく。


 「(とどろ)け!風を伴いて我を運べ!『疾風迅雷(しっぷうじんらい)』」

 力を込めてハミルトンの拳を少し押し返し、魔法により雷となった早苗は横へ跳んだ。


 「見えんじゃろ見えんじゃろ。愉快じゃな」

 「この白い靄はあなたの幻術ね。なんとかして消さないと・・・」

 「儂の『迷宮(ラビリンス)』が破れると思うかね」

 「やろうと思えばできるってもんよ」


 早苗はポケットにしまってあった緑色の折り紙の鶴を取り出す。

 「大輔、頼むわ『解除(キャンセリング)』」

 早苗の短い言葉に反応して緑色の折り紙の鶴が光を放った。


 大輔は早苗の協力者(サポーター)だ。協力者(サポーター)に基本的に戦闘能力はない。主に戦闘を行うのは魔法少女のほうだ。しかし協力者(サポーター)にはそれぞれ特殊能力を持っている。

 大輔の場合であれば、使い魔を使役する能力を持っている。しかしこの使い魔は戦闘を行える程度のものではなくせいぜい偵察ぐらいしかできない。そんな大輔だが、もう一つパートナーを手助けする能力を持っている。それが、霊符作成である。『常夜の姫君』戦において大輔は様々な霊符を用意していたが、あれらは全て自作によるものだ。霊符は少ない魔力で効果を発揮でき、またある魔法少女にとって得意な分野でない魔法であろうとも効果を発揮することができる。

 早苗は近接型の魔法少女で、得意魔法は雷で、それ以外の魔法にはほとんど適性がない。もっとも戦闘において雷が強力すぎるため他の魔法を使う必要がない。ただ、回復系がまったく使えないため、今のような幻術を食らった時の対処ができない。しかし霊符を使うことでその難点を解消できる。


 早苗が大輔からもらった緑色の折り紙の鶴は自分に掛ったバッドステータスを解除する魔法を発動することができる。


 無事、白い靄の幻術を破った早苗はハミルトンをぎろりと見つめ、魔法を紡ぎだす。

 「(とどろ)け!風を伴いて我を運べ!『疾風迅雷(しっぷうじんらい)』!」

 雷と同化した早苗は目にもとまらぬ速度でハミルトンへ突撃した。


 辺りに地響きを立ててハミルトンは崩れ落ちた。六連星(むつらぼし)+雷のスピードは絶大な威力を発揮したようだ。


 「儂が・・・敗れるとは・・・」

 「なんとかなったわね」

 崩れ落ちていくハミルトンを尻目に早苗は六連星(むつらぼし)を鞘に戻して両手を合わせた。


 「これでお終いね『放電(スパーク)』!」

 両手から撃ち出された電撃がハミルトンに止めを刺した。


 「うおおおお・・・・・・」

 ハミルトンが消え去ると同時に、“谷”が崩壊していった。

 早苗はそんな中、一仕事終えてちょっと疲れた顔をしながら、元の世界に戻るのを待った。



 ■■■


 「お疲れ~」

 「はー、疲れたわ」

 早苗が“谷”から戻ってきたところに大輔が声をかけた。


 「それじゃ帰ろうか、さっき職質されそうになったし」

 「げっ、それじゃ早く帰ろっ。早くお風呂に入りたいし」

 「早苗は仕事の後の風呂が好きだからな。まぁ俺も好きなんだがな」


 一仕事を終えた二人はそそくさと人目に付かないようにして帰途についたのだった。

 その後、二人がそれぞれの家で風呂に入って疲れを癒したことは言うまでもない。




 

次話にいくつか挿入話を入れていきたいと思います。今後の展開をお楽しみに。

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